第14話 みんな優しい世界


 宇宙の外には何もなかった。

 何でもできる力を使って探したのだから間違いない。

 どこまでもどこまでも真っ白な空間が続くだけだ。

 宇宙のように果てはない。

 星も生物も存在しない。

 完全なる虚無の空間。

 あれほど気になっていたというのに、知ってしまえばどうということもなかった。

 宇宙で他の生命体から学ぶこともさしてない。

 知性を持った生物がやることは、だいたい同じなのだ。

 戦争、支配、革命。

 その繰り返し。

 もう、うんざりだ。

 俺だけの理想郷を作って、そこでのんびり暮らそう。

 俺の理想は至って単純。みんな優しい世界だ。

 だってそうだろ?

 どんなに発達した社会でも、そこに生きてる人々が優しくなかったら何の意味もない。

 物質的にどれだけ満たされても、不幸なものは不幸なんだ。

 甘いって?

 そんなんじゃ過酷な競争社会を生き抜けないって?

 まあ、そうだろうな。

 でもさ、そんな人生の先に何がある?

 他者を欺き、蹴落とし、のし上がったその先に、そんなにいいものがあるとは思えないがね。

 ……なんて、誰と話してんだろ、俺。

 ここのところ、ずいぶんと自問自答が多くなったな。話し相手がいないからな。

 神ってのは寂しいもんだ。

 あ、だから人間を作ったのか。 

 結局、同じことしてるな。

 だが、俺は前の神と違って不完全な人間を作ったりはしない。

 欲望を完璧に制御できる新人類を作ってやる。

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