第9話 神になってしまったら

 それから数週間、俺はやりたいことをやって過ごした。

 その間、あえて社会の改変は行わなかった。

 具体的にどうしたらいいかわからないからだ。

 大学を卒業して以来ひたすら仕事に追われ、俺はほとんど勉強していない。自分の仕事以外のことをほとんど知らない。

 結局、俺も井の中の蛙だったのだ。

 一つの会社にずっと勤め続けるというのも考えものだな。

 そこしか知らないものだから、恐ろしく視野が狭くなる。その会社の常識が、世界の常識になってしまう。

 人生は長い。一発で天職に就ければそれに越したことはないが、一度や二度は転職した方がいいのかもしれないな。

 俺にはもう関係ない話だけどね。

 しかし、どうやって知識をつけようか?

 その気になれば一瞬で全知全能になることもできるが、それではいけない気がする。

 神の目線で世界を変えてしまうのは良くない。神は恐ろしく無慈悲な存在だ。

 弱肉強食、食物連鎖、他者を殺さなければ生きていけない世界――

 これを神が作ったのだとしたら、残虐非道にもほどがある。

 神になってはいけない。

 神になってしまったら、たぶん平気で多くの人を切り捨てるようになる。

 俺は人のまま世界を改変するんだ。

 そのためには、もっと世界のことを知らなければならない。

 日本の外にも目を向けなければならない。

 行ってみるか。

 大海を越えて、外の世界へ。

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