マドンナ〜その2

 俺が、この子はいい子だな、と感じた女性の話を、もう一つ書きたいと思います。


 彼女は裕福なお宅の子で、高校の時に、部の一つ下の子のアタックで二人は付き合い始めました。男の方は、スポーツマンだけあって、結構、強引なところがあり、それでも、何とかスポーツ推薦でまあ何とか三流の私大に滑り込みました。


 彼女の父親がとても反対していたようで、まさか、結婚に至るまで続くとは思っていなかったようなのですが、結局、大学を卒業して、就職の後、二人は結婚することになりました。


 この子の場合も、初めての彼氏との結婚。いい子は、早く売れてしまって、なかなか後になればなるほど、男にとっては、不利になる。これが俺の持論なのですが、女性にはとても失礼ですが、本当にいい子はあっという間に取られてしまいます。女性は物じゃないですが、この子がいい、と思ったら、高校や大学でさっと決めないと。


 自分は、仕事という意味で、自信がなかったため、出遅れたと思います。その子の場合も、前の子と同じく、顔は色白で小さくて、かわいいし、気立ても良く、無駄遣いもしない、料理も得意の子。なんといっても、お嬢さんなので、とてもおっとりしていて大らかで、一緒にいて癒されます。ずっと側にいたいような気がしてきます。妹がいるので、面倒見もいい。気負ったところがなくて、たとえ自分の嫌なことを頼まれても、はっきりノーと言うのは躊躇ためらう、優しいタイプです。


 ここからがまた、難しいのですが、男が独立し、立ち上げた事業に失敗し、自己破産しました。目も当てられないのですが、男はプライドがあるため、ずっと黙って、自分達でなんとかしようとしたようですが、最終的に、彼女の実家に、「おんぶに抱っこ」となりました。


 彼女はとても気立てが良いため、3人の小さな娘に「パパの仕事が今、大変で、難しいから、3人でこのお団子を分けっこしようね?」と、一本のみたらし団子を、3人で団子一個ずつを食べさせたりして、本当になんというか、実のところ、優しい気立ての良い子と言うのは、そこまでの苦労をしても、誰も恨むことなく笑顔で、なんというか、誰かに頼るとか、そこから逃げ出そうとか、そうするでなく、彼女は頑張ってました。健気すぎる…。


 俺は、男について、本当になんというか、男の見栄で妻子にそこまで苦労させるなよ!と正直、男にひどい憤りを覚えましたが、俺の立場では、何も言えない。ほぼ傍観者ですから。


 彼女は、見かねた実家の父親に救われて、今は男と一緒に平穏無事な生活を送っています。何故こんな良い子が、こんな苦労をするんだろう、と思っていた俺も、一安心です。もともと男は、別にちょっと気前の良い、人前で良い格好をしたがる方ではありますが、別に根は悪くない、普通の親分肌の男です。気前がいいから、格好をつけて、どうすることもできないところに転がり落ちたのは、やはり男の落ち度と思います。


 そういう男が自分で事業を立てたがるのは分かりますが、やはり男は、時に泥の中を這って、格好悪い思いをしても、妻子を守り抜くべきでしょう。


男の見栄で苦労させちゃいかん。俺は、そう思う故に余計に、責任を感じ、なかなかさっさと、結婚に踏み切れない人生を選択しそうな気配です。

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