番外編
クロスエアⅠ
―――Vergiss mein nicht!―――
僕がこの花を好きなのは、僕の人生を少しからず比喩しているからかもしれない。花は綺麗で儚い。咲き誇った瞬間、日に照らさせて花弁が透き通る瞬間、枯れ落ちる最期の瞬間。
それは人の人生に似ている。僕はこんなに綺麗な人生でもなかったし、僕はそんなに聖人でも、神に忠実だったわけでもない。
むしろ僕は、初めから最後まで『黒』だった。
僕は自分の為に、生きていくために、僕が明日を生きるためにどんなことでもやった。そんな僕を助けてくれた人は数多くいたが、僕は、僕は、どうしても、僕自身が救えない。僕が後悔する日々は、また積み重なって行く。
まるで散って消える花のように――。
もう目の前で失くすのは嫌なのに、繰り返してしまうのは僕の心が弱い所為なのか。初めは目の前で人を悲しませた。
こんなことがしたいわけではない。
僕はこんなことを望んでない。
僕はいつもそうなんだ。
大切なものはいつも何一つ、守れやしない。
――だから、この花を……――。
「もうすぐ、もうすぐだよ。……――お嬢様」
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