【3分読み】女子高生力士 まこちゃん
●前書き●
小結、極竜山小五郎。
江戸時代の力士であり、強烈な寄りと変幻自在の投げで活躍した。
天保4年の大飢饉において流行り病にかかり病死。
生涯戦績47勝2敗6分勝負預かり2、横綱免許を得ることも期待されていたが、今の世においてはその名を知るものは極めて少ない……。
まこちゃんは私立星光女子学園に通う、カラオケとオシャレな洋服を買いに行くのが大好きな今時の女子高生である。
しかし、誰にも言えない秘密があったのだ。
それは、江戸時代の相撲取りがどういうわけか、まこちゃんの体に憑依してしまっていると言うことだ。
(おい、まこや、そろそろちゃんこの時間じゃないのか?)
「もう、うるさいわね!あんた一日何回ご飯食べれば気が済むのよ!あんたが取り憑いてから3キロも太っちゃたのよ!?どーしてくれんのよ!!」
(ふむ、これはまた面妖な事を申す娘じゃの。力士がちゃんこを食うのは仕事のうちじゃろうが。)
「知らないわよ!もう、これからバイトなんだからその間は黙ってなさいよ!」
まこちゃんはハンバーガーショップでアルバイトをしていた。
今日は憧れの間宮先輩と一緒のシフトなので、まこちゃんは内心ドキドキしていた。
しかし、淡い期待は崩れ去ることになる。
忙しいピークの時間も過ぎて、まこちゃんはキッチンの掃除をしていた。すると、ホールでけたたましい叫び声が聞こえたのだ。
恐る恐るホールに出てみると、憧れの間宮先輩が不良に絡まれていた。
「おみぇー、その態度はなんだよ~!!なめてんのかぁ!?」
モヒカンヘッドにトゲトゲしたアクセサリーをつけた世紀末な感じの「いかにも」な男が間宮先輩に詰め寄っていた。間宮先輩はただ一心に謝っていたが、不良は語気を荒げるばかりだった。
「土下座しろや!!誠意みせろや!!ケへへへ!!」
「た、大変!間宮先輩が困ってる!ねぇ、極竜山!なんとかならないの!?」
(ふむ、わしに任せておけ。)
「って、あんたに任せたら十中八九相撲技使うでしょ!!
こんなにか弱い女子高生が上手投げなんて間宮先輩にもドン引きされるんだからね!」
(わかっておるわ!まぁ、わしに体を貸してみい。)
「ちょ、ちょっと極竜山?きゃ!!
……おい。そこの若人達よ」
「ああん?なんだぁ姉ちゃん?おみゃーがコイツの代わりに俺の相手してくれんのかぁ?」
「無抵抗な店員に対する傍若無人なその態度……。
許すわけにはいかんな!!」
「けっ!!力で男に勝てると思ってんのかよ!!くらえ!!」
不良は右手のメリケンナックルでまこちゃんに殴りかかった。
一瞬、店内は凍りついた。しかし、その拳はいとも簡単に捌かれてしまった。そして次の瞬間、まこちゃんの右手が不良の面を張っていた。
乾いた音と共に不良は一歩二歩後ずさりした。
すかさず、まこちゃんは不良にがぶりより、外無双で止めを刺した。
「な、なんて鮮やかな連携技なんだ…、負けたぜ…、お前の勝ちだ……、ぐふ!!」
「ふう、御主はすり足から稽古し直した方がよいな。がっはっは!」
こうして、まこちゃんの淡い恋は実る事無く幕を閉じると同時に、
殺人という重い罪で服役することになったのである。
●次回予告●
まこちゃんと極竜山の元に届いた一通の手紙。
送り主はかつての大横綱『雲竜』。
しかし、それは果たし状などではなく、ラブレターであった……。
次回、「ちゃんことにゃんこのセプテンバーラブ」に櫓投げ!!
終。
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