第16話 コア、魔法の練習をする

マスターが影戦士と戦闘してから数日。

私達はレベル上げを目的として1階層で影人間を倒していました。


マスターは連日お仕事があるみたいでしたので夜の間だけでしたが、

着実にレベルは上がっていくでしょう。

私はというとレベルが上がっても体は水晶玉ですので何もできません。

しかもスキル構成は【魔力吸収】、【探査】、【浮遊】、そして【リンク契約】と戦闘系のスキルは一つもありません。


マスターは「【探査】で効率よく敵を探すこともできるから助かっている。そんなに気にするな」と言ってくれていますがこのままでいいとは思っていません。


ですので今日もマスターがお仕事に行かれたのを見送ったらスキルの練習をします。

ダンジョン入口の広間にいつものように向かい練習開始です。

スキルと一口に言っても様々ですが大きく分けてパッシブスキルとアクティブスキルの2つに分かれます。私のスキル構成でいえば【魔力吸収】がパッシブ。【探査】、【浮遊】がアクティブですね。【リンク契約】はユニークスキルという特殊スキルに入るのでこちらは例外です。


私が覚えようとしているのはアクティブスキル。それも魔法スキルを目標としています。

なぜならパッシブでは私の体では意味がなく、アクティブスキルでも体の関係で覚えても意味がない可能性が高い為、確実に役に立つであろう魔法を覚えようというのが私の考えです。


魔法スキルは属性によって効果が違い、火、風、水、土の4大元素の魔法と雷、氷、光、闇の特殊元素があります。魔力を練り上げ魔法として使うのですが、そこは相性によって覚えやすいなどがあるそうです。大抵の人は使えるのは4大元素の魔法ですのでそこから練習しましょう。


『まずは火ですね。魔力を練り上げ火へと変えるでしたっけ?試してみましょう。』


私が作られた時に与えられた基本情報から魔法の使い方を思い出し火の魔法を使ってみます。うまく発動できれば詠唱が自然と頭に浮かんでスキル獲得のメッセージが出るみたいです。このメッセージも個人によって違うようで何が言っているかは異世界ルーナリアでもハッキリと分かっていません。どうやら女神様でもないようです。一説には自分の心の声とも言われているみたいですね。


ともかく魔力を練り上げるイメージで体から放出させます。私の体から赤い魔力粒子が出ますこれを火に変換すればいいのですが…。難しいですね。上手く変換ができません。ただ赤い魔力粒子が漏れ出るだけです。


『ダメですね。他の属性も試してみましょう。』


属性は相性によって変わります。もしかしたら私には火が相性よくないのかもしれないですからね。

他の4大元素を全て試してみましょう。それでもダメなら特殊元素もあります。

どんどんいきましょう。








『ダメでした…。まさかどれも上手くいかないなんて…。何か方法が間違っているのでしょうか?』


愕然です。あれから全ての元素を試してみましたがスキルとして発現はしませんでした。

簡単に覚えられるものでもないですが何が相性がいいのか分からないのであれば練習しても効果が出るか分からないじゃないですか。どうしましょう。


『あああ…どうしましょう。結局私は役立たずの骨董品でしかないんですね。……どうせそのうちマスターにも売られてしまう運命なんですね…。う、うぁぁぁぁぁあん!』


そうです。きっとそうです!私みたいな役に立たない子はお店に売られて特売セールで店先に並べられる運命なんですよ!こんな魔法もろくに使えないダンジョンコアに価値なんてないんです!


「ここにいたかコア。探したぞ。」


『どうせ私なんてダンジョンコア特価398円とかで売られていても誰にも見向きされないんですよ!どうせ役立たずなんですから。そうして店の倉庫で在庫として埃を被って一生を終えてしまうんです!』


「おい。何を暴走している。」


ビシッと私の体に衝撃が走ります。視線を上げるとそこには呆れた目をしたマスターの姿が。

は、はわわわわ。も、もしかして今のこと聞かれてしまいましたか?


『マ、マスター…い、いつからそこに?』


「ふむ。いつからというと魔法が使えなくて結局私は役立たずの骨董品でしかないんですねとか言って辺りをブンブン飛び回っていたころからだな。」


そ、それってほとんど最初からですよね。


『そうですか…ではやっぱり私は売られてしまうんでしょうか?いえ、こんな役立たずですからそうなっても反論できないのですから…で、でもや”っばり売られだぐないですぅぅぅぅぅ。』


マスターがため息をついています。

や、やっぱり私は売られてしまうんですねぇぇぇぇぇええ!


「はぁ。コアまだ最初に会った時の事を気にしているのか?まぁ…あれは俺もやり過ぎたとは思うがお前も大概気にし過ぎだ。」


『でも、私は役立たずですし…。』


「はぁぁ。…お前は十分役に立ってるよ。斥候として回りの状況を把握してくれることがどれだけ有り難いことか全く分かってないな。」


そうでしょうか。私は敵を探しても後をついてくることしかできないので役に立てているとはとても言えないです。だからでしょうか。マスターがそんなことないと言ってもそれを否定してしまいます。


『で、でも…。』


マスターはそんな私の弱音を言わせてくれませんでした。


「ようく分かった。お前が戦闘ができなくてそれを納得できないと言うなら魔法の一つや二つを覚えればいい。スキルを覚えるのが大変ならそれまでは斥候職として頑張ってくれればいい。俺はそれで何の不満もないし不安もない。それでいいか?」


『マ、マスターいいんですか?私大して役に立っていないのに…。』


「アホか。そう思っているのはお前だけだ。そんなことよりスキルを覚えるならさっさとしろ。付き合ってやるから。」


投げやりな言葉でマスターは言いますが照れているのでしょか?

顔が少し赤いです。ふふ。マスターは照れ屋さんですね。

私は時間がかかるかもしれません。でも魔法を覚えてマスターのお役にきっとなってみせます。


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