焼け跡の日記

「お嬢様?」

 寝台の下をごそごそする彼女を見て、僕は声をかけた。どこか遠くを見ながら、物を探していることはすぐに分かった。

「失くしものですか?」

「……ええ……ちょっと」

「僕、探しますよ。……えっと、特徴とかあったら教えてください」

 僕はその特徴を聞いたと思う。微かに覚えているのは、表紙に金で彫られたような真っ白い日記だった。日記を書くことが趣味だった、僕が大好きだった彼女の日記帳。


「……あ」

「なんだそれ」

 僕は黙って拾い上げた。焼け残った屋敷の、とある部屋の寝台の隙間。表紙は分厚かったからか燃えず、少し煤けただけで済んだようだ。紙も茶色く黄ばんでいるが読める。

「ジャック、それって?」

 親友は僕の本名を思わず口ずさんだ。

「……やっと」

 見つけられたよ、お嬢様。





2017/2/16

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