第12話 敗戦

?「昔のテレビを知ってるか?


チャンネルを切り替えるのも、音量を上げ下げするのも、ネジのようにツマミを回すやつだ。


状況によってチャンネルを切り替えて、

その時の必要な分のエネルギーを費やせば良い。」


相手に合わせて切り替えること。

必要な分だけ力を出すこと。


ヴィント「・・・はい。。」


それを、あの異形の者達の偉そうな人に教えて貰った。


けれどまだ、この意味を理解してなかった。


この人達とも定期的に会うようになっていた。


この頃、段々、ミストやカイに比べて、能力が劣ってると感じ始めていた。




ーーー




まだこの頃は、ブリッカー帝国と呼ばれる前のこと。


ブリッカーという国が、勢力を増してきていた。


ある日、3人がいつも訪れていた町に向かっていると、遠くで煙が上がっているのが見えた。


その町が攻められていた。


彼らがそれに気付いた時、まだ戦いは続いていた。


少なからず愛着もあり、知り合いも沢山いた。

自然と助けようという気持ちで、町へ急いだ。


彼らが町に辿り着いた時、もう既に決着は付いていた。


それでも抗戦している町の人達に加勢したのだった。





ミスト「おい、まだ間に合うぞ!」


カイ「町の西側はまだ煙が上がっていない。南西の入り口から入って、西の人達と挟み討ちにすれば、まだ間に合う。」


ヴィント「・・・行こうっ!!」


この世界は、仮想世界。

人は簡単には死んだりしないし、死んでも多少のペナルティーを負って現実世界に戻るだけ。


それでもヴィントは、殺し合いというものは怖かった。

技術として、技は覚えても、その状況を目の当たりにした事があったからか、トラウマがあったから、すぐに助けに行こうと思えなかった。





ミストは疾かった。

カイは考えたように動けた。

ヴィントは相手を制す事に集中して、成果を出した。


けれど、所詮は10歳の少年達。


結局、町は守れず負けた。

町の中央から白旗が上げられ、戦いは終わった。


彼らの知り合いの多くは、この戦いで死に、この世界での記憶の多くをなくして現実に戻された。


ミスト、カイ、ヴィントは、目標とは違う目的の戦いに参加し、敗北感を味わった。

何も出来ないという無力感を味わった。


辛うじて、年老いた知り合いの一人に、町の外へ逃がしてもらい、町を出た。


命は助かった。

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