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第116話:道の駅を巡りまくり……
そこから先、オレはあきらめることにした。
というか、まあ、わかっていたんだ。
時間的に無理があると言うことは。
千葉県の房総半島先端は、オレが知る限り道の駅の密集地帯だ。
この辺りには、わりと近い位置関係で、一〇以上の道の駅が海岸線沿いに並んでいる。
しかも、小さい規模から大規模まであるので、道の駅巡りがかなり楽しめるコースである。
つーか、それだけ並んでいたら、もともと一泊二日でもゆっくりは回れないことも承知の上だ。
だから、「房総半島ゆっくりと道の駅巡り」を楽しむのは、ゴールデンウィークとかの連休を使ってすることにする。
そういう時に宿は混むだろうけど、車中泊ならなんとかなりやすいはずだ。
というわけで今回は、ほとんどの道の駅に対して下見として割り切ることにしたのだ。
オレは希未にそれを了承してもらい、駆け足で数箇所の道の駅を巡った。
まずは、道の駅【鴨川オーシャンパーク】。
http://www.kamogawaocean-park.com/
駐車場に車を止めて、歩いて行くと木造のイルカの像が迎えてくれる。
そしてその先には、アーチ状の橋が架かっている。
橋の下には、人工的に作られた水辺があった。
「人工磯の『千年磯』ってホームページには書いてあるよ」
希未がスマートフォンを見ながら説明してくれる。
確かに非常に浅い池のような窪みがあったり、石が積んであったりと、磯の見た目をしていた。
「水遊びできるみたいだけど、水がないね」
希未の言うとおり、確かにその人工磯には水が張っていない。
夏場とかしかやっていないのだろうか。
「ってかさ、本当におもろ!」
橋の先に視線を戻すと、オーシャンパークの建物が見える。
遠くから見ても面白かったが、建物は上から見ると半円で、ピラミッドのように階段状になった構造をしていた。
ホームページによると、サザエがモチーフなのだろうか。
建物の中には、レストランや物産店が入っているようだ。
「ねぇ。レストランからの景色が良さそうだよ! 足湯とかもあるって!」
「だな。でも、今日はここまで。次行くぞ」
オレは容赦なく切りあげる。
本当はオレだって後ろ髪を引かれる思いなんだ。
次に行ったのは、道の駅【和田浦WA・O!】。
http://wa-o.awa.jp/
それほど大きい道の駅ではないが、外にでかい鯨の骨格模型が飾ってある。
豊富な鯨料理を楽しめる場所で、食事ができないのは本当に残念だった。
「せめて鯨コロッケだけでも!」
希未の提案にオレも逆らえず、とりあえず1つだけ買って半分こにした。
けど、これがまた激うまだった。
鯨肉って食べたことなかったけど、サッパリしている割に味が濃い。
コロッケだけではなく、もっとしっかり食べたかった。
だが、オレたちにはまだ行くべきところがある。
道の駅【ローズマリー公園】。
ここは、前の道の駅に比べて土地が広い。
景観がいいので、ゆっくりと散歩でもしたい道の駅だ。
でも、残念ながら、今日はそんな暇がない。
今度、ここでゆっくりしようと心に決めつつ、この場をあとにした。
次は道の駅【ちくら・潮風王国】という、なかなか大仰な名前だ。
https://shiokaze-oukoku.jp/
建物の横には、大きめの公園がある。
季節が季節なら、きれいな芝の緑が映えそうな公園で、デイキャンプなのかテントを張っている人たちもいた。
他にも中に入って遊べる漁船のレプリカや、夏には水遊びができそうな人工池もある。
そして、隣は青が映える太平洋だ。
公園の横には、階段が備えられた崖っぷちがあり、下の千田海岸に降りることができる。
そこで荒波に向かって、釣り竿を向ける人がけっこういた。
「ねぇ! 食事処の魚介類がおいしそうなんだけど!」
「お預けだ! ってか、食べてからそんなに経ってないだろうが」
といいながらも、オレだって辛いんだ。
すでに昼時は過ぎようとしている。
でも、今日は夕飯は早めに食べる予定で、メニューも決めている。
そのメニュー的にも腹を減らしておかなければならない。
残念だけど、ここは食事以外にも楽しめそうな場所なので、今度はゆっくりしに来たいところだ
お次は、 道の駅【白浜野島崎】。
https://www.michi-no-eki.jp/stations/views/19143
ここは今までのところに比べるとこぢんまりとしているが、休憩ポイントとしてはいい位置にある。
いちご狩りができたり、パンがうまかったりするらしい。
これ以上の誘惑を受けないように、さっと見学して立ち去った。
どんどん行って、次は道の駅【南房パラダイス】。
ここは、とんでもなく広い。
というより、道の駅と言うより、付随する施設があるためである。
ここは道の駅とは違って、農作物の直売所や物産店などはない。
道の駅自体は、ぶっちゃけ駐車場とトイレと案内所があるぐらいである。
その代わりと言ってはなんだが、隣に動植物園が併設されている。
昔は南房パラダイスの一部だったようだが、今は民間企業が運営していて【アロハガーデンたてやま】という名前になっている。
外からちらっと覗いただけだが、中はかなり広そうだ。
岩肌に似せた表面の塔のようなものがあったり、売店もいくつかうかがえる。
名前の通りハワイアンな食事を出すレストランもあり、家族連れはかなり楽しめるのではないだろうか。
動植物が好きなカップルなら、デートとしてもいい場所だろう。
また、歩いて行ける距離にホテルもあり、そこで日帰り湯もできるようだ。
動植物園で一日遊んで、ホテルで風呂に入って車中泊というのもいいのかもしれない。
ちなみにメインの駐車場は、夜中は入出場できなくなる。
しかし、それ以外の駐車場は夜中でも駐車できた。
ただし、動植物園で遊ぶ予定の車は無料で夜中に駐車できるものの、それ以外の目的では有料となるらしい。
目の前が海なので、釣り人やサーファーなんかが駐車することもあるのだろう。
車中泊する前に、このあたりのことは調べておかなければなるまい。
ちなみに希未は、あまり動植物に興味が強いわけではないのか、ここに入ろうとは言わなかった。
そのため、本当に簡単な下見で済んだ。
その後もいくつかの道の駅を覗き見た。
富浦町の名産である琵琶を推しまくりの道の駅【とみうら枇杷倶楽部】。
https://www.biwakurabu.jp/index.html
浮世絵を楽しむことができる菱川師宣記念館が併設された道の駅【きょなん】
https://www.town.kyonan.chiba.jp/soshiki/10/2505.html
それに少し内陸部にありコース的に行けなかった道の駅もまだ残っている。
日本最大級の大型ビニールハウス(ビニールじゃないけど)で多くの花が楽しめる道の駅【おおつの里】。
https://www.hana-kurabu.jp/index.html
高速道路のパーキングエリアと一体化した道の駅【富楽里とみやま】。
https://www.furaritomiyama.jp/
酪農発祥の地にある道の駅【三芳村・鄙の里】。
https://www.hinanosato.jp/eat/index.html
他にもまだ道の駅はあるだろう。
まあ、いきなり全部を回るのはもちろん無理な話だ。
楽しみは、また今度にしておこう。
「で、次の道の駅がメインの目的地というわけ?」
「ああ。ちょっと楽しそうなところでさ」
車の中でオレはウキウキとした声で希未に答えた。
すると、希未から小さなため息がもれる。
「あんた、妙に元気じゃない」
「あ、すまん。疲れたか?」
すっかり浮かれていたが、オレのペースで完全に振りまわしている。
でも、なんかこういう感覚は久々だ。
何しろ最近のオレ、振りまわされる側だったからね、女性に。
この世界でも異世界でも、ブンブンと振りまわされていた気がする。
逆にオレの中では、希未は振りまわすことに気兼ねがない相手なのかもしれない。
というか、単なる昔の慣れみたいなものか。
「まあね。さすがに疲れたけど……なんていうか、悪くないわ」
「悪くない? つーか、無理するなよ」
「大丈夫。ただ、なんかあんたに振りまわされる感覚が懐かしいなって」
どうやら同じようなことを思っていたらしい。
「す、すまん」
「謝らないでよ。原因はあたしにあるんだし。それに……」
助手席の希未が反対の窓を向く。
オレはちらっとしか見ていないので、彼女が何を見ているのかわからない。
海でも見ているのかと思ったが、ここからでは先に在る海は見えないはずだ。
でも、彼女は何かを見つめている……そんな気がした。
「なんか、楽しいから、
「…………」
数拍の間を置いて彼女からでた言葉。
その最後の一言が、妙に気になった。
なんというか、言葉に重みがある。
たぶん、本当に久々なのだろう。
逆に言えば、いつもは……とそこまで考えて、オレは思考を止めた。
なんか、頭の中で十文字女史に「ストップ」と言われた気がしたからだ。
それは、触れない方がいいことなのかもしれない。
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※作者から一言:「房総の道の駅について」
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