MIDDLE PHASE

◆Middle01◆歓迎、新領主ご一行

 エルーラン本土を出立したラヴィニアたちが、船に揺られること数日。

 陽光に照らされながら海路をつつがなく進んだすえ、緑に覆われた島を目にする。

 この島が、彼女の新領土ミナミーノ島であった。


GM:では、ミドルフェイズに入ります。最初のシーンは、ミナミーノ島に到着して、その現状を知るシーンになります。シーンプレイヤーは、ラヴィニアです。

ラヴィニア:わかりましたわ。

GM:エルーランから船で数日、ミナミーノ島に到着します。この島はまだまだ入植が始まったばかりで、探索も進んでいない地域があるようです。

ポメ郎:ドの付く僻地ポメね。

ラヴィニア:わたくしが来たからには、破竹の勢いで発展を遂げること疑いなしですわ♪

鉄也:ギギ……どこからそんな自信が(笑)。

GM:というわけで、小さな桟橋に皆さんが乗ってきた船が接岸し、これから上陸しようかというところですね。

ラヴィニア:じゃあ、すっと上品に桟橋へと降りていきましょう。迎えの者ぐらい来ていないのかしら?

GM:はい、おります(笑)。「歓迎、新領主ご一行」と書かれたボードをもった農民風のじいさんと、軽薄そうな狩人風の若者がいますね。どちらもにこにこと笑みを浮かべています。


イラスト↓(お手数ですが下記URLをコピーして、ブラウザに入力してください。イラストを閲覧できます)

http://www.fear.co.jp/kakuyomu_gazou01/12illust02.jpg


鉄也:ギ? ツアーコンダクターでもいるのか?

GM:そんなたいそうなものじゃありません。「村人が畑仕事の合間にやってきた」みたいな感じです。

ゼロ:ますますド田舎ですな。

ラヴィニア:はぁ……。今わたくしは島流し気分を満喫しておりますわ(笑)。

ポメ郎:まあまあ、せっかくふたりが迎えに来てくれたポメ。

ラヴィニア:それもそうね。気をとりなおして、お迎えご苦労様……とふたりをねぎらいましょう。

GM:「新領主さま、ミナミーノ村にお越しいただきありがとうございます。村長のソーンと申します。こちらは狩人のジョン」と、じいさんとへらへらとした若者がお辞儀します。

鉄也:ギ……どちらもとってつけたような名前だ(笑)。

GM:そんな感想には気づかぬ風に村長は続けます。「確か領主さまはリベンジ家のご令嬢、ラ……ラフレシア様、でしたかな……」(笑)

ラヴィニア:ちげーよ! ラフレシアは臭くて嫌です。ラヴィニアですわ。

GM:「そうそう、ラヴィニア様。わたしはこれでも人の名前を憶えるのが得意でしてな。……ところで、ピラニア様」

ラヴィニア:獰猛すぎるだろっ!?(一同爆笑) 引きつった笑顔で「ラ・ヴィ・ニ・ア!」と正しますわ。

GM:「ラヴィニア様」

ラヴィニア:よろしい。で、わたくしの居城はどちらかしら?

ポメ郎:ちょ、こんなさびれた村に城とか……。

GM:「今、ちょうど村の者が城に横断幕を掲げ、ラヴィニア様を迎え入れる準備を進めてたとこなんですよ」と、ジョンが朗らかに答えます。

ポメ郎:あったポメ!?(笑)

ゼロ:こんな孤島に……少々意外ですな。

GM:「この村は、元々入植地で一時ある程度までは開発されたのですが、その後一旦さびれまして。一年ほど前から入植が再開されたのですよ」と、村長。

ラヴィニア:は、はあ……。

GM:「儂は村長などやっておりますが、これがもう苦労の連続でしてな! リベンジ家のお嬢様に来ていただけたのは、とてもありがたいことです!」

ラヴィニア:帰ります(即答)。

GM:「あはは。次の船が来るのは、一ヶ月後だそうですよ」とジョンが軽く答えます。

ラヴィニア:マジで!?

ポメ郎:要するに、ここでがんばるしかないポメね。

GM:「そういうことでして……って、ポメロがしゃべったぁっ!?」と、村長がいまさら腰をぬかさんばかりに驚きます。

ゼロ:ホントいまさらですが、ポメロは本来エネミーですし、しゃべりませんから村長が驚くのも無理はありませんな。

ラヴィニア:ゼロさんはやけに冷静ですわね(笑)。村長にはしれっと、これは特製のポメロです、と答えておきますわ。

GM:「特製!? あなた様がお作りになられたのですか?」

ラヴィニア:わたくしの力があれば、剣であろうとポメロであろうと、喋らせることくらい簡単ですわ。

鉄也:……剣とは、俺のことか(笑)。

GM:「さすがは、ラヴィニア様! この島にまで名声が轟くだけのことはある!」

ラヴィニア:そうでした……わたくしはどんな時もくじけぬ悪役令嬢。……この世界に覇を唱える第一歩はミナミーノ島から! そう思って、がんばりますわ!

GM:「いやあ、実に含蓄の深い御言葉ですな!  ……ところで悪役令嬢ってなんです?」

ラヴィニア:ちょっと相づちが適当すぎない!? もしかしてわたくしって領主として尊敬されていない?(笑)

GM:「そんなことはございませんぞ。帰ってもらっては困りますからな」

ラヴィニア:全然尊敬してないだろ?(笑) まあいいですわ。城があるなら、そこに行って、高いところから島全体を見おろしましょう。

鉄也:ギ……何をするつもりなんだ?

ラヴィニア:決まっています。「ここがわたくしの島ですわ!」と高らかに叫ぶのです。

鉄也:ギ、まるで駄目な権力者みたいだ(笑)。

GM:では村長は「分かりました。ご案内いたしましょう」と皆さんの先頭に立ってほいほいと歩き始めます。


 村長に案内されて城へ向かう一同。途中、浜辺で海苔を干す漁民、弓の手入れをする猟師、そして、畑には地を耕す農夫、そんな日々の暮らしを営む人々の姿があった。

ゼロ:なるほど、村人たちは地に足をつけて働く真面目な人々なんですね。……入植再開から一年だし、開墾をする人たちもいるかもしれません。

ラヴィニア:セーラじゃなくてルーシーの気分ですわ。


 そもそも、ヒロインポジションではないラヴィニアはどちらでもありません。


GM:「儂らの村は一時間くらいで回れる感じです」と村長は世間話をしてきます。

ラヴィニア:狭っ!?(笑)

GM:「いやあ、入ってきたはいいものの、なかなか開拓に苦戦しておりまして」と村長は苦笑します。

ラヴィニア:苦戦、ねぇ……ちなみに、この村の外はどうなっているの?

GM:「さあ?」

ラヴィニア:「さあ」じゃありませんわ! ちゃんと説明なさい!(笑)

GM:「実は、とある問題がありまして、開拓や調査が十分に進んでいないのです……。だからこそ、領主様に来ていただけて幸いだと」

ラヴィニア:あら、困ったことがあるの? 何でもお言いなさい。三日で解決してさしあげますわ。

GM:「ほほう、三日! 三日と言いましたな? 言ってないとは言わせませんぞぉ!」

鉄也:ギ……村長のキャラが安定してないなぁ(笑)。

ポメ郎:なんか悪徳商人みたいな言い回しポメ。

GM:こ、これは失礼。村長は素朴で善良かつ真面目ないい人ですから! そういうことでお願いします(笑)。

ラヴィニア:ま……村長が素朴で善良かつ真面目ないい人でよしとしましょう。

鉄也:いいんだ(笑)。

ラヴィニア:その問題とやら、必ずわたくしが解決してさしあげますから、大船にのったつもりで安心なさい。

ポメ郎:さすがはラヴィニア様! 前言は撤回しないというお心がけ、素晴らしいポメ!

鉄也:ザ・安請け合い(笑)。

GM:「ありがとうごぜぇやす。その“問題”については、今晩改めて説明させていただきます。今は旅の疲れをとることに専念していただければ……」

ラヴィニア:確かに、船旅で疲れましたわ。少々羽を伸ばしたって罰はあたりませんね。

GM:と、そうこうしていると、城に到着します。村の奥の小高い丘にそびえる城ですね。

ジョンの話の通り、ラヴィニア歓迎の横断幕もかかっています。

ラヴィニア:あら、準備ご苦労様。

GM:「お嬢様にふさわしい城にいたしました。……おんぼろな城でございましたが、なんとか半日の突貫工事でここまで仕上げました」

ラヴィニア:半日かい!?(笑)


 一時期、人の手を離れていたというだけのことはあり、城は相応に荒れていたらしい。

 天井はところどころに穴が空き、壁は一部崩れていた。

 村人が応急処置として板でそれらを塞いでくれていたが、早急に根本的なリフォームが必要なのは明らかだった。


GM:なお、城の修繕については、このシナリオでは取り扱いません。ただの演出なので、気にしないでください。

ゼロ:城の改築を扱うシナリオというのも、それはそれで面白そうですな。

ポメ郎:なんということでしょう! ボロ城がおとぎの国のお城のように!(笑)

GM:だから、やりませんから(笑)。

ラヴィニア:ま、贅沢は言ってられませんわね。では、わたくしは一番高いところに上って、眼下に広がる素晴らしき風景を……。

GM:北には山があり、その裾野には森が広がっています。さらにその向こうには、海が見えますね。延々と海ばかりで、隣の島は影すら見えません。

ラヴィニア:う~み~っ! 山と森と海しか見えない! わたくしたちがいた大陸はどこですのぉ~っ!?

ポメ郎:ラヴィニア様がお嘆きポメ(笑)。

GM:視界内に大陸はありませんね。見えるのは、緑の山、青い空と海、そして、白い砂浜。

ラヴィニア:あら、白い砂浜は素敵ですわね。

ゼロ:村長の話では、本日は英気をやしなう時間もあるとか。ラヴィニア様、白い砂浜にパラソルを立てて、くつろがれてはいかがでしょう?

ラヴィニア:あら、優雅でいいですわね。村長、そうさせてもらおうかしら?

GM:「ええ、どうぞごゆっくり。ドリンクも用意させましょう」

ゼロ:私はパラソルや椅子などを調達して参ります。

ポメ郎:海! じゃあ、ボクは浮き輪を買うポメ!

ラヴィニア:あなた、ビーチボールみたいな身体で、何を言っているの? ぶっちゃけ浮くでしょ(笑)。

ポメ郎:そんな!?

ゼロ:では、ビーチのご用意をいたしましょう。と、持ってきたパラソルをバッと開く。

ラヴィニア:では、そのパラソルの下でゆっくりしましょうか。

GM:浜辺には瞬時に海の家が建ちます。軒先で軽食を売っていて、庭先には海苔が干してあるような。……店主は村長やジョンですけどね。

鉄也:無駄に行動力があるな(笑)。

ラヴィニア:海の家! 焼きそば、かき氷……素晴らしいですわね! あとはトロピカルドリンクでもあれば……。

ゼロ:ラヴィニア様、こちらに、とドリンクを差し出します。

GM:そのトロピカルなドリンクなんですが、カラフルで一見それっぽいのですが、海苔やわかめなど海の幸が入った一風変わった感じのものでして……。

ラヴィニア:マジ!? っていうか飲めるの?

GM:色々工夫して生臭さとかを排除した、それなりに飲めるものになっている、という村長の説明があります。

ラヴィニア:そ、そう? じゃあ、新領主の度量を示すためにいただくわ。

ゼロ:さすがはラヴィニア様。

ポメ郎:ボクは泳ぎにいくポメ!

鉄也:ギ……俺も転生前を思い出して泳ぎたくなるが、今の鉄の身体では無理な話だ。

ゼロ:では、鉄也様は、砂に埋まって夏のリゾート気分を満喫されては?

鉄也:おっ、いいねぇ。

ゼロ:私が埋めて差し上げましょう、


 ほどなくして、鉄也は鎧を兜の部分を残して砂に埋められた。


鉄也:ギ? ていうか本体は剣なんだから、鎧を埋めても気分的に砂風呂を体感できないぞ。

ゼロ:おおっ、これは失礼しました(笑)。

ラヴィニア:なんというか、のどかな光景ですわね。

GM:「ええ。これがミナミーノ島でございます」と村長は笑います。

ラヴィニア:何か、特産品とかないんですか?

GM:「海苔がございます」

ラヴィニア:海苔をパリパリ食べますわ。この海苔を、この島の名産品にしましょうか。

GM:しかしそれを輸出してしまうと、村人が飢えてしまいます。

ラヴィニア:どんだけ貧乏なのよ!?(一同爆笑) じゃあ、この島には、他に何かあるのですか? ここを領地としてもらっても、全然嬉しくないですわ!

ポメ郎:やはり島流し……。

GM:「あとは、小さな果実くらいしか……」

ラヴィニア:観光資源とかはないのかしら?

GM:「ほっほっほ。開拓中の島ですぞ。まずは、生きるための環境づくりが必要なのでございます。そこをなんとかするためのあなた様ですぞ?」

ラヴィニア:ぐぐ。ですが、船で何日もかかるとなると、転送装置が必要になってくると思いますわよ? この島に神殿はないの?

GM:「ございません。そもそもここに人が住むようになったのは一年前。我々は入植者で、今までさまざまな危険と戦って……おっと、これは、お話は今晩の予定でしたな」

ラヴィニア:危険なんて聞いてませんわよ!? ここで遊んでいても平気なの?

GM:「今日一日は大丈夫だと、シナリオに書いてございます」

鉄也:ミモフタもない回答だ(笑)。

GM:「詳しい話はまた明日。今宵は最後の晩餐を……」

ラヴィニア:最後の晩餐!?(爆笑)

GM:「最後になるかもしれない晩餐をお楽しみください」

ポメ郎:言い方を変えればいいってもんじゃないポメ。

ラヴィニア:…………せめて料理は豪華に頼みますわ。記念すべき赴任第一日として。

GM:「お任せください。これから村人たちが、海に潜って貝などを獲ってきますので」

ゼロ:海の幸山の幸が揃いそうですね。

GM:「山の幸も海の幸も、その収穫は命がけなのですが……それについては、また明日」

ラヴィニア:何度も危険をアピールするということは、何かの伏線があるのですね。いいでしょう。今だけは、悪い話は忘れて、前向きに生きることにしますわ。

GM:「気分を害されたお詫びとして晩餐の料理に、心はこめさせていただきます」

ラヴィニア:“心は”ってどういうこと!? 心だけこめればいいってものでもないですわよ?いいでしょう。その心がどのような形を取るのか、じっくり見極めさせていただきます。

GM:「では、あついチューで表現いたしましょうぞ! 今、この場で」

ラヴィニア:いらねーから!!(一同爆笑) それにお前、どこが素朴な村長だ!?(笑) つっこみどころが多すぎて頭痛がしてきました。そろそろお城で休みま……あれ、ポメ郎は?

GM:「ポメロならば、沖でサメに襲われております」

ポメ郎:ポメェェェェェェーッ!?(一同爆笑)。

鉄也:ギギッ……とんだリゾートだぜ。


 沖でサメの襲撃を受けて逃げ惑うポメ郎を、ゼロが見事な泳ぎで救出に成功した。

 ほっと胸をなで下ろす一同。リフレッシュのために訪れたはずのビーチで、逆に重い疲労感を背負い込んだようにラヴィニアには思える。

 しかし、彼女が直面する困難は、これからが本番であった……。

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