第11話 そこに答えはあった
しかし――
世界を見て回ったことで、世界をどう変えるべきか余計にわからなくなった。
とりあえず最貧民は救うとして、その後どうする?
幸せの形は人それぞれだ。俺が決めていいことじゃない。
だが、このまま放っておけば人類は地球を食い潰してしまうだろう。
注いでも注いでも満たされることのない欲望に翻弄されて。
いっそのこと欲望など消してしまおうか。
いや、それはダメか。
そんなことをしたら人は脱け殻になってしまう。欲望は人が生きる原動力でもあるのだ。
ある程度の欲望は必要。
でも、あまり強欲なのはよくない。
難しいな。
要するに、人間はもっと欲望を制御できるようにならなければならないわけだ。
どうやって?
そんなこと、凡人の俺にわかるはずがない。
わからないなら勉強するしかない。
人はどうあるべきか、社会はどうあるべきか。
俺は偉大なる先人の知恵から学ぶことにした。
読書だ。
その気になれば一瞬にして世界中の書物を読んだことにもできるが、それでは神のように無慈悲な判断を下してしまう恐れがある。
かといって、膨大な書物を一冊一冊まともに読んで理解するには時間がかかり過ぎる。
よって、俺は速読能力と理解力を人類最高レベルにまで引き上げた。
チートはチートだが、学習に用いる能力は人間の範疇だ。
ついでに書物を読んでいる間、肩が凝ったり腰痛になったり眠くならないようにした。
そうして数ヵ月間、俺は徹底して勉強した。
そこに答えはあった。
もちろん、それは俺の答えであって、他者に押し付けるわけにはいかない。
この世界をどう変えていくかを決めるのは、今を生きる人々と、これから生まれてくる子供たちだ。
最低限の改変だけはさせてもらうが、以後のことは皆さんにお任せする。
俺は何でもできる力を使って、世界中の子供たちが等しく教育を受けられる社会作りを始めさせた。
誰にだって?
そんなもの、一人で何千億とか何兆とかいうわけのわからん資産を持つ強欲な富豪たちに決まっている。連中に金を出させて、世界中に学校を作る。
それから、義務教育にかかる費用は教科書代から給食費、交通費に至るまで、すべて国が負担することとする。
その上で幸せになれるかどうかは、個々の才能と努力と運次第だ。
運もある。だが、運だけですべてが決まってしまうようなことはない。
それが俺の考えた最低限だ。
あ、おまけで原発の使用済み燃料だけは消しておいてやろう。
まだ続けるつもりなら、それは知らん。
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