【2分読み】ショート会話劇 アパマンとバキマン

アパマン「うわ~急に腹が痛くなってきちゃったよ~。 あそこのトイレに駆け込もう!」


がちゃ!ばたん!!


バキマン「うわ!なんだよ!人がクソしてる最中に!」


アパマン「ああ!すんません!鍵が開いていたもんで誰も入ってないと思って思いっきり開けちゃいました!」


バキマン「んだよてめえ!…ってあれ? アパマンじゃねえか!?久しぶりだな!」


アパマン「へ?…おお!!なんだバキマンかよ! 中学の卒業式以来だな~。元気してたか~?」


バキマン「へへ、あいかわらずだぜ。 お前、昔付き合ってたあの女とはまだよろしくやってんのか?」


アパマン「去年、浮気がばれてフラれたよ。」


バキマン「はっはっは!ざまあねえな! って言う俺も今は彼女いねえんだけどな…。」


アパマン「お互い寂しいな~。 で、話は変わるんだけどさ、洋式便所って普通貯水タンクに背を向けて便器の蓋を背もたれみたいにして座るじゃん。」


バキマン「え?お前何言ってんの?」


アパマン「いやさ、お前がどう見ても貯水タンクに向かって便器にまたがってる様にしか見えないからさ、和式便所じゃないんだから…。 こっちからじゃお前のケツしか見えないんだが…。」


バキマン「え?何言ってんだよ!普通はタンクに向かって座るぞ?」


アパマン「うっそつけよ!タンクを背にして座るよ普通は!! おかしいだろお前!」


バキマン「なんでそう言いきるんだよ! だって洋式トイレでも和式トイレでも立ちションの時は、ちゃんと貯水タンクに向かって立つじゃん! それなのに大便の時の洋式だけはタンクに背を向けるなんておかしいだろ!」


アパマン「おかしくねえよ!それが世間の常識なんだよ!」


バキマン「んなにが世間の常識だよ! じゃお前は自分以外の奴で洋式トイレでタンクに背を向けて用を足してる奴を見たことがあるのかよ!?」


アパマン「んなもんねえよ!って、人がうんこしてんのなんか見たくねえだろ!」


バキマン「てことはお前は見たこともないのに貯水タンクに背を向けて用を足すのが常識だと思っているのか!? ハン、とんだ世間知らずだな!」


アパマン「なんだと!?」


バキマン「じゃあてめえみんなに聞いてみろよ!

『洋式便所で用を足すときってどっちに向かって座りますか~?』 ってよ!」


アパマン「それはそれでおかしいだろ!そんなこと聞いたら頭おかしい奴とか思われんじゃねえか!」


バキマン「なんだこの腰抜けが!自分の意見を押し通すことも出来ないのか?」


アパマン「やかましいわ!そんな風にコアラが木にしがみつくみたいに貯水タンクにしがみついて座るものじゃないんだよ! こっち向けよ!お前と話してんのかお前のケツと話してんのかわかんなくなるだろうが!」


バキマン「そんなことねえよ!よく考えてみろよ! タンクに向かって座れば、座ったまんま水を流すのもすぐできるし、手も洗うことが出来るだろ?しかも今みたいに突然あけられても背中を向いているから顔を見られて恥ずかしいということもない!誰がどう見ても完璧に貯水タンクに向かって座るものだろ!!」


アパマン「く…、言われてみると理に適っているな…。」


バキマン「そういうことだ。俺も熱くなってしまったが、

誰にでも誤解や偏見というものがあるんだ。 お前もこれからは自分の目で確かめて物事を考えるようにしろよ。」


アパマン「そうだな、俺が間違っていたよ。 わかった!これからは俺も貯水タンクに向かって座るよ。」


バキマン「そういうことじゃねえよ!俺の話を鵜呑みにするんじゃなくて、自分の目で確かめろって言ってんだよ!」


アパマン「ってことは?」


バキマン「女子便所に行って確かめればいいだろ!? どっちに向かって座っているのかを!!」


アパマン「そうだな!よし見に行こう!」


バキマン「ふん。俺もついていってやるぜ! 一人じゃ心もとないだろ?」


アパマン「バキマン…、お前…。」


バキマン「へん、いいってことよ!俺たち、親友だろ?」




アパマン&バキマン「……ってことなんで、別にやましい気持ちがあって女子トイレに押し入ったわけじゃありません。」


警察官「入ったことは認めるんだね…。 じゃ、逮捕だ。」



そんな友情物語。


終。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る