第20話:無鉄砲すぎる、猫娘。

[ 星暦1550年3月3日]


「もう、すっかり脳と身体がなじんだようね。」

調整者チューナーであるナディンに太鼓判を押され、凜はほっと息をついた。


 ようやく、身体の拒絶反応が出なくなったのである。これまで、長時間心身に負荷がかかりすぎる状況に身をさらしつづけると、突然、気を失ったり身体が動かなくなったりする現象が見られたが、もはやその心配がなくなったのである。


 「では、もう調整室ここは卒業しても良い、ということですね?」

凜はそういったが、ナディンの方は、まだ、研究サンプルとしての凜を必要としているようであった。


「もう少し協力してくれると、『お姉さん』はうれしいなあ。」

ナディンに頭をなでられ、髪をくしゃくしゃにされると、凜は苦笑を浮かべた。


 乾燥地域のアヴァロンではあるが、冬場は雨期でありよく雨を降らす。近隣のホレブ山系の方には雪を降らせ、春の雪解けが始まると農耕に必要な水を豊かに供給してくれるのだ。


 まもなく、春の例大祭である「解放祭」が近づいている。今度は王都のキャメロットに多くの騎士たちが集まり、腕を競い、しのぎを削りあう奉納試合が数多く予定されている。


 当然のこととして、凜たちも昇格を目指し、毎日の稽古に余念がなかった。

今日も「カフェ・ド・シュバリエ」の2階の道場では竹刀や木槍の打ちあう音が響きわたっていた。


 無論、床も壁も防音仕様のため、一階のカフェの営業にそれほど影響はないものの、時々聞こえるどすん、という物音にも常連たちは動ずる様子もない。

「すいません。若い連中がお騒がせして。」

恐縮するヘンリーだが、その表情はとても嬉しそうだった。

「いやいや、なんだか昔の活気を思い出しますな。結構、結構。」

常連客は懐かしそうに笑顔を見せた。


 最近、リックの『腕』もめきめきと上がってきた。個人的な実力はまだまだからっきしっだが、ゼルがどんな動きを求めているかを理解できるようになってきたのである。

「憑依(ポゼッセオ)、絶好調。」

ゼルの要求にあわせたVサインも様になってきたようだ。


「リック、戦いの組み立て方を学ばないと、自分で戦えないぞ。君は身体の動きはかなりよくなっているが、おつむの方が空っぽすぎる。」

ゼルはまだまだ手厳しい。

師匠ゼル、それって俺がバカだってこと?」

リックの抗議にライン○ルト様ばりの檄がゼルから飛んでくる。

「きみにそう聞こえないのであれば、私の言い方が悪かったのであろうな。」


[ 星暦1550年3月30日]


春の例大祭である「解放祭」が始まった。

「解放祭」は約550年ほど昔、アマレク人によってそれまで400年間奴隷生活を余儀なくされていた人類が大士師、不知火尊の指導のもと、自由を勝ち取ったことを記念して、桜が咲くこの頃、毎年行われる。


そのため、「独立祭」、「自由祭」、「桜祭」などの別名で呼ばれることもある。選挙大戦コンクラーベがある年はこの祭りの期間中に予選が開幕するので、まさに「騎士」の祭りなのだ。


奉納試合の数も多く、掛けられる賞金も多額なので、この期間、王都は騎士でごった返す。


第十三旅団の面々は強襲降撃艦ヴェパールで王都に入った。

地上港がいっぱいで、宇宙港に接舷せざるを得なかった一行は、軌道エレベーターを降るシャトルの駅へと向かう。そこも人の波である。


「なんで地上港のゲートが取れなかったのかなぁ。」

人混みに揉まれながらリックは不満たらたらだ。


「先回は透さんの船で来た。正統十二騎士団(アポストル)の団長座艇は場所が確保されている。それと一緒にしてはいけない。」

ゼルがたしなめる。


「士師なのに?」

「すまない。挨拶に行ったら円卓の連中に総スカンされてしまってね。」

凛は笑顔で答えたが、リックは憤懣やるせ無いようである。


やはり祭や旅行での混雑は人々の興を削ぎ、苛立たせるらしく、やや殺気立った雰囲気が港内を漂っていた。


「ん、にゃー、何すんねん!」

甲高い少女の怒声が響く。どうやら、喧嘩になりそうな険悪な雰囲気である。

「なんでやねん? なんでウチの切符、譲らなアカンねん。自分、何様なん?」


見れば、フェニキア人でもネコ耳種族で知られるカルタゴ人の少女が、彼女よりずっと大きな騎士に掴みかからんばかりであった。というか、もうすでに掴みかかっていた。


口論の内容をまとめると、シャトルの座席を確保した少女から、その騎士がそのチケットを取り上げようとてしまったことに端を発するようだ。

その騎士は「奉納試合」に遅参することを恐れて、「緊急事態」を宣告し、その「緊急徴用権スタディオン」を行使してしまったのだ。


緊急徴用権スタディオン」というのは騎士に認められた権利で、緊急事態に一般市民の財産や権利を、一時「徴用」して、問題の解決を図ることが出来る権利である。

 例を挙げると、「七曲署」の刑事デカが逃走する犯人を追うために、近くに停めてあったバイクや自転車を警察手帳を出して借り上げる、的な行為である。


ただし、これは行使者のがわに強い自制と高い見識、そして人当たりの良さが無いと、行使されたがわに強烈な不満を残すものだ。

 むろん、払われた損害は王に請求され、国庫から償還される。しかし、異国の人間にいきなりそれを求めるのは確かにいただけない事態ではある。

しかも、「奉納試合」は公務には当たらないため、きわめて不適切な行使であった。


「それはウチの切符や。返さんかい。」

カルタゴ訛りの標準語スタンダードで騎士を挑発する。少女は身構えた。


「拳法使いか。」

凛は感心した様子で見守る。

「よっしゃー、喧嘩だ。俺の出番だ!」

突然、スイッチが入ったリックがそちらへ走り寄る。

「ゼル、あなた、リックにけしかけたりしてませんよね?」

マーリンが念を押す。


「いや、そんなことはしていない。しかし、興味深い。」

ゼルがワクワクしているようだ。一見無表情で分からないが、一応口角を上げている。

 ただ残念なことに、片側しかあげていないので、単に意地悪そうな表情に見えるかもしれない。


「ちょっと、みんな、落ち着くんだ。ブフォウ。」

 かっこよく登場したつもりだったのかもしれないが、そのタイミングが悪すぎた。リックはもろに少女の蹴りを顎に食らってしまったのだ。


彼はそのまま昏倒し、ノックアウトされてしまった。

「情けない。」

ゼルがリックの身体に憑依し、ゆらりと立ち上がる。


「なんだ貴様は。」

苛立ちが頂点に達したその騎士は手を剣の柄にかけた。


その時だった。

「落ち着くんだ!」

赤い短パンにサスペンダーを着こなした二足歩行の巨大なネズミが現れる。いやに声が高い。

「落ち着くんだ!」

もう一頭現れる。裏声である。ただ、とても愛嬌のある顔立ちだ。一応サングラスをしている。

「落ち着くんだ!」

次々現れ、あっという間に、少女と騎士の間に人垣を作る。

そして一列に並ぶとローリングダンスを始めたのだ。


「ソロモン72柱 序列第10位ブエル⋯⋯ですか? 誰です、呼んだのは?」

マーリンが呆れたように言う。

「あの、ネズミ、ギリギリだな。」

凛も呆れたように続ける。

「いいえ、完全にアウトです。」

マーリンが宣告する。


「ゼルがリクエストしました。あの格好で一列になってローリングダンスをして欲しいと。」

ゼルがリックに憑依したまま、ぬけぬけという。


「また、あなたですか。あのネズミは、永久著作権で悪名高い、あの⋯⋯。」

そこまで言ってマーリンは止めた。

「まさか、二千年以上も著作権を保持できるというの?」

凜が絶句する。

「だって、ディ●ニーですから。」

マーリンが断言(いってしまいま)した。

そして、音楽が始まるとネズミダンサーズたちはダンスを始めた。


「Z○○ですか?」

マーリンが無意味な伏字で叫ぶ。

「せめて『Aグザイル』にしようよ。」

凜が突っ込む。


 皆、呆気にとられ、そのうち、盛り上がり始める。なかなかどうして、キレのあるステップとダンスである。嘘のように、群衆の中から殺気立った雰囲気が消えて行く。


『暴動鎮圧アプリ』である「ブエル」が起動したのである。ブエルは硬軟様々な手段を使って群衆の暴徒化を防ぐアプリである。


「今のうちだ。逃げるぞゼル、マーリン。ビアンカ。」

凛はネコ耳少女の手を引き、ゼルはノックアウトされたリックを走らせ、マーリンとビアンカは荷物を引っ張りヴェパールに向かって逃走した。


「なんで逃げなアカンの?」

少女は不満気だ。


「それはですね、ブエルのつける『オチ』のセンスが最悪だからなのです。」

マーリンが苦笑する。


見事なダンスで群衆を魅了した「ネズミダンサーズ」がやんやの喝采の中、恐るべき『オチ』を付けた。

「『チューチュートレ◯ン』でした。『ネズミ』だけにね。」


ドヤ顔のネズミダンサーズに群衆のボルテージは一気に冷め、それは怒気を孕む。そして、無責任にも、そのままネズミダンサーズは消えて行った。


一行はヴェパールに乗ると、地上へと降下する。


「よく考えたら、駐車場1台分のスペースがあれば十分じゃないか。」

凛の説明に

「そうでした。ヴェパールは潜行機能があるわけですから、ハッチの出る場所だけ確保しておけば良かったんですねえ。」

マーリンが感心したように言う。


皆、人心地ついたところでネコ耳少女が自己紹介をはじめる。

「助けてくれておおきに。ウチはロゼマリア・ジェノスタイン。カルタゴの商家の娘や。自分ら若いのに、ええ船に乗っとるやん? どこの騎士団さんなん?」


「僕は棗凛太朗=トリスタン。聖槍騎士団に所属、この第十三旅団の旅団長なんだ。」

「わたしはゲイブ・マーリン。今は旅団副長をしています。」

「私はビアンカ・ギブソン。技巧騎士よ。……まだ『見習いエスクワイア』だけど。」

まだ伸びているリック以外が自己紹介を済ませた。


「ええなあ、自分ら。ウチもスフィアに生まれたかったわ。ウチな、子供ん時からな、格闘がめっちゃ好きやねん。それでな、どないしてでも武道をやりたかったんや。

でも、女の子にそんなんようさせられん、てオトンに反対されてな、地道に武器なしで出来る拳法を修行しとったんや。

 今回は祭にかこつけて、なんとしてでも騎士団に入れてもらおうと家を飛び出してきたんや。

そこで切符とられそうになってもうて。ホンマは怖かってんけど、必死やったわ。

助けてくれて、ホンマ、おおきに。」


ロゼは青みがかった黒髪をショートカットにした可愛らしい少女で、ビアンカと同じ16歳だと言う。


カルタゴ人らしい見事なネコ耳で、耳の内側は白い産毛で覆われていた。目はくりっとしてやや吊り上がった黒目で、ブルーの瞳に、瞳孔はやや縦に細長い。


「尻尾とか⋯⋯あるの?」

ビアンカが興味本位で尋ねると、

「もう無いで。小さい内に切ってまうんや。そんなん生えたままやったら、スカートなんて履かれへんもん。『セルフスカートめくり』やで。いやーん、えっち。だれや、うちのスカートまくったんは?って、このしっぽやないかーい!ってなるで。」

そう笑って答えた。


 しかし、祭りの期間中に、ホテルに空き部屋などあろうはずも無く、とりあえず行くあての無いロゼを、自分たちの宿泊先である聖槍騎士団の官舎まで連れて行った。


ビアンカとの相部屋である事を条件に許可されることになった。

「えー、私が凛と相部屋で良いのに。ねー。」

ビアンカが凛の腕に絡みながら抗議する。


「それは出来ない相談だな。」

そういいながら、突然、後ろから現れたのはマグダレーナ・エンデヴェールであった。


「メグ!」

突然の登場にみな驚いた。

「みな息災であったか?」

メグは騎士団に問い合わせて官舎の場所を確認していたのだ。


「ビアンカ、騎士団に入ったというのは本当だったのだな。」

メグは意外そうな口調だった。

「だって、凛くん家からいなくなっちゃったんだもん。私がお味噌汁を作ってあげるんだもん。」

「まあ、他の料理は俺が作っているからな。」

復活したリックが参戦する。


 メグが今回、凛に会いにきたのには理由があった。

去年の春、アヴァロンの街で二人が拉致された時に、『ウオーラヴァンナ聖騎士会』の動向の調査を凛に委ねており、その報告を受けることになっていたのだ。


「これから、私の両親と会ってもらいたいのだが。」

メグの発言に、リックとビアンカが反応する。

「どういうこと?」


「⋯⋯? え!?」

かえってメグが二人の反応にビックリしてしまった。」


「考え過ぎだ、二人とも。」

ここでマーリンが間に入る。

「ビアンカ、君の両親だって凛とはすでに知り合いじゃないですか。」


「ああ⋯⋯。実は、私は何度か窮地を凛に救われている。その礼を両親が望んでいるだけだ。」

交際相手を両親に紹介する、というような状況シチュエーションを想像されたとわかったメグは、慌ててそれを打ち消すように説明を加えた。


約束の時間になると迎えの自動車が寄越された。二人とも騎士団礼装でそれに乗り込む。

「で、結果はどうだったろうか?」

待ち兼ねたようにメグが尋ねる。

「ゼル、説明を。」


メグの故郷、ヌーぜリアル星人が植民するホレブ山系西側の森林地帯。その真ん中に所在するのが公都「シャーウッド」である。その広大な地域に住むエルフ族(ヌーゼリアル人)は8000万人とも言われる。


 王太子は結婚して家族を設け、そこで生まれた男子が成人する頃、王として即位するためにヌーゼリアル本星へ渡る。その際、側近として仕えて来た者たちも王太子と共に渡り、重臣として支えるのである。

 そして、残された息子が新たに王太子となるのである。逆に、本星で退位した王の近臣たちは、今度は惑星スフィアへと下野するのである。その子息たちの中から、新たに、王太子に仕える者たちが選ばれるのである。


こうして、家臣の持つ権力が一つの家柄に留まることなくサイクルを続けているのである。このシステムによって、本星における権力争いや、エンデヴェール王家に危害が及ぶことを回避して来たのである。

 権力が代々継承され、家臣の家の権勢が王家を上回る、ということは無いわけだ。ただ、これは王家にとっては都合の良いシステムではあるが、すべてのものが両手もろてをあげて喜んでいるわけではない。


ウオーラヴァンナ聖騎士会も、この現状に不満を持つ者たちの集まりである。彼らはスフィア王国の軍事技術を精力的に取り入れ、本星を武力をもって制圧し、継続的な権力を持ちたがっているのだ。

「狙いは、あなたの持つエンデヴェールの血。あなたか弟君を傀儡王に担ぎ、あなたと結婚して摂政を名乗り、自分たちの野望を正当化するのが目的。」


「しかし、我が国は王位に就けるのは男系のみ、と定められているが。」

メグの反論に

「あなたは『男系』女子。あなたが王位に就くのは問題は無い。ただ、あなたの子が王位に就くには、あなたが分家の男子と結婚が必要。」

そう解説する。


「つまり、王族を離籍した分家の中に、それを望む者がいる、ということか。」

そう言ってからメグはため息を吐く。

「難儀なものだな。女であることも。王族であることも。私はこういう時、よく思うのだ。アーニャ・エンデヴェール、彼女ならどうするのかと。」


そして、車がレストランの前に到着する。

凛がメグをエスコートしつつ店内に足を踏み入れた。


「王女殿下。お待ちいたしておりました。」

高級な店らしくギャルソンに出迎えられると、奥の個室へと二人は案内された。

凛は緊張を隠せない。その横顔をみてメグは笑いながら

「大丈夫だ。あなたは叱られるわけではないのだから。」


その部屋にはメグの『育て』の両親とその家族が待っていたのだ。

王太子夫妻が現れることを覚悟していた凛は拍子抜けしてしまった。

ゴード二ガルフォーゲル(ゴードン)・デュバルタクスと妻のエリクシーヌである。


 エルフ族のため、みな若々しく、一見だれが父で、どちらが息子なのか瞬時には判断しにくい。家族はみな、メグを応援しているようで、騎士の試合にも詳しかった。きっとメグのために勉強したのだろう、彼女がこの家族からいかに大切にされているかが窺えた。


武具の話になる。

「凛さんの武具は、ティソーナとコラーダでしたね。」

(よく憶えて⋯⋯いや、予習されたのだろう。)

凛は感心しつつ、

「いえ、今は自前のものが届きましたので、お返ししたのです。」

と答えた。


「それで今は?」

「ええ、刀と弓を使っています。」

そう凛が答えた瞬間、その場の雰囲気が一変した。


「弓?」

「弓ですか?」

(いやに食い付くな)

凛が苦笑を浮かべると、メグが説明した。


「わが民は『弓』の部族でな。本来、武具といえば弓なのだ。」

「森の民」とも呼ばれる彼らは、弓での狩猟に長けた民族なのだ。むろん、現在では銃にとって代わられたが、弓術は今でもヌーゼリアルの騎士にとっては無くてはならない嗜みなのである。


「5月に、私たちのいちばん大きなお祭りがあるの。凛さんもぜひいらしてみて。」

義母のエリクシーヌが勧める。


その祭りでは騎射大会があり、優勝者には王太子から褒美が出るというのである。騎射とは馬上から的に向かって矢を射る競技で、「流鏑馬」などが有名である。


「異国の者が優勝してしまってもよろしいのですか?」

凛の不敵な発言に、場は大いに盛り上がった。


[ 星暦1550年3月31日]


選挙大戦コンクラーベの無い年、騎士たちは奉納試合や、カップ戦などの試合ジョストをこなし、自分の腕を磨く。


戦績はレーティングに反映され、昇格にも影響する。

また、天位以上の騎士は、三つの例大祭にて行われる御前試合に召集され、腕前を披露することが求められているのだ。


三大祭りの御前試合にて優勝すれば「剣聖」「弓聖」「槍聖」の称号が、次の1年間与えられるのだ。ちなみに、どの武器で戦っても春の大祭の優勝者は「剣聖」、夏の大会の優勝者は「弓聖」、秋の大祭の優勝者は「槍聖」の名が付される。


  ただ、選挙大戦コンクラーベの年の御前試合では、その称号を授与しないので、選挙大戦コンクラーベの戦績によってその称号が与えられるのである。


凛とマーリンはそれぞれ人位の大会で優勝し、昨年の優勝がただの番狂わせでないことを示した。

「さっすが凛くん。強いねえ。」

ビアンカが勝利した凛を迎える。

「準備運動としてはまあまあだった。」

ゼルは相変わらず辛口だ。


「リックはどう?」

「ベスト4で終わった。ただし、彼の実力だ。」

ゼルは弟子の成長が嬉しい様子だ。


「ロゼは?」

凛がビアンカに尋ねる。

「ああ、あの娘(こ)なら、準天位の試合を観に行ったよ。ホントに格闘好きだよね。」


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