第3話 冒頭②
その日、一節は、家の倉庫で遊んでいた。
そこには彼の家に古くからある、様々なモノで溢れていた。
彼の曽祖父が使っていたデスク、彼の祖母が使っていた食器、彼の両親が集めた珍しいもの。
ガラクタも少なくないその倉庫は、一節にとっては宝の山であり、暇さえあれば倉庫にいた。
彼の一族は、新しいモノ好きであり、本当に珍しいモノが多かった。
その中に、その椅子はあった。
いつも他のガラクタに隠れていて、それ自体にも厚手の布が掛けられており、それまで気付かなかった。
椅子というには、あまりに大きくメカニックであった。
その椅子は、触るとプラスチックのような肌触りで、ただ中が空洞とかではなくて中身が詰まっているような、重厚な作りだった。
まだ幼い一節の身長に合わなかったが、その椅子は身長に関係なく使えた。
座るとそれは起動した。
無地の肘掛に文字が浮かび上がり、適当に幾つか押してみると目の前に映像が浮かび上がり、声が聞こえた。
それは挨拶と、幾つかの質問だった。
それが過ぎると、椅子は透明なシャッターで包まれた。
一節は眠りに落ちていく。
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