状況を把握しよう

  とりあえず、自分の指揮下に入った兵を5人程度の分隊に編成した。内訳としては俺の直属と同じような感じだ。盾を持っている前衛をこなせるもの。剣や手槍を装備した攻撃役、弓兵で先制攻撃、支援である。魔法が使える兵もなるべく均等にした。100人で固まって森に入ってもあまり意味がない。各個撃破のリスクはあるが、それより即応性を重視した。ゴブリン自体は強い亜人ではない。普通に訓練を受けた兵なら2~3体は相手できる。まずは斥候を出し状況を確認した。ロビンが志願したので、こちらも任せる。あいつが行くなら間違いはないだろう。

 戻ってきた報告は皆同じような感じだった。確かにゴブリンが巣くっているが、数はそれほどでもなく、すぐに安全は確保できそうだということだ。まず半数の兵を先遣隊として入れ街道の確保を完了した。それから確保したポイントをつなぎ、下草を刈ったり、簡単に道を整備してもらった。馬車が引っかからないようにしてもらうためだ。昼過ぎから始めた掃討作戦は、夕刻の少し前に一応の完了を見た。

 そのことを報告すると王女の馬車は騎士団に守られ森に入っていった。そして次の任務が与えられたようだ。先日襲ってきた盗賊団と思われる集団が後方から迫っている。増援が来るまでそれを食い止めろという話である。


 ロビンと数名の足の早い兵を選んで偵察をさせた。王女の指示で弓矢などの物資は随行の兵の最低限分を残してこちらに分け与えられたのは幸いだった。土魔法が使える兵を集める。森に少し入りこんだあたりに広場を作った。そこに空堀を掘り土塁を築く。そして街道を封鎖するように柵を作り、足止めが可能な陣構築のすすめた。


 偵察に出していた兵が戻ってきた。向こうも此方の様子をうかがっている。現在は遠巻きにしており森に突入の機会を図っているように見える。向こうも夜戦は避けたいらしいな。そして、盗賊とは思えない統制の取れた動きをしているという報告でなんか一気にきな臭くなってきたように思えた。


「カイルよ、どう思う?」

「なんともいえませんが、敵国の浸透工作でしょうか?」

「かもしれんなあ、けど証拠がない」

「ですね。まあ、事情の確認は後回しです。まずは生きて帰ることが先決でしょう」

「んだな、余計なことを考えるのは後だ後」

「恐らくですが、敵も夜襲は仕掛けてこないでしょう」

「そうだな」


 深夜までには一通りの作業を終えた。一部の見張りを残し、兵に休息を取らせる。

物資を確認していた兵の一人が、俺宛の手紙を持ってきた。

なになに・・・「必ず救援の手を打ちます。諦めずに戦ってください。  イリス」

まあ、あれだ。本気にするほど俺も青くないが少しなんとか生き延びてみようと思うことはできたかもしれない。少し軽くなった頭で僅かな時間眠りに落ちた。


そして払暁、敵の前衛が突入してきた。

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