第19話
俺の主はクズ野郎 2
それから、1ヶ月。まだ生徒会にしか接触していないが、その生徒会は見事に主人に陥落した。信じられない。美形じゃない俺にはわからない魅力があるのか…?
「おいてめえ、聞いてんのか?」
不意に胸ぐらを掴まれて、後ろの壁に押さえつけられた。そういえば、生徒会長直々に制裁を加えられてる最中だった。
「充に近づくなっつってんだよ!!!!」
「ひっ…!」
ガンッと体すれすれの所を蹴られ、わざとらしくビクついておく。
「ごめんなさい、生徒会の皆様にどうしても近付きたくて…!」
主人に言われたように言葉を発する。こう言えば生徒会長が「このクソ野郎!」と怒り狂い殴りかかってくるはず…
「えっ!?お前、俺のこと好きなのか!?充と付き合ってるんじゃ…!?」
ん?予定と違う。しかも俺はお前が好きだとは言っていない。皆様って言ったんだ。
「俺を親友だと言ってくれる充くんを利用していました…!本当にごめんなさい、だけど生徒会の皆様にどうしても近付きたくて!」
予定とは違ったが続きの台詞を言う。勿論主人に言われたからだ。こうすれば心底お前を軽蔑するからと。
「そっそんなに俺を…!」
顔を真っ赤にして顔を近づけてくる会長に少し嫌な予感がしたのだが、逃げ出したら主人に何をされるかわかったもんじゃない。
「一度でいいので抱いてくれませんか!」
「もっ勿論だ!一度と言わず、何度だって抱いてやる!」
まさかの会長、発情。ハアハア言いながら俺の制服を脱がしにかかり、首に顔を埋めてくる。
ぎえええええ。
「どうやったら充をお前から引き離せるかずっと考えてたんだ。両想いってことを前から知ってたら、お前をあいつの好きにはさせなかったのに…!」
鳥肌がやばい。こいつは何を言っているんだ。殴りたいけど、主人に「親衛隊や生徒会に制裁されるときは、絶対手を出すなよ。お前が殴ったら顔の造形変わっちまうからな。お前ならどんだけ殴られても平気だろ」と言われているので、ぐっと我慢する。
俺の尻をスラックスの上から撫でさすり、さらに興奮したように首に噛みついてくる。跡が残ったらどうしてくれる。
「っはあ、…たもつ…!」
会長って俺の名前知ってたんだなあ…と現実逃避をしていたら、会長の顔がピントが合わないほど至近距離に迫り、ついに唇を食われた。
ぬるりと侵入してきた舌に、引いてきていた鳥肌が一気に立つのを感じ、主人の言いつけも忘れて殴り飛ばしてしまった。
「あぐっ!!」
2メートルくらい吹っ飛んだ会長をその場に置き去りに、さっさとその場から逃げ出す。脱がされたシャツは、しっかりと手に握り締めながら。
走りながらシャツを着て、ボタンを止める。会長の言い方は、主人ではなく俺が好きだと言っているようだった。これは主人に報告した方が良いのだろうか。
寮部屋にたどり着き、カードキーで玄関のロックを解除する。ピピッと軽快な音を立てて開いたドアをくぐり共用スペースにいくと、主人が不良で有名な先輩と乳繰り合っていた。
不良先輩の膝の上に向き合うように乗り上げる主人。2人は舌を濃厚に絡ませてキスをしている。
さっきの感触を思い出してしまい、ゲンナリする。主人が、俺が顔を歪めたのを見てにんまりと笑う。
俺がわざとらしく「みっみつるくん…!?」と驚いた声を出すと、俺の存在にさも今気づいたかのように慌て出す。
「あっ、た、保!これはちがくてっ…!」
「あんなのほっとけよ」
「今日はここまで!また明日続きしようぜ、なっ!」
「ハア?」
だいぶ納得のいっていない顔をしていた不良だったが、頑として主人が終わりだと言うのでしぶしぶ部屋から出て行った。
すれ違いざまに俺の足の脛を蹴るのはやめろ。
「…うえっ、キモッ。俺口ゆすいでくるわ」
気持ち悪いのなら何故キスなんかするんだ。俺には到底理解できない。
「今度はあの人がターゲットですか?」
「いや、あいつはもうオトした」
次は風紀に手を出すという主人に、ふと思い出したことを言ってみる。
「そういえば会長が、なんか充さんじゃなくて俺が好きだとかなんとか言ってきたんですけど…」
「は?」
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