開かない木箱


もう八合ばかり呑んだ


おい、聞いてるか。

 ああ聞いてるよ。

だからさ、これだよ。

 ああ、分かってるよ。

どうするんだよ。

 いやぁコレだけ考えて分からんのだ、もうずっとこのままかもしれん

それはないだろう、気になる

 そんなこといったってよぉ

だが、何か方法があるだろうよ

 はぁ、堂々巡りだな…

やっぱりもう壊すしかないだろ

 待て待て、仮に壊したとして、

として?

 中のものが無事でも、この箱に価値があったらどうする

うーむ

 そうだろ、箱が大事ってこともな

そうかもしれんがなぁ、

 なにか、こう、からくりで、パカッと

ずっと試してるじゃあないか、ウンともスンとも

 そうだなぁ…

水につけたらどうだ

 さっき冷をおまえがぶちまけたばかりだろ

そうだったな

 あれで箱がゆがんだのかもしれん

待て待て、それより前から開かなかっただろうよ

 はぁ、こいつは困った

いつまでこの箱をいじくればいいんだ

 なぁ、そういえば

なんだ

 あいつはいつ来るんだろうな

さぁ、今日は来ないんじゃあないか

 じゃあいつ来るんだ

俺が知るかよ

 どいつもこいつも


そういって男の手から箱をむしりとると

地面にたたきつけたのである。


木箱はパカリと開いて、中から男が出てきた。


おまえ、ここにいたのか

 いやぁ待った待った

一体いつ来るのかと

 おい冷をもう一本つけとくれ


二人を待たせた男は手に、小さな木箱を持っている。


九合目の徳利が運ばれてきた。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る