【2分読み】童話的お話 「平等」
まだ、地上が回っているのではなく、天空が回っていた頃、
背中に羽が生えている人々がいた。
『天使』
その様をそう呼称するのが正しいのかはわからない。
ただ、老いも若いも男も女も何人かに一人は背中に羽が生えていたのだった。
その羽は各々の姿形が違うだけでなく用途すら十人十色であった。
ある者の羽は空を飛ぶために
ある者の羽は疾風の如く地を走るために
また、ある者の羽は水中を弾丸のように突き進むために
極寒の地では身体を暖めるために
常夏の国では日光を防ぐために。
マイノリティであった彼らは虐げられながらも自分の羽の使い方について子どもの頃から模索し、成長するに従い自分なりに使いこなせるようになるのだった。
ある時『平等』という小さな生き物が卵から孵った。
その小さな生き物は今にも死んでしまいそうなほど弱々しかった。
すぐに死んでしまうと誰もが思っていた。
しかし、可愛い『平等』の姿を見た人々は『平等』を見かけると餌をやった。
なんとか食いつないでいた『平等』は、やがて訪れる時代の変化によってを急激に成長することになる。
生まれたての病弱さからは想像もつかぬ程巨大に成長した『平等』は、世界中を席巻した。
世界をその手に収めた『平等』は試しに人々の羽を食べてみた。
うまかった。
『平等』は手当たり次第に人々の羽をもいでは食べた。
やがて羽をもつ人間はこの地球から一人もいなくなったのだった。
人々は喜んだ。
これで我々は一つになったのだ
これで我々は「同じ」になったのだと。
世界は喜びに包まれたのだった。しかし、羽をもがれた蝶は、蟻と平等になれるのだろうか。
誰かが疑問に思っていたが、その頃、好物の羽がなくなった『平等』は次の好物を求めて試食の真っ最中なのであった。
おわり
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