願いは
「興味ないね。」
望は一言言い放った。悪びれもせず、恐れもせずに言い放った。
「理由を聞かせてもらえないかい。」
少しの間の後、善治は静かに口を開いた。善治は動揺していた。していたが決して表面に出さぬように机の下の手を自らの骨をおる勢いで握りしめていた。
「俺に全く関係ないからだ。俺はそんな面倒事に首を突っ込みたくないんでね。」
望は答えた。
カンッ!
不意に靴を地面に叩きつけた高い音が響く。その靴を辿って行くと友嗣の顔に当たった。
「どういうことだよ。関係ない事無いだろ。同じWish使いだし、お前の周りでWish使いが悪事を働くかもしれないんだぞ。」
あからさまにイライラしている様子だ。
「Wish使いが悪事をはたらいてそれで何が起きようが俺には関係ねーよ。」
望は先程と口調を一切変えずに答える。
「それで人が死んでてもか。」
「あぁ、俺には一切関係ない。何処で誰が死のうとな。」
「てめぇ…。」
望と友嗣の間には考え方において絶対的な違いがあった。
「あんたほんとにそんな事言えるの!人が死んだ事に対して関係ないですって!」
叫ぶように望にいい、向かっていく。鬼の形相だ。
「天子辞めなさい。」
「でもッ」
殴りかかろうとする天子を声で抑える善治。
「俺は早く家に帰して欲しいんだけど。」
雰囲気などお構い無しに望は放つ。
「最後に君の望むことを教えてくれないか。」
静かに善治は問いかける。
「俺の望みはただひとつ。平穏に生きることだ。俺の周りで何も起きず、あの街で平穏に暮らして行くことだ。まぁ、面倒事は俺が絶対に起こさせないんだけどね。」
答える望、静かに聴く善治。
直後、善治は笑いだす。その笑いは高らかに部屋に響く。笑いながら何かを望に投げる。
「君にこれをあげよう。」
空中を舞う謎の物体。それは望の右手に吸い込まれるようにとられた。
「なんだこれは。」
渡されたのは黒いカードだった。そのカードはポイントカードのように小さくそして薄い物だった。望はただ、異様な硬さを感じた。触れただけで分かる、人の力では決して曲がらぬ強度であると。
「私達使っている通信機器、コイラーだ。それを使えば私達の誰にでも連絡をとれる。使い方はそのカードに話したい相手を言えば、相手にかかる。私達の力が必要になったら連絡してくれ。何でもしよう。」
「ちょっと、社長!」
天子は訳のわからぬ様子で善治をみた。善治はというと平然と座していた。
「使う事は無いと思うがな。さっさと帰してくれ。」
「天子。望を帰して上げなさい。」
天子は少々の間の後、頷き望に手のひらを向けた。
パンッ!
…。
望は名も知らぬ静かな道路にいた。
二、三回周りを見回した後、ため息をすると歩き出した。
Wish モネルナ @Moneruna_Artist
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