神様がいないなんて、

 ――良い子にしてたら願いは叶います。

 かつて、この世界のはじめの神はそういったという。文献は無い。この世界は、英雄王が存在した時代より前の文献は一つたりとも残っていないのだから当たり前なのだけど。

 英雄王は確かに神格化されてはいるけれど、僕が信じた神では無い。

「ジャック」

「おはようございます、お嬢様」

「今日は聖なる日だから、私、お願いを神様にしたの」

「……へぇ、どんな願い事ですか?」

 神は信じていた。僕は育った教会では、熱心な信徒だった。毎日祈りを捧げ、願い乞い、例えその願いが叶わなくても信じた。願いが叶わないことは、まだその祈りが足らないからなのだ。

 そう信じるほどに僕は熱心な信徒だった。

「貴方と永遠にいられますように、と」

 叶いますよ、と僕は言った。

 生前、僕は熱心な信徒で、願い続けた。だから、死んだ後神様のもとに行けた。

 しかし、文献にも載っていない神は、僕以外の人間には冷酷だった。

 僕はその時に気づいた。

 ――神はそのために、『良い子にしていたら』なんて言ったのだ。僕は天使として仕えたさ、この場で仕えて願い乞い続ければ、良い子にしていれば、神様は僕の願い事を叶えてくれる。そう思ったからだ。

 結果、叶えてくれた。

 しかし、僕は信じる神を変えたのだ。


『神様、では、さようなら』


 神様がいないなんて嘘だ。僕は、どんなことを自分にされても、僕は神を信じている。自らの黒い髪を恨んでも、自分の身を穢されても、死んだ時だって神を信じていない時などなかった。

 神様がいないなんて嘘だ。

 天使では無い僕は、神を信じていないわけでは無い。世間一般の神を信じていないだけで、僕はその神の絶対的信者だ。


 神様がいないなんて嘘だ。

 神様がいないなんて嘘だ。

 神様がいないなんて嘘だ。

 神様がいないなんて嘘だ。

 神様がいないなんて嘘だ。

 神様がいないなんて嘘だ。


 神様がいないなんて嘘だ。

 神様がいないなんて嘘だ。

 神様がいないなんて嘘だ。

 神様がいないなんて嘘だ。

 神様がいないなんて嘘だ。

 神様がいないなんて嘘だ。


 神様がいないなんて嘘だ。

 神様がいないなんて嘘だ。

 神様がいないなんて嘘だ。

 神様がいないなんて嘘だ。

 神様がいないなんて嘘だ。

 神様がいないなんて嘘だ。



 嘘ならば、僕は誰を信じれば良い?






 2018/12/25 書き下ろし

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