12話 下僕、爆誕
「突然ですまないな。だが、一刻も早く解決せねばならない問題でもあるのだ」
レナはそんな顔はしなかったが、口調からなんとなく疲れが見て取れた。
「いつ勇者が襲撃してくるかわからない状況では安心して寝ることもできないからな」
とは言いつつあなたの隣で爆睡かましてるやつもいるんですが。
「別にレナが謝ることないだろ。というかそもそもなんで一人足りないんだ?」
まずい質問かな? とは思いつつも、聞いておかなければいけない気がした。
“セクステット”になるにあたって、俺にもそういうことがあるかもしれないのだから。
「逃げ出したのだ」
一瞬レナが寂し気な顔になる。
「へ?」
「君の前任である男が勇者に臆し、逃げ出したのだ。そのせいであの“罪の塔”は今、空になっている」
間抜けな声が出てしまった。てっきり勇者に無残にも殺されただとか、病気でどうしようもなくとか、そういうものかと思っていた。
「そこで君があの塔を引き継ぎ、守ってほしいというわけなのだ」
こんなに綺麗なエルフに頼まれて断れる男がいるだろうか。いや、いない。
「ぜひやらせていただきます喜んで!」
「君ならそう言ってくれると思っていたよ、ありがとう」
嬉しそうに笑うレナを見るとこっちまで嬉しくなる。これが恋というやつだろうか。
そのとき、やっと決着がついたのか、ライラがふくれっ面で入ってきた。その後ろで同じく不機嫌そうなミウムがボイドに連れられ、学校の教卓のような机の前に立たされる。
一番奥にある大きな椅子に座ると同時に、ライラが口を開いた。
「今から、この勇者の処分を決める!」
いよいよミウムの刑罰が決められようとしていた。
だがライラの機嫌を見る限り、嫌な予感がする。
「こやつは火あぶりの刑にしたあと、骨を刻んで出汁をとり――」
「落ち着いてください。お嬢様」
ボイドが慌てて止めに入る。ライラもただのかわいい幼女じゃないということを忘れていた。
立たされているミウムは青ざめてぶるぶる震えている。
「ではどうすればよいのじゃ!」
魔王様が悲痛な叫びをあげる。
「こやつはエンドの胸に風穴を開けるだけでは飽き足らず体を八つ裂きにし、おまけに頭を半分に叩き割り脳髄をすすって――」
「おいおい待て待て。映像化できないようなことを言うのはやめろ。俺は脳髄をすすられた覚えはないぞ」
俺が止めなければミウムの罪はどんどんその重量を増やしていっただろう。
ではこういうのはどうだろうか、とレナが手を挙げる。
「エンドの下僕にするというのは」
……はい?
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