お父さん、娘さんと結婚させてください!
それからの数日はいろいんなことがあった。思い出したくないほどにいろいろと。ミリアムが起きるくらいのタイミングでルドルフ卿が俺の部屋に雪崩れ込んできた。オルレアンの騎士たちがおっさんにしがみついて止めようとしているが、それを引きずってここまで来たようである。真っ裸のミリアムを見て騎士たちは目をそらし、おっさんの頭頂部から湯気が吹き出した。
「許さん、決闘じゃああああああ!!!」
「エレス、私のために・・・勝って」
「あー、はいはい、わかったわかった・・・」
王宮の中庭で俺はルドルフ卿と向い合っていた。手には片手持ちの木剣を構えている。おっさんは愛用のメイスだがまあ、気にしないことにした。
「ぐおおおおおおおおお!」
獣じみた喚声を上げておっさんが突っ込んでくる。真正面から振り下ろされるメイスの側面を叩き、逸らす。縦横無尽に飛んで来るメイスを避け、剣で弾く。たっぷり数分はメイスを振り回しているのだが息を切らす気配すらない。元気なおっさんである。
「ぬうん!」
「そんな大振りが当たるとでも?」
「っく、卑怯な。そんな卑怯者に娘はやれぬうううう!」
「あーもーめんどくせえ・・・」
「男ならわしの一撃を真っ向から受け止めてみせよ!」
「はいはい、わかったからどうぞ」
「おんどりゃあああああああああああああ!!!!!」
周りで見ていた兵たちにはおっさんの肘から先が消えたように見えただろう。それほど鋭い一撃だった。刹那の間もおかず、メイスの柄が地面にめり込んでいた。そして俺は剣を振りきった状態で残心。頭上から降ってきたメイスの先端がおっさんの脳天にめり込んだ。
「え・・・木剣でメイスを切り飛ばした・・だと?」
「慣れりゃ誰でもできる」
「できませんて・・・」
おお、いつの間にいたのですかライエル卿。
「いや、部屋に突貫したあたりからですね」
「つーか、止めてくださいよ・・・」
「無理です」
「いや、んな情けないことをきっぱりと言われても」
「つーか、いくら頭に血が上ってたとはいえ、オルレアン伯を子供扱いで叩き伏せるととかどんだけですか・・・」
「ま、コツですよ」
「ほう、ぜひお聞かせ願いたいものですな」
「なに、簡単なことです。当たらなければどうということはない」
「できるかアホおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「あー、ところで、これでオルレアン側からは異論はないってことでいいですかね?」
「といいますと?」
「ミリアムを俺の嫁にすることです」
「む、むむ・・・致し方ありませんな」
「ならばよい、がたがた言うようならオルレアンの騎士全て連れて来いと言うつもりでしたぞ」
あっはっはと笑う俺にライエル卿は引きつった笑みを浮かべていた。
いつものローブ姿のミリアムが現れる。いつもどおり、服の袖をつまんでくる。俺は袖から手を離させると、手を繋いだ。あまり感情が出ないミリアムの笑顔がやたら眩しかった。まー、責任は取るし、俺は約束を守る男である。オルレアン騎士たちの恨めしげな視線は意識の外に蹴り飛ばし、二人で王都の散策に出かけることにした。ま、たまにはこういうのもいいだろう。
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