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第118話:今回はいつもと違い……
「きゃあぁぁ!」
オレが
「なっ、なに!? 変な人がいる!? コスプレ!?」
最初は寝ぼけていたオレも、その台詞でバッチリと目が覚める。
そしてすぐに、ヤバイと気がついた。
オレはアウトランナーの運転席に座っていたのだが、正面にも横にも、窓ガラスの向こうには、多くの人が物珍しそうにこちら見ている顔が並んでいたのだ。
それも日本ではありえない兜を頭にっている者、槍をかついでいる者、動物の顔をもった者までもいる。
その背景には、現代的ではない石造りの建物が並んでいる。
地面もアスファルトではなく、石畳だ。
そしてはるか遠くには、よくわからないけどガラスでできたような、馬鹿でっかい針葉樹みたいなのが立っていた。
いや、針葉樹みたいな形をしているだけで、木なのかどうかさえよくわからない。
とにかくでかすぎる。
先端どころか、3分の1の上部が雲を突き抜けているようだ。
正直、その先っぽは霞んでいてよく見えない。
日本にいるとき、近くで富士山を見て「遠近感が狂うな」と思ったことがあったが、それどころではない。
かなり遠方にあるはずだが、その巨大さがひしひしと伝わってくる。
もちろん、絶対に日本ではない。
(寝落ちした!? だけど、いつ!?)
これは完全にやっちまったやつだろう。
「いやっ! なにこれ!? こ、ここはどこ!?」
半ばパニックになった希未が、オレの腕をつかむ。
青ざめた瞳には、涙さえたまっていた。
そりゃあ、事情がわからなければパニックにもなるだろう。
しかし、事情をわかっていたオレも、今回はちょっと慌てていた。
今まで運がよかったのか、だいたい人里離れたところに転移していたのだが、今回は完全に街の中を走る道のど真ん中にアウトランナーが居座っていた。
目立つことこの上ない。
これ、アニメなんかだと、衛兵みたいなのが出てきて、不審者として捕まるパターンじゃないか。
(つーか、現れるところに人がいたりしなかっただろうな……)
もしいたら、その人はどうなっていたんだろうか。
とにもかくにも、今は急いでここから離れ、人目のないところに移動しなければならない。
イグニッションキーを押してアウトランナーを起こし、アクセルを踏むもうとする。
しかし、出発できる状態ではない。
「すいません! 周り、どいてください!」
オレは窓を少し開けてから、そう大声を出した。
人だかりはなかなか剥がれない。
むしろ、オレの声を聞いた者たちが「これはなんだ」とばかりに問いつめてくる。
「つーか、こ、これはその、あれですよ……そう、蒸気機関車みたいな?」
ふと、キャラが蒸気機関は存在すると言っていたことを思いだしたので、適当にそう言ってみた。
これで納得して離れてくれれば御の字である。
「これが蒸気機関車か! 初めて見た!」
「
「煙はでないのか?」
ダメだった。
むしろ、もっと話を聞きたいとばかりに、人がよってくる。
(しかたない!)
オレは短くクラクションを鳴らした。
響きわたる、この世界では珍しい音の効果は絶大だった。
周囲を囲んでいた者たちは、まるで蜘蛛の子を散らしたようにアウトランナーから離れていく。
「今だ!」
オレはアクセルを踏んだ。
もちろん周囲の人を巻きこまないように安全運転しながら。
そしてそのまま、オレはなるべく人目のなさそうな場所を探すように車を走らせる。
幸い、道は広く走るのには困らない。
目の前を歩く人たちを驚かせながら、アウトランナーは止まることなく進んでいく。
「ねぇ! なんなの!? ここどこ!? 【海ほたる】にいたはずだよね!?」
そう。
オレたちは【道の駅 保田小学校】をでた後、【房総の駅とらうみ】に食べ放題の浜焼き屋があるというので、そこに行って夕飯を食べた。
食べるだけ食べて満腹になり、あとは帰るだけとなったが、会話の中で【東京湾アクアライン】と【海ほたる】サービスエリアの話が出た。
オレは行ったことがあったが、希未が行ったことがないというので、遠回りにはなるが経由して帰ろうと言うことになったのだ。
海の上を走る道路を楽しみたかったが、すでに日は暮れてそこまで景色は楽しめなかった。
それでも希未のテンションはかなり高まっていた。
【海ほたる】に到着後も、店も結構閉まっていたが見学したいと車をすぐに降りたのだ。
まあ、オレはそんな元気がなかったので、トイレだけ済ませて先に車に戻った。
「――で、戻ってきたら現人が寝ていて。たぶん、朝早くからずっと運転していたから疲れたんだろうと思って、少し寝かせてあげようとして、それであたしも車の中で寝ちゃったみたいで……」
混乱しながらもすごい早口で希未が説明してくれている。
うん、なるほどという感じだ。
今までの経験上、
そして車の中にいる者が全員睡眠状態である必要があるのだと推測している。
俺が1人で寝てしまっている間に転移してくれれば、こんな事にならなかったのだが、タイミングが最悪だったらしい。
「目を覚ましたら、周りにいっぱい人? が覗きこんできていて……どうなってんの!? あっ! もしかして、あたしが寝ている間に、あんたが車を走らせたということ!? だって、もう昼間みたいで時間もかなり経っているみたいだし……ここ、もしかして、どっかのテーマパーク!?」
「ごめん、あとで説明する!」
「説明って……きゃあっ! なんかここ、光ってる!? ダッシュボードの中!」
「光っているって……ああ、預言書か!」
確かに希未の目の前にあるグローブボックスの隙間から、まばゆい光かもれていた。
このいろいろと混乱している中で光られても困る。
だいたいこの預言書、まだ仕組みがよくわからない。
「よげんしょ? なによ、それ!?」
「オレもよくわからん!」
「なによそれ!? 爆発したりしないの!?」
「するか! とりあえず放置で、今は目立たないところに移動が先だ」
思いつくことを手当たり次第に言う希未をよそに、オレは通行人に気をつけながら車を走らせる。
周囲を見ると灰色の高い塔が街の周りに立っているようだ。
もしかして、見張りの塔だろうか?
この世界は、魔物がいたり、一部で戦争したりもしているらしいし。
そしてあの塔が街の境なら、かなり広い街なのだろう。
オレが異世界で見た中では、【ダンタリオン】という街が最も栄えていた。
十文字女史と一緒に訪れた街だ。
しかし、ここは【ダンタリオン】とは比べものにならない規模みたいだ。
後方のかなり離れているところには、城壁が立っていて、その向こうには大きな城が見えた。
それこそ、童話の中に出てきそうなヨーロピアンなデザインをしているが、その城も馬鹿でかい。
たぶん、【ダンタリオン】がまるごと、あの城の敷地に入ってしまうのではないだろうか。
(サイズ的に、某テーマパークのシンデレラ城が横に20件ぐらいならんでない? つーか、よく知らんけど!)
実は某テーマパークのシンデレラ城など、現物は見たことがない。
うん、すまん。適当言いました。
(【ダンタリオン】は魔物対策の壁で囲まれた街だったけど、ここは幸いにも街の外に壁はないみたいだ)
城を背に走ると、家屋が減って田畑が見えてきた。
そこで働く人たちが、驚いた顔でこちらを見ている。
いや、たぶん怖がっている。
(いや、まあ、不気味だよな。うん、マジすまん)
農道のような狭い道にはいると、暫くして正面に森が見えてきた。
そのまま森に入るのが目立たないかと思ったが、なんとなく魔物がいそうな気がして怖い。
そもそも森の中に街道がちゃんと在るのかもわからない。
途中で道がなくなっても困ってしまう。
幸い、その少し手前、右の方に木々が少し集まっている茂みがあった。
オレは街道から逸れて、道なき道を進んでその裏側に入る。
ここからならば、街や街道からも見えにくいだろう。
「ねぇ! ここ、どこなのよ!?」
車を止めた途端に希未から問いつめられる。
気持ちはわかる。
気持ちはわかるが、その前にやることがある。
「ちょっと待ってて……」
オレはそう言ってから身体を希未の方に寄せた。
希未が一瞬身構えるが、オレはそのままグローブボックスをあけて、今だ光っている預言書を取りだす。
これは、ミューからもらった、異世界車中泊旅行のための羅針盤みたいなものらしい。
そう言えば前回、十文字女史と訪れたときは、光もしなかったし、何も文字が追記されたりしなかった。
一方で、これが光ったときには、アズの村の危機が記載されていた。
そう考えると、単に車中泊旅行でどこに行けばいいのかを表す羅針盤というわけではない気がする。
この預言書が伝えてくるのは、もっとなにか重要なことなのかもしれない。
たとえば、運命の分岐点的なことだったとか。
それがまた今、光ったとなると、もしかしたらただ事ではないのかもしれない。
(つーか、嫌な予感しかしてこねぇ……)
オレはポケットから鍵の束を取りだし、その中のひとつで預言書の南京錠のロックを解除した。
そして表紙を開くと、前回の時と同じように光っているページを開いてみる。
するとそこには、やはり文字が浮かぶように記載されていた。
「なっ、なんだと……」
オレは預言を読んで硬直してしまう。
――到着して30分ほどすると、巨大なドラゴンが【
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