第47話 忍、同好会に参加する
「今日の授業はここまでだ。文化祭まで時間があるから焦らず早めに帰れよー。」
「「はーい!」」
今日の授業も終わり、私は鞄に教科書を詰めて教室を後にします。小姫ちゃんは料理部の活動があるので別行動です。帰りの時間は大体同じなので帰りは一緒に帰る予定です。私は教室がある本棟を通り抜け渡り廊下を抜けて別棟に向かいます。こちらは教室がない代わりに1Fに家庭科室や音楽室などの授業で使う部屋と2Fに文科系の部活の教室があります。私は渡り廊下から階段を昇り3Fの廊下を歩いて目的地に向かいます。3Fも文科系の部室なんですが3Fは同好会の部室が多いエリアです。その同好会エリアの一番奥に私が所属する《2次元研究会》、通称にけんと呼ばれている同好会があります。
同好会の設立には会長含め5名の会員が必要で、にけんの会員数は5名で規定人数ちょうどの弱小同好会です。ちなみに部活動の場合は部員が5人という条件は変わりませんが実績を残せば部活動として認められます。私が所属するにけんは特に実績がないので同好会という枠組みとなっています。二次元研究会ですから実績を残せというのも無理がありますからね。
「おはようございます。」
にけんに割り当てられた教室のドアに手をかけガラガラという教室のドア独特の音を鳴らしながらドアを開けると同好会員の皆が挨拶をしてきました。
「あっ忍殿。今日もポニテが決まっているでござるな。やはり忍殿はくのいちが似合うと思うでござるがどうでござろうか。」
「ククッ。人間、この
「……忍お疲れ。」
「波瀬さんこんにちは。皆さん揃ってますよ。」
ここで私が所属しているにけんメンバーを紹介しておきますね。
くのいちロールプレイヤーでコスプレイヤーの
今日もどこから出したのか忍び装束を着こんでいる生粋のコスプレイヤーさんです。
続いて
可愛い名前の女の子ですが、名前を言うと怒られます。本名は
そして無口な子が
常に何かの本を片手にしている読書少女ですが、その本は大抵ラノベです。腐女子属性も持っているのでよく私と話が合いますね。
会長で唯一の男子
会長以外は皆2年生で会長は唯一の3年生。どこにでもいるようなパッとしないタイプです。
そして私、波瀬忍を含めたこの5名がにけん--《2次元研究会》のメンバーです。小姫ちゃんも誘っているんですが「こんな濃い人達の中に入ってなんかいけないよぉ…!ただでさえ忍ちゃんだけで手いっぱいなのにぃ!」ととても失礼なことを言っていました。私のことをどう思っているんでしょうね。小姫ちゃんにはそのうちOHANASIしないといけないとは思っています。
「じゃあ皆集まったので今日の活動をする前に相談があります。」
私が席に着いたのを見計らって会長が声をかけると深淵ちゃんがひきつったような笑い方で会長に問いかけます。
「ククッ、なんだ人間。この深淵に相談するということがどういうことか分かっているのか?」
「あの…愛洲さん。そういうのじゃなくて…。」
「それはこの世界での仮の名だ。私は深淵の魔王、ジ・アビスだ。間違えるなよ人間。」
「ああ…はい。すみませんでした。」
「…ふん。二度と間違えるなよ。」
会長また深淵ちゃんに本名言っちゃいましたね。深淵ちゃんは本名で呼ばれると機嫌悪くなりますから。ほら、顔をプイッと背けちゃったじゃないですか。
「…会長はいつも学習しない。…所詮はマダオ。」
「うぅ…ごめんなさい。」
「…謝るくらいなら学習して。謝るだけなら猿でもできる。」
「まぁまぁ。アカリ殿もそれくらいにしておくでござる。会長殿も悪気はなかったのでござろう。して会長殿、相談とはもしや文化祭に関係したことでござるか?」
「良く分かりましたね。その通りなんですよ。」
「いやいや、今の時期に相談と言われたらそれくらいしかないでござるからなぁ。やっとこの季節がきたでござるな。」
「はい。今年こそは負けません。絶対に昇格させてみせます…!例えどんな手を使ってもやってやりましょう。」
「忍殿の言う通りでござる。勝てば官軍。歴史が証明しているでござるよ。」
「え、ええっと波瀬さんも市丸さんも穏便にお願いします…。」
アカリちゃんの毒舌に頭をうなだれた会長を擁護したのはコスプレイヤーの芹菜ちゃんでした。やはり文化祭の件ですか。私のクラスではメイド喫茶をすることになっていますがそれとは別に部活と同好会も企画をすることを許されています。普段から大会などがあるであろう運動系の部活や同好会はともかく文科系の同好会にとっては千載一遇のチャンスでもあります。
同好会は5名いれば登録できますが、部活に昇格する為には実績を残す必要がありますが我がにけんでは普段の活動ではまともな実績は得ることはできません。何せにけんメンバーの興味はは忍者と厨二とラノベと薄い本ですから認められるわけがないのです。よって文化祭は1年に一度のチャンスとなります。
去年は先輩達主導でとあるゲームのリアルタイムアタックをしてみましたが一般人には受け入れられませんでした。難易度が高いゲームなので達成感はあったんですがそれが実績となるかは甚だ疑問が残るというわけです。その先輩も今は会長一人だけですので今年は私達が企画をできる為、皆今回こそはと意気込んでいるわけです。芹菜ちゃんが話をまとめたのを確認して会長がおずおずと話を続けますが全然話が進みません。会長はもっとしっかりまとめて欲しいんですがまだまだです。
「えぇっと文化祭の時期が後1か月になったので出し物を決めなくてはならないんですが…何をしましょうか?また別のゲームの公開プレイでもしてみますか?」
去年やってダメだったものをまたやろうかというのは下策でしょう。その意見はもちろん皆から反対をされてしまいます。
「それは去年やってダメだったでござるからなぁ。」
「我もそう記憶している。人間は同じ過ちを繰り返す生き物とはいえ失敗したことを繰り返そうとは…あまりにも程度が低い。フン、所詮人間とはこの程度か。」
「深淵、一緒にしないで。このダメ男だけが程度が低い。」
「ひ、ひどい…。」
「ひどくないです。ダメな物を繰り返す時点で話になりません。会長もよく考えてください。」
「は、はいすみません。」
やっぱり会長は頼りになりませんね。先輩さんならこんな時は以前の失敗を繰り返さないようにしつつ手段を選ばず勝ちにいくのに。まぁ比較するのもおこがましいということでしょう。
「で、でもそれならどうしましょうか?こういう時は普段の活動しているものを発表するのが定番ですが生憎うちはこれといったものがないですし。」
「ふむ。では拙者の忍者道具展はどうでござるか?これなら普段活動しているものでござるが。」
「忍者関係は市丸さんだけですからそれだと何とも…。」
芹菜ちゃんの忍者道具は色々見応えありそうですが、にけんの活動内容と言われると会長の言う通り少し疑問が残りますね。次に深淵ちゃんとアカリちゃんが意見を述べました。
「ならば我が深淵の言霊を刻んだルーンでもプレゼントしよう。だが気を付けろよ?人間には少々堪えるでな。見た瞬間意識が飛ぶかもしれぬ。…深淵は何人たりとも理解はできぬであろうからな。」
「深淵、それだと皆見れないし協力できない。同人発売が正義だと思う。」
「そうは言うがアカリ殿。同人発売も今からは新作が書けないでござろう?」
「…死ぬ気でやれば何とでもなる。」
「舞草さんはよくても僕達はさすがにムリがありますよ。」
「…ちっ。会長はやはりヘタレ。」
「うぅ。」
アカリちゃんの意見も悪くはないですが今から同人誌を書くのは時間が足りないですね。何徹するか分かったものではありません。ならばここは私の案を発表すべきですね。話が途切れたところを見計らって声をかけます。
「私から提案がありますがいいですか?」
「ほう?忍からの提案か面白そうだ。」
深淵ちゃんが愉快そうに笑いながら肯定したのを皮切りに私は説明を開始します。私も顔に笑みを浮かべながらにけんメンバーなら間違いなくテンションが上がるだろうことを話しましょうか。
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