二泊目
sentence 1
第023話:夢オチかと思ったけど……
ちーす!
オレ、【
26才・男・独身・現在は彼女なし。
家は、まあまあ裕福で実家暮らしの次男坊。
今は、親のコネで入った会社で、しがないサラリーマンしてる。
そんなオレだけど、ひょんな事から車を衝動買いした。
値段は高かった。
マジ高かった。
しがないサラリーマンの貯金じゃまかなえないぐらい高かった。
だから、ローンで買った。
そんな苦労して買ったこの車は、いわゆる電気自動車。
と言っても、エンジンも積んでいる。
だから、電気がなくてもガソリンで走る。
ただ、基本は電気自動車なので、エンジンは発電機として動き、パワーが欲しい時だけタイヤを直接的に動かすサポートをする。
その駆動用バッテリーも、30kWhとかの大きいのを積んでいるらしい。
まあ、それがどのぐらいなのかよくわからんけど、満充電だと200kmぐらい走れるそうだ。
ちなみに、駆動用バッテリーから100Vの家電が使えるコンセントがついている。
満充電なら、オレが丸2日普通に家電を使っても平気だとか。
そんな感じの車。
それ以外は普通の車……のはずだった。
ある日。
オレはとんでもない現象に巻きこまれた。
仕事でミスして、なにもかも嫌になって、会社をバッくれたその日。
変な寺の住職に出会ってなにかされた(?)後、この車でP泊(駐車場で車中泊すること)したら、異世界に行っていた。
つーか、何を言っているのかわからねーと思うが、オレもなんだかわからねー。
ともかく、オレは車で寝ていて、起きたら異世界に行っていたんだ。
そして、俺はそこでネコ耳ウサギ尻尾の女の子に出会い、仕事に対しての考え方というか、なんか生き方というか、そういうものを教わった気がした。
でも、俺は彼女に満足なお礼もできないうちに、なぜか元の世界に戻ってきてしまったんだ。
しかも、元の世界では時間がほとんど過ぎてなかったというおまけつきで。
そんな不思議体験から、2週間がすぎた、今日。
土曜の夜。
オレはP泊中に、また異世界に来たらしい。
なんで異世界だとわかったかと言えば、もちろん景色だ。
オレが車中泊したのは東京近郊。
しかし、目の前に広がっているのは、西部劇真っ青な感じの荒れ果てた荒野だった。
オレが知る限り、関東地方にこんな風景はない。
(つーか、なんでいきなり来られたんだ?)
オレは元の世界に戻ってから、2度ほど車中泊をしてみた。
しかし、2度とも異世界への移動――シフトチェンジ――は発生しなかったのだ。
いったい、失敗した2度と、今回の何が違っているというのだろう。
とりあえずオレは、今日のことをふりかえってみた。
◆
異世界から帰ってきて、1週間経った土曜日。
オレは、「夢を見ていた」という結論に達していた。
自宅で車中泊してもダメ。
最初に
さらに言えば、あの不思議な住職がいた謎の【
というか、あの寺も最初から存在しなかったのではないかと考えた。
あの時、オレは精神的にヤバかった。
そんなオレは、妄想を現実だと思ってしまったのではないかと思えたのだ。
ネコ耳ウサギ尻尾の娘【キャラ】が残したリンゴも、実は呆けていた自分がどこかで買ったものだったのではないか。
一見、強引な気もするが、その方がまだ信じられる話だ。
(……そうだな。きっとそうだ。疲れてるんだ、オレ)
その結論に達したオレは、疲れを癒すために次の週末、温泉を楽しむ事にした。
実は温泉とか大好きだ。
ただ、疲れているので、あまり遠くではなく東京近郊がいいだろうと思って探したところ、【道の駅しょうなん】というのを見つけた。
ところで、【道の駅】というのを知っている人は多いのだろうか。
オレなんかは、つい最近までなんとなく聞いたことがある程度だった。
P泊するようになって、初めて詳しく【道の駅】について知ることとなった。
【道の駅】とは、長距離ドライブを行う人たちのための休憩所を提供すると共に、地域情報の発信源や、その地域の活性化ができる観光スポットとなるよう、国土交通省が主体で進めている施設……と言うことらしい。
細かいことは置いといても、とにかく食事処があり、場合によっては地域のおいしい物が食べられるグルメスポットがあり、大きな駐車場があり、そして二四時間使えるトイレがあるという施設なのである。
そして、駐車場とトイレなどの設備は無料で利用できる。
P泊する人は、この利点を利用する。
これで少なくとも、宿泊代がただになるわけだ。
もちろん、ここは観光資源なので、現地でお買い物したり食事をしたりして、言い方はいやらしいけど金を落としていくのがマナーだろう。
しかし、宿泊として考えると、もうひとつ「風呂」という要素が必要になる。
【道の駅】でも風呂が併設しているところは少なく、通常は近くの風呂場で風呂をすませてから【道の駅】でP泊するのだ。
しかし、先ほど見つけた千葉県にある【道の駅しょうなん】は、東京近郊では珍しい温泉施設が併設された【道の駅】だった。
場所も遠くないし、条件はすばらしい。
オレはさっそく、土曜の夜に行ってみることにした。
「近くならP泊しないで帰ればいいじゃん?」という意見もあるかも知れない。
まあ、確かにそういう意見もある。
しかし、温泉でがっつり温まったら、なにをしたくなるか考えて欲しい。
……ほら、飲みたくならないか?
アワアワでキーンと冷えたアレだよ、アレ!
ビールだ!
……ああ。アルコールがダメな人もいるかもしれないけど、オレは好きだ。
でも、車だとなかなか飲めない。
そういう時に嬉しいわけだよ、車中泊。
温泉で暖まって、ビールかっ喰らって、すぐに寝る。
翌日もチェックアウトとか、そんなの気にせずゆっくりとモーニングコーヒーを楽しむ。
これが非常にはまる。
というわけで、夕方には【道の駅しょうなん】に向けて出発したのだ。
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