◆Opening04◆仕事のできる男

 ラヴィニアは豪華な応接室で、心落ち着くお茶の香気を楽しんでいた。

 彼女は親族の中でも特に懇意にしてくれる“大おば様”に招かれていた。

 “大おば様”は、肉付きのよい身体をソファに沈め、彼女に「紹介したい人物がいる」と言うのだが……。


GM:では、次はサイバー・ゼロが仲間になるシーンにしましょう。

ゼロ:分かった。他のふたりが、ラヴィニアが独自に動いて仲間にしたところだし、私は少し趣を変えたいな。

ラヴィニア:どんな感じにしたいわけ?

ゼロ:ラヴィニアの大おば様に依頼を受けたことにしよう。新領土に赴任して苦労することになるであろうラヴィニアを支えるように、と。

ラヴィニア:……で、大おば様って誰?

ゼロ:今適当にでっちあげたキャラ(笑)。ラヴィニアに目をかけていて、何かと世話をしてくれる人ってことで。

ラヴィニア:きっと、統一帝になろうという野心に見所があると思われたんだろう。

GM:ではそれで(笑)。大おば様は、若き日に野心に燃えていた頃があり、そんな自分とあなたを重ね合わせているということにしましょう。

ゼロ:ちなみに、私はこの世界でイビルゴッド重工業エリン支社を立ち上げ、なんとか軌道に乗せたところ。その際、この大おば様に大変お世話になったので、その頼みを断ることができないのだった。

GM:なるほど(笑)。ではそういうことで。じゃあ、ラヴィニアさんは“大おば様”の屋敷に招かれ、お茶をしつつ話を聞くというシチュエーションで始めましょう。

ラヴィニア:では、出されたお茶を優雅にいただきつつ、大おば様に聞きましょう。「本日はどのようなご用件で?」

GM:「新領土に向かうあなたに、頼れる人材を紹介したいと思いまして」

ラヴィニア:軽く頷こう。

GM:では彼女は後ろに控えていたゼロを一瞥して言います。「こちら、イビルゴッド重工業のサイバー・ゼロさん。あなたのお世話係に推薦させていただくわ」

ゼロ:スッと名刺を差し出して挨拶する。サイバー・ゼロと申します。

ラヴィニア:これはどうも……。とかつての会社員時代を思い出して、丁寧に名刺を受け取ろうとするんだけど……。

鉄也:おっさんだった頃を思い出しちゃうんだ!(笑)

ラヴィニア:慌てて取り繕って、ふーんと気のないそぶりを見せる。で、なんかサイボーグであるところを除いて、ごく普通のサラリーマンみたいだけど……。

鉄也:サイボーグな時点で、すでに普通のサラリーマンじゃねぇっ!(笑)

ラヴィニア:細かいことはいいのよ!(笑) サラリーマンであるあなたに何ができるっていうの?

ゼロ:実は私……《ワイドアタック》を持っておりまして、範囲攻撃には自信があります。

ラヴィニア:……まあ!?


 《ワイドアタック》とは、広範囲の敵を攻撃することのできるスキルです。複数の敵に襲いかかられた時に重宝すること間違いなしのお勧めスキルだったりします。


ラヴィニア:これは拾いものかも……と思いつつ。あ、あらそれだけかしら? と、さらに突っ込んだゼロの実力を聞きだそうとする。

ゼロ:では、こっそり耳打ちしよう。「もちろん、《インタラプト》もございます」


 《インタラプト》とは、敵が使用しようとしたスキルを打ち消すことができるシーフの切り札的なスキルです。はっきりいってギルドの生死を分かちかねない重要なスキルでしょう。

ラヴィニア:採用!!

一同:早っ!?(爆笑)

ゼロ:なお、わたくし資本主義が高度に発達した時代から来ておりまして、ラヴィニア様が目指す、覇道の手伝いもできるかと。

ラヴィニア:わたくしの野望をあらかじめ調べておいたようね。いいでしょう。あなたには、わたくしと同じ会社に魂を引かれた者の臭いを感じます。

鉄也:どんだけ会社にしがらみがあるんだよ!?(笑)

ゼロ:身に余る光栄。

ポメ郎:光栄なんだ!?(笑)

ゼロ:仕事ですから。

ラヴィニア:以後、あなたはわたくしの執事兼、相談役兼、下僕になることを許します。

ゼロ:では、さっそくミナミーノ島への渡航準備を進めさせていただきます。と、一礼して、さっそく仕事にとりかかろう。

GM:では、皆さんがラヴィニア様の元に集い、ミナミーノ島へ向かう船に乗り込んだところでシーンを終了しましょう。

ラヴィニア:では、港から遠ざかる船のへりに立ち、「見てなさい、わたくしは必ずこの王都ログレスに帰ってきますわ。その時はわたくしが、この国の支配者になっていることでし

ょう―――と呟こう。

ポメ郎:ラヴィニア様、頑張るでポメ!

鉄也:ギギ、頑張らない方が世のため人のためのような気が……。


 かくして、野望と希望と不安を抱え、一行はログレスの地を離れた。

 波濤を乗り越え、向かうは南海の孤島ミナミーノ島。

 はたしてそこに待つものは?


GM:と、ここで全員がラヴィニアの元に集結したところで、ギルドを組みたいと思います。

一同:はーい。

GM:そのうえで、今回は普通の冒険とは違い辺境の地での冒険ですから、通常の冒険者ギルドと完全に同じサービスを受けられるわけではないと考えてください。

鉄也:というと?

GM:離島ということもあり、ちゃんとした神殿がなく、冒険の依頼の受諾や転送装置などのサービスを使用できないのです。

ゼロ:今回は冒険者ギルドから依頼を受けるわけでなし、その処理は妥当なものかと。

ラヴィニア:転送装置が使えたら、島流しの意味はないですわね。

GM:その代わり、ギルドサポートなどは通常どおり使えます。しかし、結成したてということでギルド1レベル。取得できるギルドスキルはふたつです。

ポメ郎:わかったポメ。まあ、ギルドマスターはラヴィニア様でいいとして、ギルドサポートの選択をどうしましょう?

ラヴィニア:せっかくだから、めったにないものをとりたいですわ……(ルールブックをめくり)《ギルドハウス》《GH:ギルドキャッスル》でどうかしら?


 《ギルドハウス》とは、ギルドの本拠地を有していることを表わすギルドサポートです。これがあると、いつでもギルドメンバーの持つ装備・アイテムをすべて売却できるのです。

 《GM:ギルドキャッスル》を取るとその本拠が“城”となります。そして、ギルドメンバ

ーは選択したひとつのスキルのSLを+1することができるのです。


ポメ郎:ラヴィニア城爆誕ポメ!

鉄也:効果もけっこう強いしいいと思う。

ラヴィニア:じゃあ、決まりね! 野望の第一歩はミナミーノ島のラヴィニア城から♪


 なお、ギルド名はラヴィニアの目的にちなみ、“ロイヤルリベンジ”となりました。

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