Ep.22 性格は悪魔Ⅱ
「あぁ……そう」
飛び出しても離してはくれない、何処へ行っても鎖に繋がれた感触がする。無いはずなのに。見えないはずなのに。
アスルはその様子を見て、
「……とりあえず、ここにサインと血判を。信用してないわけではありませんが定期的に来ないと、君は何をするか知れたものじゃありませんから」
言葉とは裏腹にアスルの顔は変わらない。
「そう、あの少女の事も調査結果報告いたしマス」
ロドルはピクッと耳を動かした。
「結果から言いますと、またしても外れデス」
ロドルの顔から血の気が引いていく。顔を俯かせたロドルは小さな声で「ごめん、ごめん……」と繰り返し呟く。アスルはロドルの表情に同情した。
「ですが、今までで一番近いのは事実デスね。実の――」
「もういい。結構だ」
「ですが」
「いいって言ってるだろ!?」
ロドルは断固拒否。アスルはやれやれと肩を竦める。
「そうも言ってられまセン。貴方が悪魔とはいえ、一人の未来ある少女を殺したことに変わりはないのデスから」
「それは! ――……いや」
「どうしてもそうせねばならなかった。――そうデスね?」
アスルの言葉はロドルに突き刺さる。
「――……仕方ないじゃないか……」
「そう。仕方ないのデス。ですが、貴方がそれを仕方ないと認めてはならない」
アスルは淡々と諭すよう。
「貴方は殺人鬼なのではない。どうしようもない救いようのない魂に安寧はないのデス。堕ちた後に救済処置はなく、人間が人間である限り堕ちないとは限らない。悪に囚われたための堕落その他もろもろ、そうして堕ち切った人間は悪魔の格好のエサ。そして悪魔と契約したものはいざ知らず」
アスルは追いつめる。逃げ場のない、追いつめた先に崖があろうとなかろうと、飛び降りるまで追及は止まらない。
「私は――貴方が行なったことを咎めはしないのデス。ですが、貴方が殺した者たちは貴方を許さないでショウ」
ロドルはふっと目を逸らした。
「今日はアイツの気配も感じない。――いつもは……何処かにいるのに」
「そうデスか。変デスね」
教会に来れば必ず目にするアイツは、まだ見ていない。
「まさか、さっきの襲撃が?」
「ほう……襲撃があったんデスか」
アスルは頷いた。腕を組み、僕の話に耳を傾けている。
確かにアレの正体は分からなかった。聞き出そうとしたが、即舌を噛んで気絶してしまったからだ。故に誰に指示されたのかもわからない。
「二人の襲撃者だった。フィオが動きを封じてくれたから、僕はもう一人を倒したけど……二人か」
「無理がありマスねぇ。一人ならともかく。襲撃という事は住宅地デスか」
「ありえなくはないけど無理があると思う。だけど、窓だって時間によっては鏡のようになるだろ?」
ロドルはそう言ったが、アスルは「いや、窓では白黒の画像しか出来まセン」と答えた。アイツの可能性は排除してもいいだろう。
「それぐらい分かりマス。不本意デスが」
アスルの顔は少し寂しげで、少し呆れているようだった。
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