第23話 オキ

 その夜、MG2と、ニナに呼び出されて、ファンヤ様の話をもう一度したが、光の巫女といった後、すぐ寝むってしまったと言ったら、がっかりしていた。


「光の巫女様は、全宇宙を導いてくださる方です」

「その光の巫女が、マナちゃんの友達になる言うことは、もう、生まれている言うことになる。それも、この地球でや」

「フクロウの精霊様にも主様にも聞いてみるけど、期待しないでね。知ってたら、私も聞いてるはずよ」

「そうやな」

「時期があるのよ。サーベルタイガーの赤ちゃんが大きくなる前に、会えるわ」


「今、宇宙って大変なの?」

「そんなことは、ないんやけど。巫女様がいると、みんな喜ぶんや」

「今度詳しく教えてね」

「そうやな」

「ダメよ。先入観がない方が、友達になれる」

「ニナの言う通りか。ごめんな、マナちゃん」

「いい。私も、普通に友達になりたいもん」


「一つだけ言うと、光の巫女様は、何千年か、何万年かに一人しか現れん。それが、前の巫女様が現れて、500年しかたっていないのに、もう、現れた。何事もないとええんやけど」


「その話も、精霊様たちにする」


「なんかあったら教えてや」




 そんなことがあって、ミミ様にその話をした。


「フォウ、ホ、フォウ。ファンヤ様とおっしゃるのね。私は日本を出たことがないし、ファンヤ様は、自分の土地を守って動かないから」


「主様なんですね」


「そうですよ。私たちの中でも、長い記憶を持つ大先輩です。会いたいわ」


「今度、スズと一緒に行きましょう。でも、しばらくは、記憶が戻らないと思います。それで、光の巫女様ってどんな方ですか」


「私は会ったことがありませんが、四神が守っている神様のことです。あなたは、翼族です。ですが、金色に光っているでしょう。だから、光翼族と呼ばれています。光の巫女様も金色に輝いているそうです」


「それで、ファンヤ様。私のことを光の巫女様と勘違いしたんだ。四神ってことは、コンたちが知っているってことね」


「ホ、ホウ。それはそうですが、コンは、野生のままでしょう。ソラもそうです。このことをあまり話したがらないオキに聞いてみてはどうです。もう、飛んでいけるでしょ」

 ソラとは、朱雀のこと、オキとは、玄武のこと。玄武は、隅音川の上流にいるのだが、夜は寝ている人なので、生活が、ミミ様と逆。私もそう。私は昼間、この姿で外を出歩いたことがない。一度、夜中に会いに行ったが、寝ていて話ができなかった。


「カイトがいるので、今度一緒に行きます。光の巫女様は、500年前にも出現したそうです」


「その通りですが、覚醒したのは、火星でした。光の世界ではなく、現実を守られた方です。ですから、コンたちは、覚醒しませんでした」


「じゃあ、光の世界が大変なことになるのかな」


「どうでしょう。答えは急がなくても良いように思えます。ホウ、フォホウ」



 ここまで聞くと、光の巫女様が気になってしょうがない。そこで、今度は、オズチ様に聞いてみた。


「ブフォ、すまんのう、わしは、会ったことがない。じゃが、ミミは、会ったことがあるはずじゃ。だが、ミミは、生まれたばかりで、野生じゃったから、よく覚えていないんじゃ」

 ミミ様は、五千歳。日本を出たことがないと言っていた。

「日本に出現したのでしょう」

「おっ、気付いとったか。光の巫女様は、人なのに精霊と言う事じゃ」

「ええっ、そうなんですか」

「ブフォフォ、しもうた、今のは、内緒じゃ」

「カイトたちにもですか」

「今は、待て。光の巫女の性質を持っている者が現れたからといって、昔の記憶を持っとるとは限らん。出会ったときに、答えが出るじゃろ」

「どうしてそんなことが、起こるんです?」

「巫女様も人じゃ、結婚して子供をもうけるじゃろ。子孫の中に、その性質の一端が芽生えるものが現れることもあるじゃろ」

「一端ですか」

「光の巫女様は、人の時でも、空に浮かんでいたそうじゃ」

「浮かぶ?聞いたことある。MG2がそんなこと言ってました」

「ブフォ、大阪弁を話すいうロボットか」

「思考のベースになった製作者が、そうっだったみたいです」

「MG2君と話してみなさい。何か解るじゃろ。しかし、くれぐれも、このことは内密にな」

「MG2には、奥さんがいるんです。ニナと記憶を共有しています」

「ロボットに嫁か。口外すな言うても広がりそうじゃな。やはり、本人に出会うまで待ちなさい。オキに聞くのがええ」

 やはり玄武に聞くのが良いようだ。

「そうします。でも」

「分かった。ワシがついていく。奴をたたき起こすしかないからの。明晩、隅音川の滝上に来なさい」

「ありがとうございます」



 そんなこんなで、オキに、会いに行くことになった。それも、ミミ様やコンまで来て、大所帯で押し掛けることになった。



 オキは、隅音川にある滝から、更に上流に登った源流が交わって川らしくなる前の、ちょっとした沼に住んでいる。昼間は、沼にある大きな畳のような石の上で甲羅干しをしているが、夜は、茂みの中の窪んだところで寝ている。とても大きな亀なので、茂みに隠れていても甲羅が見える。それに、夜は、緑のオーラが遠目にもよく光って見えるので、探すのに困らない。


 滝上まで来ると、沼までは、平坦な道のりだ。里の人も行けるのだが、その先が神聖森なので、恐れて誰も近づかない。しかし、神聖林に住んでいる人が、この沼に水を汲みに来ると聞いた。里に偶に降りてきて、薬を売ってくれる人たちなので、仲良くすれば良いのに交流がない。私は、カイトたちの体力が上がったら、昼間4人で行きたいと思っている。里では、大沼と呼んでいるが、神聖林の民は、亀沼と呼んでいたと思う。オキが、この一帯を守っている主様なので、大事にしているのだろう。


 四神は、みんな2800歳。オズチ様とあまり違わない。なのに、オキとか、コンとか、みんな呼び捨てだ。それをミミ様に聞くと、会えばわかるという。


「ホ、ホウ。オキね、亀のくせに結構、喋るから、聞き流すのよ」

 これが、ミミ様のオキと付き合う時のコツだそうだ。


「オキの奴は、亀じゃから、たいして動けんじゃろ。ブホッ、じゃから、亀沼を訪ねてきた者と、話がしたくて仕方ないんじゃ。最近は、わしが実体化したじゃろ。なかなか行けんようになったから遠慮しとるが、以前は、話に来いと、ちょくちょく言霊を飛ばしよるんじゃ」

「バウ」

「じゃあ、オキ様は、ずっと、実態なんですか」

「ブフォ、亀は、万年言うじゃろ」

「ホホウ、私は昼間寝ているでしょ。そんなにせっつかれなかったわ」


 みんな、オズチ様の背中に乗って、のんびり、亀沼を目指す。


「わふぅ~ん」

「コンは、話せないから、せっつかれなかったでしょう」

「ブホッ、それでも、来いと、言霊を飛ばしよる」

「コン」

「オキ様って、さびしがり屋さん?」

「そうよ。でも、その割には、今年になってから大人しいわね。ふぉふぉう、オズチ、何か知ってる」

「わしも遠いでな。ここのところご無沙汰じゃ。ブフォ、そういえば、マナを連れてこい言うとったな」

「この間、行きましたけど、寝てました」

「ブフォ」

「ホホー」

「コーン」

「まあ、そういうやつじゃ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る