二重存在

「エミ、昨日ミスドにいたよね」

「昨日は行ってないよ?」

「え? ポンデ食べてたし、絶対エミだと思ったのに」

「それエミのドッペルだよ!」

 最近、私のそっくりさんが大学近辺にいるらしい。何人かの目撃談によると、服装も髪型もよく似ていて、本屋では私が時々買う雑誌を立ち読みしていたとか。仲間内ではその謎の人物を、ドッペルゲンガー通称ドッペルと呼んでいる。

「一度、エミとドッペルを並べて見てみたいよね」

「あ、でも本人は会わないほうがいいよ。もう一人の自分に会うと、近々死んじゃうんだって」

「こわーい」

「もう、他人事だと思って」

 私は苦笑いした。


 中学で同じ組だった恵美を、町で偶然見かけた。

 私は中2で転校して以来ここに住んでいるけど、恵美は大学入学でこの町に来たらしい。あまり変わってなくて、見てすぐわかった。

 可愛くて、明るくて、友達の多い恵美。

 それに比べ私は暗くて、高校で苛められ、大学にも行ってない。

 漢字は違うけど私だってエミなのに、何でこんなに違うんだろう。数日凹んで、ふと思った。

 私が、恵美みたいになればいいんじゃないの?

 それから、バイトのない日は恵美が大学から出てくるのを待ち、後をつけて、よく行くお店を調べた。バイト代で恵美と同じ服を買い、髪型も同じにした。外出が増えて雰囲気も明るくなったね、と親に喜ばれた。

 恵美のツイッターも見つけた。彼女が呟く好きな食べ物、好きな本、好きな歌手。全部、好きにならなきゃ。もっと恵美に詳しくならなくちゃ。

 そうすれば、私、恵美になれるよね?

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