第13話 黒の王

この頃のブリッカー国は、そこまで強大な国ではなかった。


けれど、

絶対に戦ってはならない。

と言われた男がいた。


まだ大きな国ではなかったので、王自らが戦場の最前線で戦っていた。


スラリと長い身の丈程の剣を持ち、黒ずくめでマントをなびかせていた。


3撃目に注意しろ。

と言われるが、どう注意しても、誰もその3撃目は避ける事も防ぐ事も出来ない。


黒の軍団を率いる王。


3人は、その姿を、その戦場で見た。


3人掛かりでも、どんな武器を持ってきても、何年掛かっても倒せる自信がなかった。





3人が世話になっていた、酒場のマスターは、黒の王と戦っていた。


始めから、3撃目を注意していた。



1撃目。


高く飛び上がり、空中で消えた。

その瞬間、隣にいた仲間3人が頭から叩き斬られた。

その周りの地面が大きく陥没している。


だが、大きく一人で攻め込んできたので、

「囲めっっ!!」

の掛け声で一気に12人で囲んだ。



2撃目。


囲んだと同時に斬りかかったが、彼の右手に持っていた長い両刃の剣が、下から左に動く。


全くそちらの方向を向いていなかったが、こちらにいた最も強い味方はこの一撃でやられた。

力が入りようがないであろう方向へ剣が動き、突きが入った。


左肩に鍔を付けて、身体全体で突き刺す。

そのままの勢いで、囲まれた状況から抜け出すだけでなく、その先にいた、2人も突き刺し、そのまま進む。


5人突き刺して、動きが止まった。


剣は鎧を着た5人の人間に刺さったままで、剣に刺されずに突き飛ばされた者が7人いた。

彼らは足元にいた。


囲んでいた者たちは、すぐに追い掛けて、その状況を見て、全員が全員、

「倒せる。」

と確信した。


土埃が舞い、黒の王からも黒い蒸気がうっすらと上がっているように見えた。


これは動けない。

と、思い、近接武器や銃やボウガン等を装備した者達も攻撃しようとした。


引き金に指を掛けて、力を込めようとした時に気付く。


次が3撃目だと。



3撃目。


周りにいた者、

剣に刺さったままの者、

少し離れて銃を構えていた者、

足元で倒れて攻撃の機を探っていた者、

その全員が真っ二つになった。


どうやったのか分からないが、黒の王の剣から、血が払われていた。

一瞬で殆ど見えなかったが、身体の周りを何周も血が放射線状に飛んでいた。





その姿を遠くの陰から見ていた。


「行くな。」

と止められて。




ーーー




この戦いを見て、3人は強くなる事を決意した。


ただ普通に強くなるのでなく、

絶対に勝つ事を意識し始めた。


そして、次の町へ進む事にした。

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