中編
アレスは月の神殿にある湯殿に一人浸かっていた。
「ふぅ…。」
一息ついたところで、先ほどの侍女の意味深な笑顔について考える。
彼女は終始にこやかだった。その笑みに見覚えがあった。
「う~~む、どこかで見たことある気もするんだがな…。」
アレスは思い出せなかった。思い出せない者は仕方ないので考えるのをやめて温泉を堪能することにした。すると、人の気配がする。アレスはとっさに身構えた。
が、そこに現れたのはバスタオル姿の一人の少女だった。長い銀髪にアイスブルーの瞳。色白で胸の膨らみもそこそこ、腰のくびれもアレス好み。
「あの~、お背中流しますね。」
「え?」
「そこに座ってください。」
「だ、だが…。」
「気にしない、気にしない。
あなた様は我が国を救ってくださった『英雄』なのですから。
まぁ、これはそのお返しとでも思ってください。」
と、少女に有無を言わせず風呂椅子に座られ、背中をごしごしと洗われる。
しかも、抱きつくように密着してくるから胸の膨らみが背中に当たる。
その感覚に下半身が反応するのは健全な男子として当然の反応だった。
アレスの理性はあっという間に限界を突破する。そして、少女の腕をとると、横抱きにする。
「きゃっ。」
「おい、寝室はどこだ?」
「え?」
「ここまで煽ったんだ。 責任取れ。」
「責任って?」
「馬鹿にしてるのか? 最後までやらせろ。」
「やらしい…。」
「今からやらしいことするんだ。
でも、ここじゃ逆上せるし、風邪を引く。」
「ああ、だから寝室ですか。」
「そうだ。 で、どっちだ。」
「そこの扉開けて、まっすぐ進んだ突き当りに私の寝室があります。」
「わかった。」
スタスタと歩き出し、寝室へとたどり着く。そして放り投げるように少女をベッドに降ろすとそのまま覆いかぶさり、貪るようにキスをする。
「おい、名前は何と言う。」
「え?」
「名前を呼べねば気持ちも半減する。」
「えっと、ディアーナ。 ディアーナです。」
「いい名前だな…。 似合ってる。」
ディアーナは顔を赤くする。その姿が初々しく可愛らしくてアレスは堪らない。それはアレスの箍を外すには十分すぎた。
その後、明け方近くまで睦み合ったのは言うまでもなかった。
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