第16話 粗忽屋コウのレクチャー

 二ヵ月後

 粗忽屋のコウおじさんが、地上人の事をレクチャーしてくれることになり、みんな仕事の手を休めて粗忽屋に行くことになった。スズは、スカイクルーザーをバーム軍にファイターとして登録した。登録する時、バップと名前でもめたが、リン星号という名前に落着いた。

 すぐにでも、龍の祠に行こうと話していたが、お婆様が、さくらんぼは、全員相性が良かったと、文献を調べてくれて、その時みんなで光素体を鍛えなさいと言われたので、六月まで持つことになった。私も、学習機のシュミュレーションモードを克服する目標が出来たから、急がないと決めた。私といえば、セレナさんと敦子さんに、厨房で料理を習う日々が続いている。これが、学習機を克服する方法だと、みんなが言うので、ハテナマークいっぱいなのだが、お婆様にまで言われて、そうしている。



 チリチリーン


「コウおじさん、来たわよ」

「いらっしゃい、待っていたわ」

「静先生!」

 粗忽屋に入ってみると、コウの姿はなく、代わりに奥さんの静が、カウンターに立っていた。静は、元担任の先生で、憧れの人だ。とても知的で愛情豊かな人だが、変わっている所があるとしたら、コウと結婚した事だとスズとよく話している。

「先生、今日は、休みなんですか」

「ええ、店番なのよ。コウが、地下の作業場で、貴方達を待っているわ。マナミさんとスズさんは、台所から、お茶を持っていってくださいね。お菓子は食卓の上に置いているわ」

「はーい」

「カイト君にバップ君ね。地上人になりたがっているコロニー人が来たって、学校で、噂になっているのよ。一度学校にも顔を出してくださいね」

「嬉しいです」

「思った以上に歓迎されているので、僕らの方が驚いているぐらいです」

「ワージシティーとご近所さんなのに、交流がない方が不自然なのよ。二人とも歓迎するわ」


 地上人を否定し続けているのは、コロニー人の方だ。しかし、龍の里のように寛大な地上人ばかりではない。カイト達もコウに状況を聞けば、もっと地上人の事が理解できるだろう。お茶を持って地下の作業場に下りると、コウが私達を待っていた。それは、地上人の事を知っている私達にも最初からちゃんと聞けということで、コウが、珍しく先生モードに入っていた。


「マナミちゃん、スズちゃん遅いぞ。お茶は、後でいいだろう。今日は、二人にも、ちゃんと話しを聞いて貰いたいんだよ」

「はーい」

 私達は、慌ててモニター前に急いだ。スズが、「まじめなコウおじさん初めて見た」と、耳打ちしてくる。こんなことは、初めてだ。私達が、席に座るとコウは、待ちかねた様に話し始めた。


「みんな揃ったな。まずは最初に言っておく。日本で、コロニー人と仲良くしようとしている町は、ここ一帯で、龍の里とだるま市だけだ。北にいくほど友好的な里も増えてくるが、コロニーと農産物の交易を行っている地域は、北海道以北に限られている。最近北海道でも交易が出来ないかと検討されていて、近いうちに実現する可能性が出てきた。それを踏まえて話しを聞いてくれ」


「北海道以北って、自主参加している樺太のことですか」

「その通り、樺太には、日本人はいないが、日本政府預かりになっている。これは、非公式だが、バーム地球維持課では、了承されていることだ」

「それって、国連を飛ばしているってことですよね」


「そうだ。バーム評議会は、外宇宙も含めた全人類の統合評議会だからな。暗黙の了解以上の効力がある。地上人は、旧体制を踏襲しているから、実際の地域権移動は、国連を通さないほうがうまくいくこともある。こうすることで、地球コロニー会議にも黙認させる事が出来る。樺太の農作物は、コロニー人の健康に寄与することで、北海道のコロニーに貢献し、収入では、ロシアも助けることになる。しかし、これは、北海道までで、それより南は、コロニー人との行き来がないと考えてくれ。龍の里の方が特別なんだ。それじゃあ、日本政府が作った地上人の分布や地域性の資料映像を流すぞ地上人のパワーバランスをついでに、ワシが解説してやる」


 資料映像は、日本に限られた物だったが、龍の里が、恵まれた里だと痛感させられた。人口が増えている地域が、龍の里だけだったからだ。だるま市が、かろうじて維持反転の兆しを見せている。


「来年は、だるま市みたいに、龍の里から森との橋渡しをする守人を十の里や町に派遣する事が決まった。カブ爺は、守人の育成に掛かりっきりになるだろう。そのための特別な通信施設は、バーム軍が給与してくれる。マナミちゃんの修行が、終わりに近いと、ばば様が言ったのがきっかけだ。派遣する町の選別は、わしが任された」

「初めて聞いた」

「すごい」


「最近マナミちゃんは、料理の修業中なんだろ。ばば様の手綱が緩んできた証拠さ。カイトとバップは、一年ぐらいで、地上になれるとMG2が、言ったそうじゃないか。二人とも、ここに来て二ヶ月経った。コロニーに戻れる試し期間は、あと一ヶ月だけど、決心は変わらないかい」

「もちろんです」

 バップは、スズを見ながら、早々と回答した。

「コロニーを出るときに決めていましたから」

 カイトも清々しているようだ。


「それを聞いて安心した。二人には、マナミちゃんのバックアップと交易関係を頼む。地球外の貿易は、カイトのお父さんが、引き受けてくれた。一度ビジネスモデルを作ると貿易は、簡単に広める事が出来るそうだ。問題は、守人の養成になるから、龍の里に新たな学び舎が出来ることになっている。スズちゃんの両親は、来年里に帰る事になるだろうね」

「おじさん本当!」

「ああ、ごめん、ごめん。ぬか喜びさせちゃったかな。守人を送る里や町に視察に出なくてはいけないから、そんなに里にはいないよ。でも、帰ってからすぐには、視察に立たないから一ヶ月ぐらいは、一緒にいられると思うぞ」


 スズは、とても嬉しそうだ。以前だと、私は、うらやましがっていたことだろう。最近、セレナさんや敦子さんと話しているせいか以前ほどではなくなっている。私は、一段落ついたとおもった。


「おじさん、そろそろ、お茶にしない」

「そうだな、一休みするか」

「マナが、チョコレートケーキを焼いたのよ。バップお茶入れるの手伝って」

「おう」

 スズ達は、お茶の準備を始めた。


 カイトは、この二ヶ月で、だるま市の事を殆ど把握していた。一度、私と一緒に町にも行っている。龍の里もよく一人で散歩しては、多くの家に立ち寄って雑談しているので、里の人気者になっている。主に市場と農家に行くのだが、たまにお昼もいただいているので、昼食に帰らない事がある。しかし、お茶には帰ってくるという習性を見つけた。セレナが言うには、カイトは、本人が思っている以上に甘党だそうで、里では、高くて流通していないチョコレート系のデザートもいっぱい作ってくれた。コウは、地上人が作っているガーナチョコを店に出している。これは、コロニーより高いので、結局、本人が食べているだけらしい。


「コウおじさん、チョコレートケーキ美味しい?」

「悪くないんじゃないか。そうだな、ガーナチョコを食べてみるか」


 コウが持ってきた板チョコは、ビックリするほど美味しかった。

「おいしい」

「こんなに美味しいの初めてだよ」

 板チョコをよく食べていた、カイトたちが一番驚いている。

「コクが違うのさ。でも、チョコレートケーキも良く出来ている。シェルターのチョコで安く作れるんなら、里に広めてもいいんじゃないか。コロニーとも、もっと仲良くできる」

「いいかも。試しに、やってみたら」

「そうね、セレナさんと敦子さんに相談する。里で作るとパンや、ケーキの生地が米粉でしょう。コロニーは小麦粉だから最初は大変だったけど、米粉の方が美味しいって誉められたの。チョコは、粗忽屋のも使ってもいいんじゃないかな。シェルター産の半分で足りそう」

「なるほど、里の物とあわせて使うのは、手だな。セレナさんと敦子さんに言ってくれ、粗忽屋に来て商品を見てもらいたい。売れなかった品物が、里に浸透することになるかもしれないからな」


 コウは、一人で納得する様に、ケーキを味わった。砂金を里で採取する様になって、ワージシティーとの交流が模索され始めた。放射線によるDNA異常の研究も進み、市民レベルでの交易の実現も近い。


「マナのは、母さん直伝だもんな。おいしいよ」

「惣菜は、うちの母ちゃん直伝だぜ。そっちもコウさんに食べてもらおうよ」

 マナミのケーキは、だるま市より貿易範囲の広いワージシティーの品物を里に合わせる糸口になりそうだ。まずは、里にコロニー製品が広まるのも悪くない。と、コウは、思った。




「それじゃあ続きな。具体的に隣町の庄の里が、どんな状態で、どうしたら良いか。結果どうなるのか、まで、話したい」


 庄の里は、龍の里の東側にある。ここも龍神様が守っている里だ。


「庄の里も、うちと一緒で、農業中心の里だ。主にお米を作っている。耕作範囲も広いぞ。桜の防護林を早い段階で植林したのが功を奏して、広い平野部は、清浄だ。大農場形態を元々取っていたから、殆ど機械で稲作が出来る。だから、里は、お米の品質管理と加工工場、製品の流通が人々の主な仕事だ。この里で、一番の問題は、稲の害虫被害だ。それも年々ひどくなっている。対策は、農薬になるが、今は、時期が悪い。農薬で稲が突然変異を起して一度大被害を受けている」


「聞いたことある。食べられないお米で、何件か家が作られたんでしょ」

「お米をレンガの継ぎ目に使った建物だよね」


「そうだ。里親の蔵は、その時作ったものだ。シェルター人は、シェルターには入れてくれないが、食べ物や薬を援助してくれないというほど、ひどい人達じゃない。シェルター人のおかげで、何とか、その時の危機をやり過ごしたんだ。だが、農薬を使った大収穫農法は、打ち砕かれてしまった。使えるところは、機械を使いながら、田んぼは、ご先祖様の知恵を使った自然農法になったんだ。激変する自然と良く調和しているほうだよ。だけど、全地区を田んぼにしているから、問題が起きるととても脆い。ちゃんと田んぼに向き合える人も少なくて、作の出来不出来は、年によって激変している。収穫も減る一方だ」


 カイトがいつも思っている疑問をぶつけた。


「お米は、主食ですよね。裕福な里のはずなのに、どうして人口が減るんですか」


「ちゃんと田んぼと向き合える人が少ないからだよ。生態系は、常に変化している。放射線にある程度なれた地上人は、丈夫な体をしているけど、自然との調和や知恵が足りないんだ。益虫だと思っていた蜘蛛に毒をもつ者が現れたり、収穫時期の鳥害対策をやりすぎて、里山を潰してしまったりしたから、害虫の天敵の鳥たちまで排除してしまった。里山を壊して、更に生態系をおかしくしたときに疫病が発生した。コロニーの医者でも、対処できなかったよ」


「庄の里の近くにあるシェルターは、ソランシティーですよね。ここの食用プラントには、影響なかったんですか」


「外界と完全隔離した工場だよ。疫病が発生した時は、宇宙服に近い防護服を着て、里に訪問していたそうだ。シェルターの人は、抗生物質を開発してくれたが、根本的な解決はしてくれなかった。結局里で判った事は、ツマグロヨコバエが、ウイルスの媒介だったことだ」


「人にですか?」


「突然変異の亜種さ。対処策は、田んぼに塩をまくことだった。たまたま、金魚を田んぼで飼っていた人のところでは、ツマグロヨコバエの亜種が発生していなかったのが、ヒントになったんだ。うちの里でも、少し塩をまくのはそのためだよ。でも、その対処策が分かるまで、3%の人が亡くなった。それも、体力のない小さな子供ばかりだった。これが何を意味しているか分かるだろ。さて、こんな事がよくある激動の時代なのは仕方ない。これからどうするか、それが大切な事だと思う。君達は、どう対処する?」


 対処といわれても、学習機は、起こりえない事を対処する事まで教えてくれない。


「起きてしまった災害を探偵みたいに、原因究明して、対処しろってことですよね。その土地にいて、時間を掛けるしかないのかな」


 バップの意見は、コウの話しをなぞるもので、決して間違ったものではなかったが、それだと、子供たちが死んでしまうという恐怖を感じた。


「バップの意見は最もだが、犠牲が出るまで何もしないのは、いただけない。カブ爺がいたら、及第点を貰えないぞ」


「でも、突然変異に、どう対処すればいいのかな。突然変異を予測するなんて出来ないよ」


「おじいちゃんだったら、予防をするはず。考え直してよバップ」と、スズ。


「う~ん、試験場で害虫を飼うとか?」


「それは、シェルター人が、やっていることだ。龍の里にそんな試験場は無いだろ」

「だよなー突然変異をシュミュレートする方が大変かも」


「害虫を駆除することばかり考えているからダメなんじゃないか。害虫を全滅させても、生態系に異常をきたしそうだもんな」

「カイトはいい線いってるぞ」

「カイトがんばって」

「マナは解るのか」

「それはね」

 私は、スズと目を合わせて笑った。


「さっきワシが話した話の中に、ヒントがあるぞ」

「ちゃんと田んぼに向き合えって事?」

「里山を潰したことかな」

「カイトが、正解」


「バップも悪くないと思うわ」

「そうだ、里山を復活させることが、予防になる」

「でも、鳥害はどうするのかな。里山は、鳥の巣になるでしょう」


「そうかな、里山を潰したら、その代わり、害虫を食べてくれる益鳥も住めなくなるぞ。神聖林から受ける影響の縮図が里山だ。そこで、自然調和を学ばなくてどうする。変化の兆候も感じる事が出来るからな。これで五十点だ。後五十点考えてくれ」


「さっきのでも、ギブアップなんだ。スズ答えてよ」


「ごめん、ここから先は私にもわからない。マナの神聖林遊びが、役に立つことぐらいかな」

「神聖林の方が先に異変が起こるのか」

「そうよ。里の中より変化が激しいもん。だけど、里の中で起きた突然変異か。厄介ね」


「ノーヒントは、厳しいか。じゃあもう少しこのツマグロヨコバエの話しをする。ツマグロヨコバは、稲汁を吸う虫で、それが原因で、稲にウイルスを植えつけてしまう。このウイルスは、人に感染しない。ところが、突然変異したツマグロヨコバは、鳩を感染させてしまった。里にいた鳩は、全部捕まえて遺棄された。この鳩のウイルスが、鶏に感染して初めて人に感染したんだ」


「そんな、鳩は神聖林にもいるわ」


「そうだ、きりが無い話だ。ウイルスを辿ってツマグロヨコバエ亜種に辿り着いた時は、病気が里中に蔓延していた。里の人は、唖然としたそうだよ。畑には、雀だってムクドリだっている。ムクドリは、益鳥だからね。神聖林には、猿より人に近い猩々がいるだろう。同じ病気に掛かっていたそうだ。まだ、里に病気が蔓延していなかった時に発見されていたが、怖がって誰も、手を差し伸べなかった。猩々は、自力で治って又見なくなったそうだ。そして、それ以来、目撃情報は皆無に等しい。うちの主様みたいに、ちょこちょこ普通に会えるほうが珍しい事だぞ」


「病気の兆候は、神聖林に有ったんだ」

「自分達が病気になるまで何もしなかったの?」

「悲しい話だけど、その通りだ」


「自分達が大変なのは、分かるけど。困っている猩々に手を差し伸べなかったのが、病気を蔓延させた原因よね」

「私達は、自然の一部だってカブ爺が言ってたわ。これじゃあ、シェルターの人と変わらないじゃない」


 カイトとバップは困った顔をした。病気のワクチンを開発したのはシェルター人だけど、いい訳くさいので二人とも口を開かない。


「ごめんなさい。シェルターの人を攻めるつもりは無いの」

「分かってる」

「気にしないで」


「神聖林の植物や動物を助ける、助けると言っていろいろな事を龍の里ではやっている。気づいたら自分達が助かっていた事が、いっぱい有ったって事だ。そのうち奥神聖林までいける様になったら、そこに住んでいる人に会って見るといい。里には降りてこないけど、たまに神聖林に降りて来るだろ。変わった薬なんかを交換していく人達だよ」


「マナは会ったことあるんだろ」

「無いわ。私は、奥神聖林に入った事が無いの。神聖林も夜中に人がうろうろ出来る所じゃないから、夢で見かけたことも無いし」

 今だったら、もっと奥までいける様になっているから、コウに言われたので奥神聖林まで行って見ようかなと思った。


「分かった。神聖林も自然の一部で、ぼく達と同じなんだ。だから、神聖林も里山のつもりでいないとダメなんだ」


 バップが今日一番の答えを言った。


「いい答えだぞ、バップ。今の気持ちを踏まえて、里に里山を作ればいいんだ。そうすれば、被害を抑えられたかもしれない。桜や厳しくない自然を里山に植えればいい」


 コウのレクチャーは、ここで終わったが、こういう具体的な話は、まだまだいっぱい有るといっていた。カイトは、こういう話しを集めて、ニナにレポートしていた。ニナが、学習機にインプットしてくれるから、地上人以外の人もこの話しを学ぶ事ができる様になる。後で聞いた話しだが、ニナの学習機は、バーム評議会と直結している。全人類とリンクできるとあって、カイトは、必ずニナにレポートする様になっていた。


「龍の祠のさくらんぼは、もう生っているんじゃない」

「そうね、里も収穫しだしたし」

「それじゃあ龍の祠に行くんだ」

「明日は、宇宙艇作るの休むよ」

「リーダーは、私だからね」


 スズは、やる気満々だ。まだ宇宙での訓練はしていないからパイロットはまだまだだが、武術や格闘技は里の男では、太刀打ちできなくなっている。ニナとMG2ったらどんな訓練しているのかしら。スズの親友としては、お嫁の貰い手がいなくなるんじゃないかと、とても心配だ。当の本人は、バップに好きだといわれ続けて、安心しきって強くなっているように見える。千年振りに現われた翼巫女の守り手なので、お婆様もカブ爺もお父さんまで、スズをけしかける。しかし、こと、光素体に関しては、私の領分だ。


「スズ、むりしないでね」

「わかってるって。でも、私もマナの話しを聞き取って理解しているから、最初に挑戦するよ」

「じゃあ、明日」

「カイト達も主様の所に連れて行くのかい」

「二ヶ月待ったでしょう。主様も痺れを切らせているのよ」

「一度、里に下りて来そうになったんだけど、あの巨体じゃない。マナに目立つから止めてくださいっていわれて、しょぼんとしたそうよ」


「マナミちゃん主様より強いのかい」

「ちがう。あの巨体で里を歩かれたら道が壊れるから、丁寧に断っただけ」

「MG2が、アスファルトで道を整備してくれるそうだよ」

「そうなる前に、来てもらえばいいんじゃないかな。どうせ直すんだし」


 コウやカイト、それにバップに言われて、オズチ様を里に呼ぶことになってしまった。多分里を上げてのお祭り騒ぎになってしまうだろう。


「カイトが主様に鍛えられると昼間でも、主様と話せるようになるそうなの。だから、お父さんに、主様を呼んでいいかって話すけど、もうちょっと待って。昼間に話せるのは、カイトだけよ」

「ハハハこりゃ、楽しみだ。カイト、絶対主様と話せるようになれ」


 コウも、私たちの話に乗った。里のみんなは、主様が大好きだ。オズチ様は、サツマイモを育てるのが好きな主様で、里のお米が不作のときに、神聖林の中の芋畑を開放してくれた事がある。今では、どの農家も、主力の農作物以外に必ず、サツマイモを育てている。

 オズチ様には、感謝してもし切れないのに、何もお返しが出来ていない。私も、祭りになる事を請合った。どうせお祭りをやるなら、お父さんの事だから告示するだろうな。ワージシティーの人まで来そうな気がした。

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