第6話 初戦

一節が見つけたのは、小柄な二人だった。


何か話しているようだったが、話の内容までは聞こえなかった。


恐る恐る近付き、木の陰から目を凝らした。


どんな動物でもない異様な姿だった。


顔をよく見ようとじっくり見ていた。





「!!」


目が合った。


一瞬で全身の毛穴が広がるような感じがして、その後すぐ、抱えていた木の枝の殆どを落とした。


その音で、もう一人もこちらを振り返った。


そしてすぐに小動物のように逃げる二人。


一節は、手に残った枝を二本持って、追いかけた。





彼らは足が速かった。


一節も遅くはなかったが、距離を縮められなかった。


1km位全力で走った所で、逃げてる二人の内の一人が転んだ。


もう一人もすぐに止まり、こちらを睨んだ。


そして近付き、一節と転んだ一人との間に立った。


逃げていた二人は同じような容姿だったが、転んだ方よりもこちらに向かってきた方が男性的な印象があった。


そして立ち向かってきた一人はおかしな事を言った。


?「何故、私達が見える?」


声が大人っぽくない。

と一節は感じた。


一節「??」


?「答えろ。」


一節「???」


?「っ!!」


そう言い終わると、殴り掛かってきた。


後で思うと、その長い頭で頭突きされた方が強いと思ったが、

その時は、左右に持っている枝を使って距離を取る事に意識を集中していた。


一節は武道の心得があったからか、相手が何を仕掛けてこようとしているか、何となく分かった。


すぐに相手の攻撃を半身で避けて、片方の枝で殴り掛かってきた腕を払い落とし、

もう片方の枝を顔に突きつけた。


枝は細いし、大した怪我をするようなものでないのは明らかだったが、

動きを見切られて、顔に突きつけられた枝と、その気迫に、戦意を喪失した。


向かってきた彼は、一節への攻撃を諦めた。

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