第5話 力の検証

 さて、これからどうしようか。

 ――なんでもできる力。

 神を名乗る人影はそう言っていた。

 でも実際どうなんだ?

 なんでもってことは、その気になれば地球を木っ端微塵にもできるのか? その後、一瞬で作り直すことも?

 言葉通りならそういうことになる。

 だが、取り返しのつかない事態になってしまってはまずい。地球や国を大規模に改変するのは後にして、手近なところから試してみよう。

 まずはお金だ。

 もうあの腐った会社では二度と働きたくない。再就職もしたくない。

 とりあえず三億円くらいあれば一生働かなくとも暮らしていけるだろうか。

 俺は目の前に三億円が出現するよう念じてみる。

 次の瞬間、両手で抱えきれないほどの札束が床の上に出現した。

 おおおっ! 

 念のため、もう二億追加してみる。

 札束の山がさらに大きくなった。

 やった! これでもう奴隷のような扱いを受けなくて済む。

 こんなに嬉しいことはない!

 でも、どこに保管しよう。こんな狭いアパートじゃダメだ。

 新しい部屋を借りるか。もっと、静かで見晴らしのいいところへ。

 ……いや待て、落ち着け。力の検証が先だ。。

 この力が本当に言葉通り制限なしのなんでもできる力なら、お金なんか出さなくとも直接ほしいものを出せばいい。家だって、わざわざ借りなくとも自分で作ればいい。

 必要なものはどんどん出していけばいいんだ。

 だが、一抹の不安は残る。

 この世界に質量保存の法則がある限り、完全なる無から有を生み出すことはできない。

 何かを生み出せば、必ず別の何かを消費する。

 俺が何かを出すことで、別の場所で何かが減っていたら……。

 なんでもできる力は大自然の法則をも越えるのか否か?

 何をおいても、それを確かめるのが先だ。

 あ……。

 そういえば時計浮いてる。

 万有引力の法則、無視してるじゃん!

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