第26話 命を大切にすることを心に留めろ
翌朝、カイトとバップが、里主のお父さんに呼び出された。おばあ様から、翼巫女のことを教わるためだ。当然、私も同席。スズは、寝ていていいといわれたが、そこを押して同席。カブ爺は、世人との交流を深めるために、世人に会ったことがある人の所に、出かけて行った。朝食を食べた後にそうなり、おばあ様は、MG2と、ニナに光巫女のことを話したらどうなるのか、地下の宇宙艇格納庫の二人のロボットたちに、聞きに降りて行った後なので、肝心のおばあ様がいない状態で話が始まった。実は、2階の広いベランダに、キツネのヤコと狸のポンタが来ていた。二人は、私、カイト、バップを見に来たのだ。ポンタは、ここに来るまで、寄り道を仕通しだったので、ヨキに頭をかまれて、半べそ状態だった。
耳や尻尾ならわかるけど、頭だもんな
と、言う感じで、しゅんとしていた。
二匹は、オズチ様から、私のことを聞いていたので、後で、私の部屋に会いに来てくれた。ヤコは、とっても毛並みがよくて、抱きついてしまった。ポンタは、やっぱり面白かった。
翼巫女は、ただの夢見巫女ではない。精霊様の代弁者である。
「カイト、バップ。翼巫女のことをどこまで聞いた?」
立一さんがいつになく、真顔で聞くので、二人は、かしこまった。
「実は、なっカイト」
バップを見て、何も知らないと察した。
「バップも、自分も、マナが、翼巫女だってことしか知らないです。自分は、里に慣れることや、交易のことで、いっぱいだったし」
「ぼくは、ずっと宇宙艇を作っていたでしょう」
「じゃあ、光サイドのことは?」
「それはもう」
「結構勉強しました」
さすが、化学お宅。
「そうか、では、質問だ。精霊様は、どういう存在だ?」
立一さんが腕組みして、二人をにらむものだから、二人は、学校の生徒になったような顔をして、お前が答えろよと譲り合った。
「バップの方が、ニナとよく話しているから詳しいだろ」
「カイトは、見えるんだから、実感あるでしょ」
「バップから答えてみろ」
「うぇ、精霊様は、ガイアの魂です」
「すごいな」
「えへへへ、ニナの受け売りです」
「ニナは、精霊様のことをどうだと言ったんだ」
「えっと、『生命を宿した星は、多くの魂を生み出します。それは、宇宙に広がっていきました。今から、500年前の話です。その、生命の宿った星は、魂の故郷になりました。地球は守られなくてはなりません。地球には、この星の魂が宿っています。その一端が、精霊です』。だったかな。宇宙に出て行った移民の故郷が、地球なのは、当たり前じゃないかと、言ったら、怒られました」
「なんだ、本当に、ニナの受け売りだな」
「すいません」
「いや、最初の『精霊様は、ガイアの魂』というのは、いい線いってるぞ。カイトはどうだ」
「精霊様は、とても長生きですよね。光の生物かなって思ったけど、実態になって生まれ変わりをする。ソラの文献を見つけました。ソラは、マナと同じように夢で空を飛ぶ」
「そうなの!」
「綾瀬家の特権か。それは、白門島の口伝だぞ。ふつう門外不出だ。マナミも、スズも16歳になったら、白門島の口伝を聞け。朱雀は、翼族だ。マナミは、朱雀の遊び相手だぞ」
16歳とは、誕生日の16歳。スズは、来週、誕生日だけど、私は、8月だ。もうすぐ夏。海水浴シーズンなので、白門島に行きたくなった。
「朱雀は、四神なのに、ずっと野生だそうです」
「それは、コンも同じだって」
「すまん、マナミ。カイトの話を聞こう。綾瀬家の解釈は、テツ兄さんにも聞かせたい話だ」
「最初、精霊は、記憶を持って転生する者のことを指すのかと思っていたけど、そうでない精霊がいる。でも、ソラの文献を読むと、ソラには、人や、ほかの精霊と意思が通じているみたいなんです。そのベースにあるのは、感情なのかな。それは、我々だって持っているでしょう。精霊の方が高次元体って感じだけど、仲間なんじゃないかな」
「いいぞ、カイトもバップも、精霊を理解する方向性は間違っていない。精霊だけではないぞ、地球にいる生命は、みんな地球という船に乗っている仲間だ。命を大切にすることを心に留めろ」
「でも、ぼくたち、動物を食べたりするけどな」
バップは、優しいリアリストだ。
「だから、『命を大切にすることを心に留めろ』といったんだ。わしの里は、猪をたまに食う。だからと言って、オズチ様が怒ったことがあるか。逆に、猪に農作物を荒らされたことも多々ある。その年が凶作だからと言って、猪のせいにしたりしないぞ。むしろ、神聖林にさつま芋を植えに行く」
「掘り起こされますよ」
「そうしたら、また植えに行く。今では、猪は、ほとんど里に下りてこなくなった。しかし、猪が増えすぎたら、今度はこちらが、神聖林に入って狩りをする。狼がいるから、大量発生はまれだが、そういう時は大々的にやる。そうやって、お互い生きてきたのだ。精霊様は、命の代表のような方たちだ。精霊様たちがいらっしゃるから、地球は生命に満ちている。バップ、そろそろ、宇宙艇も完成だろ。みんなで、金星や火星を見に行くと良い。地球ほど生命が豊かでないことに愕然とするなよ」
全員、頷いた。
この、命を大切にする話は、スズも私もよく知っている話なので、私たちは、部屋に引き上げることにした。それに、キツネのヤコと狸のポンタが気になってしょうがない。カイトたちには見えない所にいるが、二匹は、私とスズに丸見えだ。部屋から、ベランダに回って、二匹を自分の部屋に呼ぶことにした。
私たちが、部屋に引き上げた後も、立一さんのレクチャーは続いた。そして、おばあ様が、さらに突っ込んだ話をした。MG2とニナは、おばあ様の方針に従ったようだった。
部屋から、ベランダに回ってみると、ヤコと、ポンタがかしこまっているので、なんとなく人の言葉がわかるんだろうなと思った。でも、ポンタは、かしこまっているのが苦手なのか、プルプル震えている。
「スズが二人を呼んで」
「だよね」
スズが二匹に手招きすると、ポンタが嬉しそうにこちらにやって来た。ヤコが、仕方ないという感じで後をついてくる。
「私、マナミよ。ポンタ、ヤコ。よろしくね」
ポンタが、やんちゃな弟のような感じで、私に飛びついてきた。ヤコがポンタの尻尾をかじる。
「がうっ」
「ぐぎ!」
ヤコが、私の前で、かしこまった。
「あら、ヤコは、雌なのね」
「コン」
「もしかして、コンのお嫁さん?」
「こう~ん」
「だったら、私達も知ってるわよ」
「そうだけど、ヤコの顔に、コンが好きだって書いてあるわ」
「こん?こぅんこぅん」
「スズすごい。正解見たい。二人とも私の部屋にいらっしゃい」
ポンタは、立つと身長1メートルぐらいになるが、さほど大きくない。だけど、ヤコは、ポンタより大きく、私ぐらいある。狐族の中でも大きい方なのかな。コンとお似合いだと思う。コンは、1.8メートル近くある大狐だが、風貌は、キツネというより、犬に近い。だから、里の犬たちとも仲が良い。たぶんヤコは、コンの匂いをつけられてここにいるのだろう。なんだか、凛としていて、誇らしい。
「二人とも、お疲れ様。何か食べ物持ってくるね」
スズが、厨房に走った。ちょっとけだるそう。
そっか、スズも、ヤコも、ポンタも、寝てないんだ
「スズ、後は、私がやるね」
「お願いー」
私は、二匹と、すぐ仲良しになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます