夕方の目

放課後。

烏の声が空に響き、夕焼けが声を燃やしている。

望は校舎裏にきていた。友嗣はまだ来ていない。望の心は時間経過によって平穏が失われつつあった。何せ朝からずっと予知を繰り返してきたのだ。しかし、予知をすればする度に友嗣の会話の内容が変わっていたのだ。こんな経験、望は初めてした。圧倒的な不安感を望が襲っているのだ。

(あいつめ。何故俺の能力に気づいた。そして俺をどうする気だ。)

石を踏みしめる音が聞こえる。

友嗣だ。友嗣が現れたのだ。

「きてくれて嬉しいよ。望君。」

「てめーが恐喝紛いで呼び出したんじゃねーか。」

友嗣の雰囲気は今朝と何も変わらずにある。しかし、目だけは目だけは確実に変わっていた。

少しの静寂が二人の間に流れる。

「さて、早速本題に入ろうぜ。お前のWishは何だ?」

「はぁ?Wishだぁ?知らねーよ、そんなの。何だそれは。」

「お前の能力の事だよ。お前、人にはない特別な能力持ってるだろう。どんな能力なんだよ。」

「はっ。俺の能力を完全に把握はしてないのか。言えるわけねーだろ。」

「どーしてもか。」

「どーしてもだ。」

友嗣は少し膨らんだ右ポケットから黒い物を取り出した。

銃だ!法治国家である日本で銃がある!

望は驚きもせず、怯えもせず、戸惑いもせずにいる。

「へぇー。こいつを見て驚かないんだ。」

「あんな脅してきた奴が手ぶらで来るとは思ってないんでな。」

友嗣は右腕をそのまま肩の高さまであげる。照準は望に向いている。

望は一本の葦のように、一本の大木のように立っていた。

静寂が二人の間に流れる。

「沈黙が回答ってことでいいんだな。言わねーんなら。死アルノミ。」

望は気だるけに少し頭を掻くと口を開いた。

「三つ質問をさせろ。」

「まぁ、いいよ。それぐらい聞いてやる。」

「その銃の弾速は。」

「あぁ、そんな事か。っても俺もよく知らないねーんだけどな。普通の拳銃くらいの時速300kmくらいかな。」

「お前の能力は。」

「俺の能力か。冥土の土産に教えてやる。俺は他人の心が読めるんだよ。ただし、Wish使いの心は読めない。だから気づいたんだよ。お前がWish使いだってな。」

「なるほど、最後の一つだ。お前、人を殺そうとしてるんだから、当然自分が殺される覚悟は出来てんだろうな。」

「あぁ?どういう事だそれ。」

望は友嗣に正面から向かっていった。

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