第4話:伝染する熱と雨
前を歩く彼は思ったより背が高くて、しっかりした背中をしていた。
白いワイシャツを捲った腕から見える血管とかを見るとやっぱり異性なんだなあと実感して少しドキドキする。
転校生とは思えないぐらいに彼は迷いのない足取りで進む。
突然前にいる彼の足がピタリと止まり、下ばかり見ていた私は
彼にぶつかりそうになる。
視線を上げるとそこには職員室と書いてある木の板がぶら下がっている。
目の前で閉まっているドアを軽く彼は叩いてドアを開けた。
そしてその済んだ声を少しばかり大きく出して要件を伝えて先生に書類を渡す。私もそれに続いて渡した。
真っ赤なジャージを羽織る先生は受け取った後に、にかっと笑って
「ありがとう、雨だから帰り道気をつけてな」
と私達の頭をわしゃわしゃと雑に撫でて、ドアを閉めた。
それから私達は、ゆっくりと廊下を歩いて昇降口に向かった。
「今日は帰るの自転車じゃなくてバスかなあ……」
窓から見える外の滝のように屋根から落ちていく雨を見てそう呟くと、自転車通学だったんだねと彼は少し目を丸くした。
そしてんーと口から漏らしながら長く考え込んだ後に
「俺傘持ってるし、家まで……その送るよ。
いや、ほら、そのバスの時間もうないみたいだし、暗いしさ」
頭をかいてそう言う彼の顔はほんのり赤くなっていて、
その顔を見て伝染ったのか私の頬が少しずつ熱を帯びていくのを感じる。
恥ずかしさで思ったより声が出なくて、掠れ気味の声で私はありがとうと伝えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます