黒いサンタ

 良い子の家には、赤いサンタ。おかしやおもちゃを持ってくる。

 悪い子の家には、黒いサンタ。大きなふくろで子をさらう。


 テレビの中の人が、そんな話をしていて、ぼくは悲しかった。

 じゃあ、ぼくの家には赤いサンタは来ないんだ。


 ぼくにはママと、去年はパパがいたけれど、今は新しい「パパ」がいる。

 「パパ」は、「パパ」の言うことを聞かないぼくは悪い子だ、って言う。「パパ」がぼくをたたいたりけったりしても、これはしつけなんだ、って。

 ママも、「パパ」となかよくなれないぼくは悪い子だ、って言う。


 明日はクリスマスなのに、ママは夜中までお仕事。「パパ」が、夕ごはんにフライドチキンを買ってきてくれたんだけれど、すごくからくて、ぼくは食べられなかった。

 そうしたら、「パパ」に怒られた。食べ物をのこすな! おれの買ってきたものが食えないのか!

 ごめんなさいって言っても、いっぱいたたかれて、けられて、体のあちこちがいたくなって……。


 目がさめたら、ぼくの前に、ぼくがもう一人いた。たたみの上にねていて、鼻血が出て、ぜんぜんうごかないの。「パパ」は何だか青い顔して、家の中をウロウロ。立っているぼくのことは、見えないみたい。それから、急いで外に出かけていった。

 帰ってきたら、大きなふくろを持っていた。その中にねているぼくをつめこんで、どこかに運んでいくのかな。立っているぼくは、それをずっと見ていたよ。

 そういえば、テレビのべつの人が、こんなことも言っていたっけ。


 サンタクロースは、本当は「パパ」なんだよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る