第250話:世紀末すぎる、大作戦。②
[星暦1557年3月3日]
「第一波、来ます。」
オペレータの報告にサイモン・ペンテコステは頷く。
「ブラックホール砲全門開け。なに、相手は人間じゃない。遠慮なくぶちかましてくれ。
次々に砲塔からエネルギービームが射出される。高熱のビームは小惑星を捉えると、その高熱で砕き始める。宇宙空間は低温だが空気が無いため熱は物質から放熱されず加速度的に高温になり、高温に耐えきれずに爆砕するのだ。
彼らは10隻から20隻程度の艦隊に分かれ、見事な艦隊運動を保ちながら攻撃を続ける。ブラックホール砲は持続的に使用すればそれだけ大容量のビームを射出できるため、後方に補給艦隊が控えており、フェニキア軍がそれを担っている。どんな物資でもエネルギー変換できるのがブラックホール砲の取り柄ではあるのだが、効率よく高出力ビームを生産できる物質は限定されており、それを売ってくれるわけである。
[星暦1557年5月5日]
「しかし、撃っても撃っても減りませんな。」
ペンテコステは参謀の柳生十兵衛に零す。3交代で休みなく打ち続けているが、やはり、終わりが見えない戦いには疲れが出る。どうにも達成感を得難いのだ。
「そうですな。ここが、我慢のしどころじゃろうて。」
十兵衛はそう受け流したが、次の手を考える必要を感じたのだ。
「そろそろ、頃合いか。」
「ああ。いいぜ。」
十兵衛はビリーたち英雄たちに出撃を要請した。
「ヒーーーーーハーーーーーー!」
勢いよく宇宙空間に飛び出す。
「久々の実戦だぜ!」
ビリーたちの身体はトムの持つ「
英雄たちにはそれぞれ一隻の艦艇とスタッフが与えられており、「元老院」設立後共に訓練を重ねて来たのだ。
「いくぜ!俺のファミリーども。俺の本気を見せてやらあ。喰らえ!『
本物の智天使の出力には遠く及ばないが、ブラックホール砲よりはるかに強力な銃弾が次々と発射される。
「では、私たちも行きましょう。」
弁慶が出陣する。
「義経千本桜!」
中型の小惑星が次々と破砕される。
呂布も、慶次も、ブルースも攻撃を重ねていく。
しかし、一向に終わりが見えない。夜も昼もなく、季節もない変化の乏しいところで戦い続けることに徐々に騎士たちも疲れを見せる。
「いつ終わるんだ?」
「そうだな、とりあえずここにいれば、
「終わらなかったらどうするんだ?俺たちの家族もみんな死んじまうぞ。俺たちの帰るところがなくなっちまう。」
そして、騎士たちにとっての限界が来ようとしていた。スフィアの暦で6月が終わりを迎えるころ、ついにヤツが現れたのだ。
それが小惑星「デストロイヤー」である。
「思ったよりでかいな。」
そして、自分たちの背後にも、だいぶ大きく見えるようになったスフィアとガイアが見えてくる。
7回に渡る総攻撃をかけたが、穴があく程度であり、数十メートルから100メートル単位の直径の小惑星とは比較にならないのだ。
「かの銀河戦争映画の悪の要塞デ〇スターと遜色無い大きさですよ。」
そして、突然、「デストロイヤー」の陰に隠れていた小衛星が飛び出して来た。もともとはスフィアの周りをまわっている衛星なのだが、デストロイヤーのせいで軌道の角度が変わり、惑星へ突入を開始したのだ。
「まずい、たった直径50mほどだが、惑星を氷河期に落とし込むには十分な大きさだ。」
その岩の塊はデストロイヤーとスフィアの重力の影響を受けぐんぐんと加速する。
「やばいぞ!誰か追いかけろ!」
その時だった。光りの筋が衛星にあたるとそれを包み込み蒸発させた。
「
「お疲れ様、交代要員が来たよ。」
モニターに凜の姿が映る。元老院軍の表情は安堵以上に疲労が色濃く出ていた。
「さあ、今度は僕たちの出番だ。作戦を始めようか。」
スフィア、そしてガイアの宇宙港に取り付けられた惑星砲「新エクスカリバー」に光が灯った。
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