ケーススタディ〜あるサムライの場合
妻をよく観察し、家庭の全てを把握していおくこと、と先に書きましたが、良い例があるので、紹介しましょう。
とある年配男性のケースです。彼は、申し分のない良妻賢母を妻にしています。
この男性のケースは、高学歴、高収入、妻は自由に自分の時間を使うことができ、子育てに趣味に邁進しています。この妻は、本当に聡明なため、自分の趣味を収入にし、子供も夫と同じように、立派に育て上げました。
ある時、面白いことを聞く機会がありました。
こういう妻は、いくら貞淑でも、近づく男が必ずいます。さりげない形で、たとえば子どもを介してでも、密やかに理由をつけて、男は近づこうとするものです。確かに、美しい人でしたから、当たり前といえば当たり前です。
いくら真面目で貞淑な良妻賢母の妻であっても、城から出さないわけにいかないために、子供関連の行事やスーパーに行くなどの日常不可欠な理由で、他の男性と、接触が生まれるのは、仕方のないことです。接触というか、顔を見られるのは、という表現の方が適切です。このサムライは、それも全て把握し、妻に関わる全ての男の顔、住所、連絡先なども、常に把握しています。
この男性は既に亡くなっているので、奥方から聞いた話です。遺品の整理で亡き夫の古い手帳がたくさん出てきて、日々の行事のメモがあったそうです。*月*日、誰それが訪問、というような。驚いたのが、その男の名前も住所もきちんと把握していました。どこでどう調べたのか謎ですが。
その男性は、子供が世話をかけた人で、子供の行事のために、わざわざ遠方からやってきた人のため、その日、宿泊していきました。もちろん、男性にもちゃんと挨拶し、翌日発ちましたが、奥方は、後にその手帳を見つけ、驚いたそうです。あら、どうやって、あの人の住所や名前を知ったのでしょう?と。
こんなふうに、たとえ会社の仕事が激務であっても、黙って、家庭の些細な出来事や変化にも注意し、さりげなく常に睨みを効かせることが重要、ということです。言葉には決してしなくとも、俺の妻に手を出すと殺すぞ、という迫力。不埒な気持ちを持って近づいても、思わず尻尾を巻いて逃げたくなるような、殺気で家庭を守ります。
妻が今日、どこで何をしたか、何も質問なくとも、きっちりと把握しています。家のカレンダー、妻の様子、賢い男は質問などせずとも、妻の何気ない世間話、子供の様子、持ち物から、全てを知っているのです。
ちょっとした浮気心で近づいてくる間男は、殺されてはたまりませんから、何も言わずに、こりゃあ、俺の出る幕ではない、と、さっさと逃げ出します。近づいただけで、どっかりと領地を完璧に統治しているサムライがいれば、その妻を誘惑するなど土台無理。もちろん、サムライは、何も言いません、子供が世話になっている大事なお客人に失礼のないように、手厚くもてなすように妻に言いますが、勝負の前に、勝負は決まっているのです。これが間合いや居合、勝負の前の迫力勝ちです。勝負の同じ土俵に上がらせることさえしないわけです。
武士たる者、剣は抜かずとも、相手を退散させる迫力が必要です。そういえば、この方、武道を嗜んでいた方でした。この男性、寡黙で、妻一筋、一見非常に優しそうな風体をしていますが、うっかり戦えば、傷を負わねばならないのは、一目瞭然です。妻にはびっくりするくらい甘くとも、間男は、一瞥で、そして驚くことに、挨拶一つで、時に挨拶することもなく、撃退する。これも、サムライの実力です。
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