◆Middle02◆悪役令嬢の質素なディナータイム
ラヴィニアたちが城に戻るころには、太陽は海の向こうへと沈んでいた。
これほど自然に富んだ地なのだ。きっと、晩餐も地物をふんだんに使った美味しい料理に違いない。
そんな風に心を躍らせていたラヴィニアたちを待ち受けていたのは……。
GM:では、次のシーン。夕飯をいただきながら、村長に島の現状について訊ねるシーンとなります。シーンプレイヤーはゼロとしましょう。
ゼロ:分かりました。
ラヴィニア:まずは、晩餐ですわね。
GM:そのとおり。皆さんは、城の食堂に集合しました。そして待つことしばし……。村長から出された食事は、白ご飯と麩の味噌汁、それから、海苔だけです。
ラヴィニア:……え?
ほかほかと湯気をたてる炊きたてご飯とお味噌汁。
そして海苔。
城の大食堂の大きなテーブルに、それらがちょこんと乗っている。
それだけ。
晩餐というには、あまりにもの悲しい風景なわけで……。
ラヴィニア:待ていっ!? 質素にもほどがあるでしょ!?
ポメ郎:麩の味噌汁! 前世を思い出すポメ!
鉄也:ギ……俺も久々にご飯を食べてみたい気分だ。
ラヴィニア:あなたたち、なじんでる場合じゃないですわよ!?(笑) とにかく……村長、
いったいこれはどういうことですの? と詰問します。
GM:「失礼しました、お飲み物として、絞りたての牛乳がございます」と村長。「いやはや、先ほどの船で、米を運んできてくださらなければ、汁物だけになるところでした」
ラヴィニア:漁師が獲ってくれるはずの貝や魚は?
GM:「訳あって、村人たちが漁に出るのを拒否しておりまして。この老いぼれにはどうしようも……」
ラヴィニア:じゃ、じゃあ、肉は? 森がありましたよね? 獣はいないのですか?
GM:「肉……懐かしい響きでございますね。あっ、涙が」
ラヴィニア:山にイノシシくらいいるんじゃありませんの?
GM:「我々はか弱い村人、いわゆるエキストラです」
エキストラとはNPCの種類を表現する言葉で、いわゆる一般人を指す。彼らは、エネミーや障害を排除する力はなく、PCたちに危害を加える能力も持っていない。
ラヴィニア:戦闘能力がないから、イノシシを捕獲できないってこと?
GM:「イノシシの捕獲はできるのですが、そこにたどり着くまでに問題が」
ラヴィニア:この村人たち、どうやって食事をまかなっているのですか!?
GM:「では、なけなしの食材で用意した夕食を食べつつ、事情を説明いたしましょう」
村長は語った。
最初の半年くらいまでは、開拓をしながら、それなりの生活を営めていた。
しかし、ゴブリンとギルマンが近くに住み着き、その話が広まると猟師も漁師も怯え、村から海や山にでかけても、すぐ帰って来るようになってしまった。
そうして、食糧の確保にすら苦しむようになっていったのだ……と。
ラヴィニア:でも、あくまで噂話なんでしょう?
GM:「いえ。実際、狩りや漁を妨害された者たちもいるのです」
鉄也:ギ……実害が出てるのか。
GM:「そんな折に、新しき領主様、ラヴィニア様が来てくださった。これは、七大神のお導きに違いありません!」
ラヴィニア:状況は分かりましたわ。それならば、三日もあれば十分。
ポメ郎:ラヴィニア様、やる気まんまんポメね。
GM:「素晴らしい! ゴブリンとギルマンを、たったの三日で退治なさると!」
ラヴィニア:ゴブリン退治に一日、ギルマン退治に一日かけましょう。それでも一日あまる計算になりますわね。
ゼロ:根拠はわかりませんが、すごい自信ですね(笑)。
ラヴィニア:さあ、村長。肉と魚、どちらを先に食べたいか言いなさい?
GM:「肉……ですかな。これでも私、大陸ではステーキ職人として名を馳せましてな……お上がりよ! とラヴィニア様にステーキを振る舞いたいと思いまして」
ラヴィニア:この村長、本当にキャラが安定しませんわね。とにかく、明日はゴブリンを退治して、肉を獲れるようにしましょう。
ポメ郎:腕がなるポメ!
ゼロ:ポメ郎には腕がないだろ?(笑)
ラヴィニア:さて村長……ついでに、現状をもう少し詳しく教えてもらえますか?
GM:「そうですな。もっとも重要なことを話しておりませんでした」
ゼロ:というと?
GM:「水もまともにございません」
ラヴィニア:水もないのですか!?
GM:「水源にゴブリンとギルマンが出没するため、水もろくに汲みに行けず、作物を育てるのにもひと苦労で」
ラヴィニア:ゴブリンとギルマンごとき、二日もあればどうにでもなりますわ。……一応聞いておきますが、何レベルのゴブリンとギルマン?
GM:「我々は素人ですので、詳しいことは、とんと分かりません」
ゼロ:エキストラだから、エネミー識別なんてできないのではないでしょうか。
ラヴィニア:なるほど……。
鉄也:確か神殿の出張所もないんだよね?
GM:そうですね。
ラヴィニア:ここで信頼を勝ち取ることができれば、村人たちは集まってきてくれるに違いないですわ。ちなみにこの島には、何人くらい住んでるのでしょうか?
GM:百人には満たない感じですかね。
ラヴィニア:なるほど。とりあえず、三日で問題を解決して、人心を掌握するところから始めましょう。このままでは、開墾なんてできたものじゃあありませんから。
GM:では、そんな感じでゴブリンやギルマンの危険を取り除く方向性が決まったということで。この宴も盛り上がり、お開きとなります。
鉄也:ギ? いつ盛り上がった?(笑)
ラヴィニア:本当ですわ。ご飯と味噌汁と海苔の晩餐会なんて(笑)。
ポメ郎:まあまあラヴィニア様、今は非常時だから、しかたないポメ。とりあえずボクは食事が終わった後、《ピューリファイ》で聖水をつくっておくポメ。
ラヴィニア:プリプレイで話題が出たポメ郎の絞り汁ね。
鉄也:ギ……イヤな表現だな(笑)。
ポメ郎:と、とにかく(笑)。鉄也さんとゼロさんに、《ピューリファイ》作った聖水を渡しておくポメ。
ゼロ:ポメ郎さま、ありがとうございます。
鉄也:魔法ダメージにしたうえ、ダメージに+1Dされるんだから助かるな。ありがとう。
GM:では、そんな感じでシーンを終了しましょう。
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