万年筆③ 科学反応を駆使した「消えないインク」の秘密
今や世間には多種多様な筆記具が席巻しています。その中でも代表的なものを上げると、
・鉛筆
・ボールペン
・油性ボールペン
・水性ボールペン
・水性顔料ボールペン
・熱感知ボールペン(消せるボールペン)
・シャープペンシル
・サインペン
・ローラーボール(極めて水性ボールペンに近い)
・筆ペン
・油性マジックインキ系ペン(名前ペン等)
ざっと思いつくだけでもこれだけの種類があり、驚くことにそのほとんどが安価に、コンシューマー向け商品なら100円から購入出来ます。
便利な世の中になりましたね。
さて、このように多種多様なメカニズムを持つペンとそのインクですが、現状、万年筆にしか採用されていないものがあります。
それは「古典ブルーブラック」です。
これは万年筆①でも触れているのですが、今回はそのメカニズムをご案内します。
その前に、まずこれら消えないインクは次のような特徴があります。
・そこそこの耐水性・耐光性・発色性を持つ
・時間と共に色合いが変わっていく
・その後は極めて高い耐水性を持つ → 消えない
となっています。万年筆なので筆圧が不要で、水性なのでさらさらと書け、にも関わらす水で流れないので保存用書類に使用可能。これは非常に魅力的だと思います。
さて、その仕組みですが、これまた非常に賢いものとなっています。
なぜなら、化学反応を駆使しているからです。
まずこのインク郡には「鉄イオン」が含まれています。
これが筆記後、酸化した鉄イオンに変化し、それがタンニン酸あるいは没食子酸と合わさり「キレート化合物」を作り出します。この物質は鈍鉄色をしており、これが筆記した紙に絡み合う事で、筆跡を残す事が出来る、というインテリな構造なのです。
酸化してから化学反応を起こすという過程が必要な為、それには時間を要します。これが徐々に色合いが変わっていくという結果につながるわけですね。そしてこの古典ブルーブラックに採用されている青色成分は耐光性が低くなっています。最終的にはその青みが消え、あら不思議、鈍鉄色の筆跡だけが残る。これは賢い!
インクの状態では酸化が進まない為、最初は普通の水溶性インクです。紙に書けばそこに浸透し、後から黒色に変化するため、少々消しゴムで表面を削ったくらいではその筆跡を消すことが出来ません。これは表面を削り落としてしまえば消えてしまう油性ボールペンなどにはない魅力だと思います。
そんな古典インクの必要性が認識され、最近ではブルー以外のカラーを発売するメーカーも登場しました。
ワインレッド→赤土色→黒
オリーブグリーン→苔色→黒
と言った変化を楽しめ、かつ長期保存に適している。
まさに夢のようなインクです。
また副次効果として、水性インクより耐水性、浸透性が高い事から、筆記後の汗による滲みがかなり軽減されるというメリットもあります。
この古典ブルーブラックの性質こそが、公文書で使用可能な最大の理由なのです。
是非、お試しあれ。
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