永遠

 西に面した海、砂浜に沿った遊歩道をわたしが散歩していると、夕焼け色の砂の上に、黒い影が長く伸びていた。波打ち際に目をやると、逆光で後ろ姿しか見えないが、誰かが立っている。


   また見つかった、

   何が、永遠が、

   海と溶け合う太陽が。


 男の人の声だ。離れているが、まるで芝居の練習のように、はっきりと聞き取れる。

 確か、ランボーの詩、だっただろうか。

 石畳に目を落とし、再び歩き出す。影が視界の横をかすめていき、やがて見えなくなる。詩の続きを誦する声が、だんだん後ろに遠ざかっていく。

 そのまま散歩を続けるうち、また、長い黒い影が視界の端に入った。声が聞こえてくる。


   また見つかった、

   何が、永遠が、

   海と溶け合う太陽が。


 ――え。

 波打ち際を見ると、誰かが立っていることはわかるが、どんな人物なのかは全くわからない。でも、さっきの人の後ろは、通り過ぎた筈。仲間なのだろうか?

 そう思って、散歩を再開しようと前を見た。石畳で舗装された遊歩道はまっすぐに伸び、砂浜の上には一定の間隔で、無数の黒い影が長く伸びている。

 慌てて振り向く。背後にも、夕焼け色の砂と黒い影の、繰り返す縞模様。赤く染まった海で、太陽の下半分がゆらゆらと揺れている。

 ――何、これ。

 わたしは走り出す。前も後ろも、どこまでも続く道――果ての無い砂浜――まるで、永遠のように。


   また見つかった、

   何が、永遠が、

   海と溶け合う太陽が。


 たくさんの人の声が、そう、繰り返すのが聞こえる。

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