モテて困るサムライ男子の悩み

 イケメンという言葉は軽薄で、いつか廃れるかもしれないので、躊躇するものの、便宜的に使うことにしました。


 俺の周りには、類は友を呼ぶのか、イケメンが多いです。しかも結構、高学歴です。俺なんかよりずっと条件がいい奴が多い。


 イケメンにも二種類いて、性格が優しく、人当たりも良く、本当にモテる、女性にとっていわゆる”お買い得”な男と、俺のように少し偏屈で、こだわりの強い、誰にでもは合わないタイプに分かれます。俺は一見そうは見えないらしく、そのあたりが難しいです。


 ここでは、いわゆる非の打ち所のない条件のイケメンの悩みを書きたいと思います。


 実は読者から、俺が先に書いてきたような女性ばかりではない、”完成された女性”を求めるのでなく、”育てる”ことを考えた方がいい、というご意見を受けたまわりました。


 俺もそう思うのですが、それが無理なのは、積極的な女性からのアプローチが多すぎて、そういう”育てれば素敵な伴侶になる”ような、ごく普通の女性との出会いがないのです。


 それはどういうことかといえば、高学歴の将来有望なイケメンに群がってくる女性というのは、見栄張りで、しかも積極的、ライバルを蹴落として、自分が最も良い座席に座りたい女性が多いのです。


 驚愕かもしれませんが、ごく普通の子は、それを見て、大抵引いてしまい、”こんなに激しい競争に参加したくない”と思うようで、おまけに”あんなにイケメンだと、きっと遊んでる、自分も遊ばれる”と、むしろ敬遠されてしまう傾向にあるのです。


 恐ろしいことに、近寄ってくる女性は、条件、乗ってる車などにうるさく、そして、さらに高みを目指そうとする女性が多いために、もっといい条件の男性を見れば、簡単に乗り換えます。なんというか、女性不信になるのも、もしかして納得いただけるでしょうか。


 ある友人は、全然軽くないのに、そのルックスから”遊んでる”と思われてしまうために、アプローチが、軽い女性ばかりからで、結婚できるような真面目なしっかりした清純な子と出会わない、と悩んでいました。


 男から見ても非の打ち所もない性格のいい男で、探しても部屋にエロ本などなさそうな、そんな男がいるのか?と、思うような爽やかな男性です。


 結局、彼は、ものすごくおっとりした農家のお嬢さんを自分で見つけて、結婚しました。ピアノが趣味のその彼女が合コンで、”私の家には、蔵があるの……”と言ったのが決め手だそうです。


 その話を聞いて、その子もやるなあ、と思いました。彼女は、見栄えは、こうは言ってはなんですが、十人並み、本当に普通の女性です。職業は、いかにも結婚に向いている職業で、”優しい””真面目””気立てが良い””子供好き”を体現した職業についていました。おとなしそうだし、もちろん男の影は全くありません。職場も女性ばかり。


 うーん、きっと幸せになれるだろう!


 俺も、祝福しました。幸せにやっているみたいです。新居に招かれた時に、きれいな字で”一週間の献立スケジュール”と、”朝から晩までの時間ごとのスケジュール”が書かれた紙が貼ってありました。完璧です。家も綺麗。幸せそうだ!


 それにしても、”蔵”が決め手だとは。思ったんですが、”由緒のある家”という意味での”蔵”だったようで、ご両親も、ものすごく上品な人だったようです。


 イケメンはどうしても、受け身にならざるを得ないのは、女性が群がりすぎて、自分から誰かに行くことができないからです。うっかり気に入った子にアプローチしようとすると、”その子”がそのせいで、嫉妬されて、壮絶な女性同士のいじめのターゲットになったりさえ、するのです。恐ろしいですが、本当です。女性は怖いです。


 そのイケメンは、会社でも、モテてモテて困るので、同性の同僚や上司から壮絶な嫉妬を受けるため、できるだけイケメンに見えない工夫を、日夜凝らしています。


 ちょっとカッコいい服なんかを着ると、街で目立って仕方ないため、できるだけ目立たない服を着て、寝癖さえも直さない。”ちょっと間抜けた男”を演出しているのですが、元が良いので、それでもモテてしまいます。基本的に、一緒にいる人が自然体になれるような、良い性格をしているので、仕方ないでしょうが、本人にとって、ものすごいストレスのようです。放っておいて欲しい、と思うこともあると思います。


 彼は女性と遊ぶ、というような軽はずみなところが一切ないため、本当になんというか、優しい、親切、合理的、包容力、と、まあ、モテても仕方ないですね。仕事も努力家なので、結果を出しています。部下からアブローチされるのが本当に面倒らしいです。万が一、何かあったら、家庭も仕事も終わりですから、それもわかります。特に女で出世街道を外れる男というのは馬鹿です。正直、男にとって、女性や恋愛というのは、二の次、三の次なのです。俺はこんなエッセイを書いていますが、正直、本当にそうです。


 俺にとって女性はあまり良いイメージがないです。モテなかった男さえ、会社でそれなりになってくれば、モテるのですが、彼の場合は、もともとが良いので、そんな要らない苦労まで背負い込まないといけない。苦悩ですね。同僚からの嫉妬で、ひどく足を引っ張られている模様です。仕事の上でも、それ以上に、努力しても埋まらない悩みがあるのに、上乗せされる悩みとなっているようです。男の嫉妬はすごいですから。


 俺の目から見ると、最も結婚に成功した例だと思うのですが、それでも妻から見ると、子供ともっと一緒にいつもいつも遊んで欲しいようです。それは欲張りすぎと思いますね。物理的に無理なことを望んでいると思います。


 彼は、激務だし、会社でも無理しすぎているようで、むしろ鬱にならないか、心配です。かなりしんどいようで、女性の社会進出に俺があまり賛成でないのも、全員とは言いませんが、女性というのは、なんでも好き嫌いで決めてしまうような、感情的に動いている人が、あまりに多いからです。求めすぎると全て失う、自分もそうですが、肝に銘じねばなりません。

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