第48話 忍、にけんメンバーと画策する
私は回りの意見がある程度出たところで提案をすることにしました。かなり自信があることなので自然と口角が上がってしまいます。
「私から提案がありますがいいですか?」
「ほう?忍からの提案か面白そうだ。」
深淵ちゃんが愉快そうに笑いながら肯定したのを皮切りに私は説明を開始します。
「まず今回の文化祭の目的を明確にしておきたいのですが、会長、実績を出した同好会を部活に昇格させるのが目的となりますがそれで間違いないですか?」
「う、うん。僕としてはそうであって欲しいと思ってます。」
私は会長の答えを聞いて頷きます。残りの皆は当然とばかりの顔をしているのを確認して話を続けます。
「では目標は実績の獲得ということになります。ならば簡単です。実績を獲得すればいいのです。それにはどうするかということですが、最近世界に現れた物がありますよね。それも今まで二次元の存在だったものが。」
「なるほどアレでござるか。」
「アレだな。」
「…把握。」
「えっ?何ですか?」
私は回りを見渡すと会長以外はすぐに分かったようでニヤリと笑っています。分かっていない会長は放っておきましょう。私は立ち上がりながらその存在を声高く宣言します。
「そうダンジョンです!元々、二次元の産物であったダンジョンであればにけんの活動範囲内であるのは明らかです!異界の象徴、冥府の入口、死と宝の蔓延する大迷宮!そんなダンジョンを丸裸にしてみせようではありませんか!ダンジョンが発生して既に3か月。世界中のダンジョンはともかく国内では映像すら出回っていないダンジョンを私達で国内初のダンジョン探索の風景を撮影してやるのです!きっと度肝を抜かれますよ!」
「それでこそ忍殿でござる。拙者、いち忍びとして協力するでござるよ!」
「ククッよかろう!我が
「…忍、グッジョブ。」
芹菜ちゃん、深淵ちゃん、アカリちゃん全ての人に賛同してもらえましたのでホッとしました。大丈夫だろうとは思っていましたがこうやって話してみると不安になるものです。残る一人は放心していましたが、ハッと気付くと反対意見を述べました。もちろん会長その人です。
「ダ、ダメですよ!ダンジョンなんて危ないじゃないですか!それにダンジョンはどこも封鎖されているので入ることもできませんよ?だから他の案を考えましょうよ?ね、そうしましょうよ?」
その質問は当然考えられることですが、そんなことはテンションが上がった私達には何の制約にもなりません。
「会長問題ありません。確かにダンジョンは封鎖されていますが当てがないこともありません。それに当てが外れたら最悪忍び込めばいいんですよ。ほら、ちょうど学校の前にも一つあるじゃないですか?」
「も、問題大ありですよ!そんなことしたら大問題になりますって!」
「バレなければ問題なし。会長ビビリすぎ。」
「いや、でもですね…。」
アカリちゃんは良いこと言いますね。でもアカリちゃんの言葉を受けて会長は顔を青くしています。心配性な会長に私は笑顔で解決策を告げて上げることにしますか。
「大丈夫です。アカリちゃんの言う通りバレなければいいんです。それに実績を上げればいいんですよ。この世は結果だけが全てですから。」
「そ、そんなすがすがしい顔でネタを言われても…。考え直してくださいよぉ…。」
そんな会長の声は全く聞く耳を持ちません。
既に私達のテンションはマックスですから。
「ククッ。面白い、面白いぞ波瀬忍ぅ!地球のダンジョンがどの程度かこの深淵のものが確かめてくれよう!我が深淵の炎でモンスター如き焼き払う姿が目に浮かぶようだ!怨嗟の声でダンジョンを満たしてくれようぞ!クックックッ…アーハッハッハッハッハッ!」
「拙者も忍び道具のコレクションをかねがね実戦で使ってみたいと思っていたところでござる。これは急いで帰って準備をしないといけないでござるなぁ。」
「リアルダンジョン攻略たぎってきた…!オークxエルフもアリ?」
深淵ちゃん、芹菜ちゃん、アカリちゃんはそれぞれ目の色を変えてこれからのダンジョン攻略方法を話し合い始めました。私ですか?小姫ちゃんにはダンジョンには入らないでと言われていましたがこれは同好会の活動ですからセーフです。セーフならヒノキの棒で突入しても何ら問題はないわけです。これがたぎらないでどうしますか。会長そっちのけで話し合いを始めていた3人でしたがふと私の先程の話に出ていた疑問を投げかけてきました。
「そういえば忍殿、ダンジョンに入る前に確認でござるが当てがあると言っていたでござるな。運動公園のダンジョン以外に当てがあるのでござるか?」
芹菜ちゃんの質問は尤もですので答えておきましょう。
先輩さんのことを話してしまいますが、ここにいる人達は信用できますので大丈夫でしょうからね。
「私も自信があるわけではないのですが、この前私の尊敬する先輩さんが宙に浮かぶ水晶玉を持っていました。その時はバレたくなかったみたいで誤魔化されたのですが、タイミング的にダンジョンに関係している可能性は高いと思います。ですのでダンジョンの場所を知っていないか聞いてみようと思います。」
「ほぉ、宙に浮かぶ水晶玉か。魔導具の類か?いや、この世界には魔導具は存在しないはず。まさか、この深淵のものに対しての結界装置か?もしや陰陽機関の追手が迫っているとでもいうのか…。奴ら世界を超えてまでこの深淵のものを、ジ・アビスを撃ち滅ぼしたいというのか!」
「深淵多分違う。それ忍の知り合い。」
「そうなのかアカリ?いや待てよ存在改変したのであればあるいは…。」
「深淵ちゃん。私の先輩さんを勝手に存在改変しないでください。大丈夫ですよ。私が聞いてきますので他のダンジョンの場所が分からなければなら運動公園に忍び込めばいいんです。簡単なことですよ。」
「む。そうか。忍の知り合いというのは本当のようだ。だが気を付けろよ?陰陽機関の手が伸びていないとは限らないからな。」
「はい。分かりました。」
私は一つ頷き、話がまとまったのを確認して黒板の前まで移動し教壇に両手をつけて高らかに宣言します。
「同士諸君!何物にも負けない意志を持つ我が同士にけん諸君!今日までの辛酸苦労をよくぞ乗り越えてきてくれました!時は来ました!怠惰に過ごしてきた
少し悪ノリが過ぎた演説でしたが、にけんメンバーならこの程度通常運行ですので問題ありません。だってほら、皆さん目が輝いていますしね。
「あいつら…駆逐してやる。この世から…1匹残らず!」
「ハーハッハッハッハッ!よかろう!この深淵の魔王--ジ・アビスが豚共に世界の真理を叩きこんでやろうではないか!」
「なるほどなるほど敵は世界の常識、でござるなか。いやはや、敵は大きければ大きい程燃えるでござる。ふふっ、ならば市丸流忍術の全てを用いて主命を果たしてみせるでござるよ!」
「あ、あのー皆さん…お、落ち着いてください…。いや、ホント頼みますから…。」
会長の静止は誰の耳にも止まることはなく、私達は一つの目標を宣言します。
「では、今回の文化祭…出し物は…」
「「「「ダンジョン攻略」でござる!」です!」だな!」
「駄目だこいつら…。早く何とかしないと…!」
そうして私達、二次元研究会、にけんの出し物が決まりました。
会長の独り言はもちろんスルーされましたがこれも通常運行ですので問題ありません。
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