◆Middle11◆舞踏会への道

 いつしか夜が明けていた。

 噂の究極のダイアモンドプリンセス、ルティとエルーランの王子の婚約が発表される舞踏会が挙行される日の始まりである。

 心なしかログレスの町並みも浮き立って見える。

 だが、そんな雰囲気を引き裂くように一台の馬車が走っていく。

 その馬車に乗っているのは……。


GM:というわけで、舞踏会の会場へと向かい、大学者の息子のランディを追うシーンです。

ポメ郎:急げぇー! 馬よ馬車馬のように走るポメ!

鉄也:ギ、「のように」じゃなくて本物の馬車馬だろ!(笑)

GM:……と、みなさんが馬車を跳ばしていくと、対向車線を走っていた馬車が急に道を塞ぐようにして止まります。

ラヴィニア:キケン! キケン! 急ブレーキですわ!

ゼロ:自動車じゃないんですから(笑)。「ハァッ!」っと馬を制御してを馬車を止めます、どうどう!

ポメ郎:ぎゃあ! 慣性で前方にごろんと転がるポメ!

ラヴィニア:まったくもう! ……なんなんですの、いったい?

鉄也:ギ、俺たちの行く手を知っていて遮るということは……。

ラヴィニア:もしかしてランディですか?

GM:正解です。その馬車からはランディと……猿を連れたルティが降りてきます。

一同:えええ!

ゼロ:むこうから仕掛けてきたか!

ポメ郎:てっきりルティはクライマックスまで登場しないと思っていたポメ!

ラヴィニア:ふん! これで捜す手間がはぶけましたわ!


 強がりも堂に入ったラヴィニア嬢である。


ゼロ:GMに質問。ルティ様は宝石などのアイテムを身につけていますか? ピンクダイアモンドと対になりそうなものを。

GM:いえ、目立つものといえば肩の猿くらいですか。

ゼロ:……おや? てっきりそういうアイテムを持っていると思ったんだが。

ラヴィニア:では、わたくしは馬車から降りて仁王立ちになって言います。……やっと捕まえましたわ、さあ、ルティさんもう馬鹿なことはお止めなさい!

GM:「馬鹿なこと?」とルティは可愛らしく首をかしげます。「ワタクシのしていることのなにが馬鹿なのです?」

ラヴィニア:こんな公衆の面前で騒動を起こせば、あなたの策略はバレたも同然。王子との婚約発表なんてできるわけありませんわ!

GM:「騒動?」と唇に右手の人差し指をあてて考えたルティは、にっこり笑ったあとでラビニアに返答します。「ここで起こることは嫉妬で頭に血が上ったラヴィニア様の暴走になるのですわ。ワタクシはその被害者で正当防衛をしただけのこと」と。

鉄也:ギギ、説得力がある。

ポメ郎:日頃の行いの違いポメ。

ゼロ:こっちは「悪役」だからなぁ……。

ラヴィニア:……あなたたち、あとで憶えてろ、ですわ!(笑)


 追い詰めたつもりが、追い詰められていた?

 だが……ラヴィニアはあくまでも強気だった。


ラヴィニア:ところでお猿さん。折り入ってお話があるのですけど?

GM:えーと。猿に話しかけるんですか? ……じゃあ「ウキ?」とけげんそうな表情で首を傾げます。

一同:言葉、通じてるだろ、猿!(笑)

ラヴィニア:そこのぼんやりした女と、自分の才覚で孤島を宝島にしたわたくし……あなたと組むのに相応しいのはどちらかしら?

一同:なんだと!

GM:なるほど。そういう展開を狙いますか……。


 ラヴィニアが仕掛けたい方向は理解できました。

 あとは、それが面白いかどうかですが……。


GM:……ではラヴィニアの発言に対して、猿が「キキィ。面白いことを言うじゃないか」と返答します。

一同:ついにしゃべった!?

GM:そして、ルティが「グシオン!! あたしを裏切る気!?」と言うと、猿が「うるさい!

お前がボンクラなせいで、魔族たるオレ様がどれだけ苦労したことか!」と反論します。

ポメ郎:あー。ボンクラたち相手に猿も結構苦労していたポメね。

ゼロ:気持ちは分かる(笑)。……それはそれとして魔族だったんだな、猿。

鉄也:ギ、手が伸びたところであやしさ全開だったけど、やっぱりなぁ……。

GM:「話が違いませんか!? ラヴィニアさんを味方にするのはワタクシの手駒を増やすためではなかったのですか!?」というルティ。「ウキキ、そんな都合のいい話を信じていたなんてな! 魔族を信じる方が馬鹿なんだぜ?」とあざ笑う猿。

ポメ郎:ルティさん。かわいそうポメ……。

ラヴィニア:あなたグシオンさんとおっしゃるの? さあ、そんな女なんかとっと捨てて、わたくしの元にいらっしゃいな?

GM:すると、猿……に化けた魔族グシオンはルティの肩から離れてラヴィニアの方に向かいます。

ラヴィニア:では仁王立ちして勝ち誇りましょう。どう? 自分の実力が分かりまして、ルティさん。

GM:ルティは蒼白になって、「そんな……」と言いつつガクガクと震えています。返答する余裕もないようです。

ラヴィニア:まったく……これに懲りて、二度と悪事を為そうなどと考えないことね。……ところでGM?

GM:はい、なんでしょう?

ラヴィニア:猿はルティさんから離れてわたくしの方へ向かっていますのね?

GM:はい。トコトコと移動してラヴィニアさんの肩へ登ろうと……。

ラヴィニア:……では頃合いですわ。鉄也さん! ポメ郎さん! ゼロさん! やっておしまいなさい!!

一同:そうきたか!!

ポメ郎:やっぱり、グシオンを誘惑したのはルティから引き離すためだったポメね!(笑)

GM:すると、「お、オレ様を騙したのか!?」とグシオンが驚愕します。

ラヴィニア:おーっほっほっほ! ざまあみなさい!!


 驚愕する魔族に向かって、ラヴィニアは高らかに告げた。


ラヴィニア:悪役令嬢を信じる方が馬鹿なのですわ!

一同:おー!(パチパチと拍手)

鉄也:ギ、さすがだラヴィニアさん!

ポメ郎:そこに痺れる憧れるポメ!

ゼロ:魔族より邪悪……これぞ真の悪!

ラヴィニア:おーっほっほっほーっ! 褒めてもなにも出ませんわよ?

 お気づきかと思いますが、GMとしてはラヴィニアから仕掛けた展開の予想はついていました。もともとグシオンは正体を表わしたあと、ルティから離れて戦うという展開にするつもりではいたため、プレイヤーの誘いに乗っても困ることはなかったのです。

 あとはそれが面白いかどうかですが、悪役令嬢というキャラクター性を発揮する展開を認めた方がより面白いだろうと判断し、ラヴィニアの仕掛けにのったわけです。


GM:……えーグシオンは「悪役令嬢ってなんだあぁぁぁーーっ!!」と咆哮すると、猿はめきめきと大きくなっていき、体長5メートルほどに変身します。

一同:なんと!?

GM:巨大化したグシオンの額がパッカリと割れ、青いダイアモンドのような物質が光り輝きます。

ゼロ:おや、こっちがピンクダイアモンドの対になる物を持っていたか。

ラヴィニア:おーっほっほっほーっ! みなさん、やってしまいますわよ!

一同:おう!

GM:状況は十分あったまりましたね。それでは、戦闘に移りましょう。


イラスト↓(お手数ですが下記URLをコピーして、ブラウザに入力してください。イラストを閲覧できます)

http://www.fear.co.jp/kakuyomu_gazou01/32illust09.jpg

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