OPENING PHASE
◆Opening01◆王都からの手紙
南海の孤島。
かつては人も通わぬ島だったこの地に、たくさんの船がおしよせ、観光客が笑顔とともに上陸してくる。
この島で起きるイベントに期待し、その瞳はキラキラと輝いていた。
そして、彼らの視線は、この島を変貌させた張本人の居城、ラヴィニア城へと注がれているのであった。
GM:では、オープニングシーンを始めまーす!
一同:はーい。
GM:本格的にお話を始める前に、少し皆さんのミナミーノ島での日常を描いておきたいんです。
ラヴィニア:ほう。ルティから手紙が来る前の日常を演出するのか、ですわ。
GM:前回、島の問題が解決されたので、ラヴィニア様が島民に慕われたりするなど、評判が上がったシーンを改めて描きたいんですよ。
ゼロ:そういうことなら……最後にダイアモンドやパールが手に入ったし、さぞや島の暮らしも潤ったことでしょう。
鉄也:俺は、きっと花園に行く練習は欠かしてはいないだろうなぁ。
ポメ郎:島の神官長の僕の晴れ姿を見てほしいポメ!
GM:うひゃひゃ! その調子でぜひ日常を描いてほしいんですよ。
ラヴィニア:では、この島の大方針はわたくしが決めます。とりあえず手に入ったお金で、ミナミーノ島をエリンディル最大のリゾートアイランドにしますわ!
一同:リゾートアイランド!?
鉄也:最近になってダイアモンドやパールが出始めたとはいえ、こんな海苔しか特産品のないような島を!?
ラヴィニア:わかってないですわね。この島には、人を惹きつけるポテンシャルがあるのですわ。と、両足を踏ん張って宣言しよう。
ポメ郎:何を根拠にそんなに堂々としているポメ。
ラヴィニア:それは、持って生まれた支配者としての風格ゆえ。
鉄也:ギギ、おっさんサラリーマンだったくせに(笑)。
ラヴィニア:前世なんて気にしたら負けだと思ってる!(笑) わたくしはまず手始めに、前回の冒険で対決を見送ったブラックタイガーと改めて戦闘。ミナミーノアイランドの目玉アトラクションに協力するように説得しましたわ。
ゼロ:それは手強かったでしょうなぁ。
ラヴィニア:ちょっと魔法の火力を上げたら、あっさり「うん」と頷いてくれたわ。
ポメ郎:それは説得とはちがうポメ(笑)。
鉄也:ギギ、ブラックタイガーにはエビのコスプレでもさせる気?
ラヴィニア:違うわ……ていうかエビから離れなさい(笑)。彼には、お客さんが島を一周して楽しむ、モンスター退治ツアーのやられ役をやってもらうことにしたの。
GM:前回対戦を避けたぐらい強いエネミーを!?
ラヴィニア:ホブゴブリンやサハギンにもエキストラをやっていただきますが、ラスボスはブラックタイガーが務めないわけにはいかないでしょう。
ポメ郎:それは確かにスリリングポメ!
ラヴィニア:最後に岩に刺さった剣を勇者役のお客さんが抜いて、ブラックタイガーを軽く斬る。ブラックタイガーはやられたぁ~とばったりと倒れてイベントの締めね。
鉄也:ギギッ、なんか伝説の怪物退治の典型みたいな展開だな(笑)。
ラヴィニア:なに言ってんの、岩にささった剣は鉄也、あなたですわ!(笑)
鉄也:なにぃーっ!! 俺、アトラクションのメンバーなの!?
ポメ郎:でも確かに鉄也さんなら、ブラックタイガーに手加減して攻撃することが可能ポメ。
ゼロ:いつものことですから、持ち手に自分を思いどおりに操らせることはお手の物かと。
鉄也:ギギギ(笑)。では、俺の近況はそれで。ミナミーノアイランドのイベントのキャストを務めている。
ゼロ:ああ、花園にはいつ行けるのでしょうか?(笑)
鉄也:言うなぁっ!! 今でも俺は夜な夜な砂浜で、椰子の実を使ってキックや、椰子の木に向かってタックルの練習をしてるんだよ。
一応、現代地球への帰還はあきらめていない鉄也だった。
鉄也:ギギギギギーッ!!(←悲しんでいる)
ラヴィニア:で、ポメ郎はラヴィニア城の管理を任せますわ。
ポメ郎:おまかせくださいポメ! 神官というボクの特技を活かして「ラヴィニア城で結婚式をあげよう!」パックを旅行代理店に宣伝してもらっているポメ!
鉄也:ポメロの神官に結婚式をあげてもらいたがるカップルはいるかな?
ポメ郎:そこはそれ、僕はかわいいポメ。
鉄也:…………。
ラヴィニア:あざといわね。でも、そこがいいですわ(笑)。
ポメ郎:そう、島のシンボルのゆるキャラとしても活躍しているポメ。
鉄也:まるで、どこぞの猫の駅長みたいな活躍だな。
ポメ郎:お金が入れば、なんだっていいんだポメ。
鉄也:おい、神官!(笑)
ポメ郎:というわけで、ボクはこの島にやってくる観光客の皆さんに楽しい思い出をあげる、お客さんはこの島にお金を落とす。そんな感じで、ラヴィニア様に貢献しているでポメ。
ラヴィニア:ほめてつかわす。
ポメ郎:ははぁーっ!!
GM:では、ゼロはどんな感じで過ごしていたんですか?
ゼロ:私はもちろんラヴィニア様の執事として、陰に日にお仕えしておりました。
ラヴィニア:ちょっと待った。あんたには、大事な役目があるのよ。
ゼロ:というと。
ラヴィニア:実は、これまで説明してきたミナミーノ島のリゾート化事業はあくまでカモフラージュ。
一同:カモフラージュなのかよ!?(爆笑)
ラヴィニア:わたくしの真の目的は、この島を金融センターにして、やがては世界中のVIPの隠し財産を管理し、その一方で弱みを握り、この世界牛耳る予定なのですわ。
鉄也:ギギ……完全に悪者の動きだ(笑)。
ラヴィニア:わたくし悪役令嬢ですから(笑)。そのためには、未来の世界の先進の経済感覚を持つ、ゼロの存在が不可欠。
ゼロ:なるほど。
ラヴィニア:さらに、イビルゴッド重工業と連携して成長していけば、この世界のVIPと連絡をつけることも有利になるはず。
ゼロ:つまり、ラヴィニア様の覇道の懐刀になれということですね。
ラヴィニア:そのとおり。
ゼロ:わかりました。謹んでそのお役目引き受けさせていただきましょう。
GM:な、なんかミナミーノ島がすごいことになってきましたが……面白そうなのでその方向でいきましょう(笑)。
ラヴィニア:OKなんだ……言ってみるものね(笑)。ともあれ、この島の征服は世界征服の第一歩。みんながんばってくださいな。
鉄也&ポメ郎&ゼロ:おーう!
GM:では、そんな野望にギラついた南の島の日常を過ごす皆さん……でしたが、そんな日々に大きな変化を与える一通の手紙を携えた男がやってきます。ここからは、皆さんが全員登場するシーンとして進めていきます。
ゼロ:わかりました。
ラヴィニア:では、わたくしはラヴィニア城のもっとも高い塔で、下々の様子を見下ろしながら、そのメッセンジャーを迎えましょう。
鉄也:ギギギッ、いちいち芝居がかってるなぁ。
ゼロ:ラヴィニア様は由緒正しい悪役令嬢ですから(笑)。
GM:由緒正しいってなんですか?(笑) まあ、その手紙を持ってきたのは王都新聞の記者、キシャーという者でして……。
ラヴィニア:名前、適当すぎるだろ!?(一同爆笑)
ポメ郎:怪生物の鳴き声みたいポメ!(笑)
ゼロ:……まあ、名は体を表わすというし(笑)。
GM:「手紙をどうぞキシャー」と、キシャー記者はうやうやしく手紙をラヴィニアに渡します。
鉄也:めげないな。ていうかなんだその語尾(笑)。
ラヴィニア:ま、まあいいでしょう。その手紙の中身は?
GM:手紙の中身は、究極のダイアモンドプリンセス・ルティが王子との婚約記念舞踏会を挙行するので、ぜひ参加してほしいという内容です。
ラヴィニア:むむむ。あの女、わたくしがいないのをいいことに、“究極のプリンセス”なんて名乗って……見てらっしゃい!!
GM:そこです!
ラヴィニア:どこよ?
GM:「かつては、エルーラン宮廷で競った二輪の花、ラヴィニア様とルティ様。あちらが究極なら、ラヴィニア様は至高。いずれが素晴らしいプリンセスなのか、そこを見極める記事を書きたいと思った私は、思わずこのメッセンジャー役を買って出たわけでキシャ」
ラヴィニア:あんた……ゲスですわね。
GM:「キッシャッシャ。ラヴィニアさんほどじゃあございやせん」
ラヴィニア:そう褒めるな。
一同:褒めてないから!(爆笑)
鉄也:ギギッ、しかし、対決するにしてもなにを基準に?
ラヴィニア:なんであれ、あの女との勝負なら受けて立つわ。わたくしが勝利したあかつきには、あの女にはダイアモンドプリンセスではなくキュービックジルコニアプリンセスと名乗らせることにしましょう。
キュービックジルコニアとは、ダイアモンドのイミテーションなどに使われる鉱物です。
鉄也:ギ、ところでもし招待に応じなかった場合は?
GM:その時はそれを口実にこのこの島の領地を召し上げるという……。
一同:脅迫じゃねーか!?
GM:そういう噂もある、という話です……キシャ。
ラヴィニア:よろしくてよ! 返り討ちにして差し上げますわ!!
ゼロ:(思案顔になって)その対決……誰が審査するかも問題でしょうなぁ。
ラヴィニア:では、公正を期して各界の名士を招待しましょう。
ゼロ:どのような方々を?
ラヴィニア:アルディオン大陸のアンソン卿とか、悪徳神官のマティアス様とか、ケセドの杖で荒稼ぎしている古代竜のケセドとか……。
ポメ郎:……選択に意図がありそうな人選ポメ。
ラヴィニア:ほら、この島の金融センター化計画があるじゃない? その出資者になってくれそうな人とのコネ繋ぎも兼ねてるの。
鉄也:ギギッ! 商魂たくましいなぁ、おいっ!?(笑)
ポメ郎:一部、すごく買収しやすそうな人も混ざってるし(笑)。
ゼロ:しかし、このそうそうたる顔ぶれに声をかけるのも大変そうですな。特に、アルディオン大陸のアンソン卿などに連絡をつけるのはちょっと難しいですな。
GM:「では、そこはエルーラン王国きっての大新聞社、私の王都新聞社が責任をもってご希望のゲストを招待させてもらうでキシャー」
ラヴィニア:まあ、素敵ね!
GM:「そのかわり、ラヴィニア様への取材は我が社の独占ということで。キシャシャシャ」
鉄也:なんか、無駄に三下っぽい新聞記者だなぁ(笑)。
ラヴィニア:そうと決まれば、さっそく出発の準備をしましょう! 海賊から奪った船もあるから、それを綺麗にオーバーホールしたら出航ですわ。
ゼロ:ありましたな、海賊船(笑)。
かくしてエルーラン王国の新聞社の企画に乗り、ラヴィニアは王都への帰還を選択した。
盛況を見せるミナミーノアイランドのことは一旦村人に託し、ラヴィニア一行を乗せた船は一路エルーラン王国へ向かう航路を北上するのであった。
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