第35話


 **◎**


「……もしかして、」


 聞こえた声に反応はしない。

 それは、ただの独り言かもしれないから。


「…………」


 それでも。

 黙り込んだ彼のそれが、いつか独り言ではなくなる時が来るだろう。

 いつかは、まだ分からないけど。


 結局、声の主が続く言葉を発することは無かった。


 周りにはネコが一匹。人は誰も居ない。

 それを確認して、呟く。


「多分、そう遠くないかもね」


 これは自分の、独り言。


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