【2分読み】時代劇 隠居と聞いてたのに……

『いえいえ、私はただの旅の隠居とそのお供ですよ。』


ってさっきあの人は言ったんだ。

旅をしてるにしては、やたら、こざっぱりした身なりで、生まれが良いのは一目瞭然なんだ。


お供の者と呼ばれた二人の若者も、屈強な体つきをしているし、明らかに怪しい。


それに、隠居したからこそ旅が出来るのに、働き盛りのお供の者は何故そんな酔狂な旅に付き合っているのだろう。


ついでにいえばどうやって生計を立てているのだろうか?

おっと、後ろからもう二人お供の者が現れてきた。



年齢不詳の厚化粧の女と、さっきの屈強な二人とは似ても似つかない頼りなさげな食いしん坊万歳みたいな男だ。


隠居のお供にしては大所帯だな。


ともかく、身なりからしても彼らは金持ちであることは火を見るより明らかだな。

よし、ここは一つ狙いをあの隠居達にしよう。


スリの源吉と呼ばれたこの俺にかかれば楽勝さ。


『っと!ごめんなさいよ。』


『こら!気をつけんか!』


『まあまあ、助さん、少しぶつかっただけじゃないですか。』


『全く、御隠居も人が良い。』


『ふぉっふぉっ』


へっ、楽勝だぜ、さて、いくら入ってるのかな~。

って、おわ!?

なんだ!あのバケモンみたいなでかい男は!?

隣には大の大人なのに風車持ったやばい奴もいるぞ!

しかも、こっちガン見してっぞ!』


『おい、男。財布を返して貰おうか。』


『へ、へん!なんのことだい?オレはなんも知らねえぜ!』


『ならば体に聞こうか!』


ポキポキなんてあからさまな感じで指を鳴らし始めたぞ、この男!


『へん!!逃げるが勝ちよ!

追いつけるもんなら追いついてみろ~!

って、足はや!!

痛い痛い!!ごめんなさいって!!

財布返しますからって!』


『ふん!相手を選ぶんだな!』


お~痛い…なんて怪力だよ。

…あれ?さっきの隠居達の仲間だったのかな?


まったく、どんな連中だよ。


あっ!まだあんな所をウロウロしてる。

あ、やっぱりあの怪力男、あの集団の仲間だったんだ~。

きっと名のある奴なんだろうな…。


確かあの若者も『助さん』とか呼ばれてたな…。

あだ名かな?


あの怪力男はなんて名前なんだろう?


『御隠居、スリ男から財布を取り返して参りました。

用心してくださいよ?』


『おぉ、頼りになりますなぁ、飛び猿は…』





……とびざる??


どんな名前だよ!

もののけか!!








終。

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