消えた妹
〝オルレアンの噂〟っていう都市伝説、ご存知ですか?
試着室に入った女の人が行方不明になって、一緒に買い物に行った人が店員に「連れが出てこない」と言ったら、「そんなお客は最初から来ていない」と否定される、っていう話です。
それが、起きたんです。
私の妹が、消えてしまったんです。
私と妹は双子で、同じ高校に通っています。
あの日、私と妹はショッピングモールに行きました。二人でキャッキャッ喋りながら服を選んで、妹が試着したいと言いました。それで、試着室に入った妹を待っていたのに、出てこないんです。
見ると、カーテンは閉まっているのに靴がない。カーテンを開けたら誰もいなくて、店内を探しても見つかりません。困って、店員さんに尋ねました。
「私と一緒に来た女の子、見ませんでしたか?」
そしたら店員さんが、不思議そうな顔をするんです。
「お客様、ずっとお一人でしたよね?」
「お母さん! 妹がいなくなった!」
泣きながら電話を掛けると、母は呆れた声で言いました。
「何のこと? あんたは一人っ子でしょ?」
家族も、学校の友達も先生も、近所の人も、誰も妹を知りません。
世界中のみんなが、私を騙そうとしているのかと思いました。
けれど、家のアルバムを見ても、一緒に育ってきたはずの妹が写っていないんです。
私は、狂ってしまったのでしょうか。
それとも、ずっと狂っていたのでしょうか?
でも、試着室の前で最後に見た妹の笑顔と、聞いた言葉は、今も鮮明に覚えているのです。
じゃあね、お姉ちゃん。
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